ITPとは正式名称でIntelligent Tracking Preventionのことです。
プライバシー保護を目的に2017年9月、AppleWebブラウザ「Safari」に搭載されたトラッキング防止機能です。
ユーザーのプライバシー保護のため3rd Party Cookieの動きを制御します。
今回はITP対策の方法、Web広告への影響、ITPが強化される背景やCookieの代替案などを解説します。
目次
ITPの概要
ITPはユーザーのプライバシー保護を目的として実装された機能です。
この機能はCookieを制御でき、個人情報のトラッキングを防ぐ効果があります。
CookieとはWebサイトが発行するアクセス情報のことです。
テキストファイルとして送信され、デバイスに蓄積されます。
一度ログインしたサイトに再びアクセスした時、ログイン作業が省略される経験をしたことはありませんか。
これは直近でアクセスしたユーザーに対してCookie情報を活用して訪問者の認証を行い、ログイン作業を省略しているからです。
Cookieには大きく分けて2種類あります。
- 1st Party Cookie
- 3rd Party Cookie
1st Party Cookieは自社のサーバーから発行されるCookieであり、3rd Party Cookieは第3者のサーバーから発行されるCookieです。
ITPの概要をもう少し解説します。
「Safari」に搭載されたトラッキング抑制機能
2017年にAppleは3rd Party Cookieを対象にSafari 1.0 以降のブラウザにITPを搭載することを決定しました。
これはWebサイトを越えてユーザーが追跡されるのを防ぐための機能です。
複数のサイトをまたがってユーザーを追跡するリターゲティング広告などに対応するためのものです。
具体的にはCookieの有効期限を短くすることで広告の追跡を回避することになります。
クロスサイトトラッキングを防ぐことでSafariユーザーのプライバシーを守ることが目的です。
クロスサイトトラッキングとは、複数サイトをユーザーが横断する行動をトラッキングすることです。
クロスサイトトラッキングを設定する場合は、トラッキングしたいサイトにCookieを施した共通のリソースを埋め込みます。
その結果、トラッキングしたいサイトのユーザーの行動を同じリソースによって紐付けことができます。
クロスサイトトラッキングを解析すればユーザーがどこのWebサイトを経由して来たのかが分かるためマーケティングには重要な情報なのです。
モバイル・タブレットユーザーの観測に影響
気になるITPの影響の範囲ですが、Safariのシェア率が高いほど広告の運用にも影響が大きくなります。
特にITPはモバイル・タブレットユーザーを中心にシェアされていて、日本ではiPhoneのユーザーが多いことからその影響が避けられません。
2019年6月現在の国内のブラウザのシェア率は、モバイルのSafariが6割を越えています。
モバイル・タブレットユーザーをターゲットにしている企業はITPの影響が大きいため対策が必要になります。
3rd Party Cookieを規制
2020年6月現在、ITPは全てのCookieを規制しているわけではなく、3rd Party Cookieを対象に規制をしています。
その結果、3rd Party Cookieを使用したユーザーリストが24時間以降参照できなくなりリターゲティング広告の配信量が減少しました。
そのためコンバージョンの数が減少し、リストの質が劣化、効率の低下につながると考えられます。
例えば、一度アクセスしたサイトを24時間以上経過してアクセスすると別ユーザーと認識されます。
これではサイト訪問者の正確な分析が困難になるのです。
Webマーケティングの事例はこちら
Cookieの特徴
Cookieとはサイトを訪問したユーザーのデータを一時的に記録しておくための仕組みです。
一度ログインしたユーザーは再訪問した際はログイン状態が保持されているため再度ログインする必要がありません。
WebサーバーからブラウザにCookieが配信・保存されるため、再びサイトを訪問した時ブラウザに記憶されたCookieがサーバーに送信されます。
そこでユーザー情報の照合が行われ紐付けされるのです。
ITP機能のカギになるCookieについて解説します。
Cookieの種類
Cookieの種類には1st Party Cookieと3rd Party Cookieがあります。
1st Party Cookieは、ユーザーがアクセスしている自社サイトが発行するCookieのことです。
