企業や職種の違う事業同士が連携し、共同投資や業務提携することで想定以上の利益や成果を得ることを、シナジー効果と呼びます。
シナジーは英語の「synergy effect」を指しており、主に経営学用語として用いられる言葉です。
各会社の技術力とノウハウが一つに合わさることで収益向上が見込め、経営の多角化を計ることができます。
シナジー効果はビジネスの新たな可能性を広げるために重要な要素の一つです。
目次
シナジー効果の成功事例を解説
シナジー効果を発揮するには、企業や各事業部門の性能を活用し、両企業の長所を伸ばしつつ短所を補い合う経営戦略が必要です。
シナジー効果の成功例としては、企業合併や買収、提携などがありますが、いずれも企業のメリットを重視し強みを引き出して成功させています。
つまり、シナジー効果は企業の弱点に注目せず、互いの得意分野や技術を組み合わせて見込まれる成果を検証することでより高い効果が得られるのです。
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シナジー効果の種類
シナジー効果は、元々生理学や生物学において用いられる言葉です。
ビジネスの場面では、経営戦略を練る際の「相乗効果」を示し、医薬品業界では「相乗作用」を指す言葉として使用されるのが一般的です。
様々な分野で活用されるシナジー効果ですが、その効果の種類を詳しく解説していきます。
売上シナジー
売上シナジーは販売シナジーとも言い、主に企業合併や会社を買収して生産性と売上向上を計り、収益を上げる相乗効果を期待するものです。
ただし、単純に1+1=2を目指す意味ではなく、双方に+αの利益とメリットが得られる効果を指します。
売上シナジーは、ブランド力や企業の信用性、人気を活用して商品の魅力やラインナップを拡充することが可能です。
互いの店舗とネット販売チャンネルの共有やホームページのシェアなどで売上向上を計るとより効果が見込めます。
注目すべきは、企業の顧客情報を共有して関連商品を勧める「クロスセリング」という手法です。
- 別の商品やサービスを購入してもらう
- セット購入でお得さをアピール
- 関連商品を勧めて販売意欲をあげる
クロセリングには上記のような効果があり、更に売上アップが期待できます。
コストシナジー
企業同士の関連する事業部門を統合すれば、運営費と人件費をカットできます。
加えて、必要な製品の材料や部品を共同で大量発注し、倉庫や運搬トラックを共有することで、物流コストを大幅に下げることが可能です。
また、海外を含めた営業拠点を統合し、製造工場の生産ラインの共有で更に費用を削減できます。
より品質の高い製品を低コストで大量生産し、コストシナジー効果を得ることが可能です。
財務シナジー
企業買収や合併後に余剰資金がある場合、双方の資金を合算