ユーザーからブロックされにくいため、トラッキングや効果測定の精度が高くなります。
デメリットは、ドメインごとでCookieが付与されるためサイトを横断できないことです。
3rd Party Cookieは、訪問しているサイト以外の第3者から発行されます。
Webサイトのドメインと関係なく付与されるので、サイトの横断が可能になります。
自社サイトと他社サイトを横断した履歴を用いてリターゲティングなどに活かすのです。
ただし、3rd Party Cookieをブロックするブラウザの増加で効果測定の精度は低くなっているといわれています。
Cookieの役割
Cookieはユーザーの訪問履歴やログイン情報などを一定期間保存します。
ユーザーのサイトへのアクセス情報を活用できることから、ユーザー・Web担当者にメリットがあります。
例えば1st Party CookieではWebサイトに毎回訪問するたびにログイン情報を入力する煩わしさがありません。
3rd Party Cookieを利用すれば企業はインターネット閲覧時に、ユーザーが関心のある広告を表示させることができます。
ユーザーとメリットは欲しかった商品や気になる商品に出会える機会が増えるのです。
企業はユーザーが今何に関心があるか、どういった行動をとっているか把握できます。
GoogleアナリティクスなどのツールもCookieに支えられているのです。
企業は年齢・性別・購入履歴などからセグメントすることで特定のユーザーにアプローチが可能になります。
日本におけるSafariのシェア率
日本におけるSafariのブラウザシェアは約63%となっていて圧倒的なシェアを誇っています。
日本ではiPoneの普及率が著しく、ITPの影響はスマートフォンに配信する全体の6割以上です。
そのため計測数値に多大な影響が出ると考えられます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ITPによるWeb広告への影響
ITPはiPhoneやMacのブラウザであるSafariに実装されている機能のためその影響力が注目されます。
Cookieを制限することでどのような影響があるのでしょうか。
ITPには3rd Party Cookieを制限する機能が備わっています。
具体的には、24時間3rd Party Cookieを自動的に削除することでCookie情報を活用することが制限されてしまうのです。
その影響はWeb広告やアクセス解析に及ぶと考えられます。
具体的に見ていきましょう。
広告メニューの配信制限
ITPの導入はWebマーケターには看過できない多大な影響があります。
広告メニューの制限で特に影響を受けるのはリターゲティング広告やリマーケティング広告です。
Cookieを活用する手法のためITPが機能しているSafariでは、最大24時間までしか追跡ができなくなります。
リターゲティング広告はCVRがリスティング広告の約2.3倍で費用対効果も高いのです。
ユーザーが商品やサービスに関心があっても効果的なアプローチができなくなります。
広告効果の測定が難しくなる
Cookieを活用して効果測定や分析を行うことが難しくなります。
特に大きな影響を受けるのはクロスサイトトラッキングです。
一つのサイトに絞った測定はできても、サイトをまたぐクロスサイトトラッキングは困難になります。
そのため、どのサイトから訪問してきたかといった正確なCV測定ができなくなります。
正確な分析ができなければ有効な施策を立案できず機会損失につながる可能性が出てくるのです。
Webマーケティングの事例はこちら
ITP機能の変遷
ITP機能の導入の動きは最近始まったことではありません。
背景には世界的に叫ばれている個人情報保護があるのです。
問題となっているのはプラットホームで配信される広告は、個人情報に基づくものだという点です。
そのため企業に対して個人情報保護の厳格化が求められ、3rd Party Cookieもその一つと認定されているのです。
ここではITP機能がどう変遷したか解説します。
ITPリリース時
iOS14リリースにより変更点が3つあります。
- IDFAの利用がデフォルトに不可に変更
- バウンストラッキング機能搭載
- アプリ内WebViewにもITPが適用
IDFAとは、Appleがユーザーの端末にランダムに割り当てる広告用識別子(端末で1つのID)のことです。
アプリ間でも同じユーザーとして識別することができます。
ターゲティング広告はIDFAを配信しますがiOS14ではユーザーの同意が必要になります。
初期設定では利用不可になったままです。
サイトトラッキング防止機能の導入でサイトを横断した時の痕跡を消し去ることができます。
さらにバウンストラッキング機能が搭載されたことで、サイト内でリンククリックした時にリダイレクトさせることで計測していた機能が無効になるのです。
アプリ内WebViewとはアプリの中にWebサイトを表示させる機能です。
ITP2.0の機能
ITP1.0では3rd Party Cookieが24時間保持されていましたが、2.0のリリースで即時破棄されます。
このリリースによりユーザーが承諾したサイトのみ1st Party Cookieは保持されるのです。
しかし、30日間承諾がない場合Cookie情報は削除されます。
ITP2.0の影響でリターゲティング広告やリマーケティング広告の運用が困難になり、効果測定も不可能になると考えられます。
対応策としては3rd Party Cookieを活用した計測やリターゲティングを1st Party Cookieに変更しなければなりません。
ITP2.3の機能
ITP1.0から2.3までバージョンアップすることで、削除対象となるCookieの範囲を広げてきました。
そして、ITP2.3ではストレージの制限が追加されました。
これは一部の広告媒体がCookieではなくローカルストレージを使ってトラッキング情報を入手していたためです。
ITP2.3ではストレージのデータは7日間で削除されるようになりました。
さらにリファラーのダウングレードが追加されました。
リファラーとはユーザーがWebページを訪問する際にどこを経由してきたか、つまり直前まで閲覧していた参照元のことです。
ITP2.3ではこうした履歴も取得できなくなります。
ITPが強化される背景
2018年5月に施行されたEU一般データ保護規則を契機に個人情報の保護が一段と厳しくなりました。
これまでCookieを利用して個人をターゲティングしてきた広告事業者やメディア関係者は大きな影響を受けることになったのです。
プライバシー保護への対応
プライバシー保護を受け、AppleはSafariを使いターゲティングに活用されてきたCookieを削除するテクノロジーを開発しました。
世界的にCookie規制が行われつつある
その後GoogleもChromeでWebサイト閲覧者のトラッキングができる3rd Party Cookieの利用を制限すると発表しました。
今後は世界的にCookie規制が広がりを見せるでしょう。
ITP対策方法
ITP対策方法としては次の2つがあげられます。
測定タグを最新にする
Google広告やYahoo!広告を利用している場合、測定タグを最新のものに更新するまで正常に機能しない事例が確認されています。
最新バージョンのITPに対応するため、いずれのサービスもタグの見直しが必須です。
Cookieに依存しない方法を取り入れる
Cookieの規制を受けてこれまでのようなCookieに依存しない手法も登場しています。
3rd Party Cookieの代替案としてGoogleが公表しているPrivacy Sandboxが一例です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
Cookieの代替案「Privacy Sandbox」
Privacy SandboxとはGoogleが公表したCookieに依存しない新しい代替案です。
ユーザーのプライバシーを守りながら最適な広告が表示できるプロジェクトとして注目されています。
ブラウザに人工知能を組み込んで利用者の閲覧履歴を分析します。
ITP対策で困った時は?
ITP機能が導入されるとこれまでのようなCookieを利用したリターゲティングや効果の測定が困難になります。
対策方法としては測定タグの更新やCookieに依存しない方法を取り入れるなどがあります。
しかし、初めて対応する方は戸惑うのではないでしょうか。
ITP対策でお困りの方はデジマクラスに相談してみませんか。
ITP対策のノウハウを持った専門スタッフが全面的にサポートします。
新しい手法を導入して業務に支障が出ないように万全の対策を行いましょう。
Webマーケティングの事例はこちら
まとめ
ITP導入は世界基準になっており、今後はGoogleも3rd Party Cookieのサポートを打ちきると発表しています。
Cookieに依存しない新しいテクノロジーも開発されています。
Webマーケターをはじめユーザーデータを活用して広告戦略を行う企業は、代替案の情報に注意を払い遅れないようにしましょう。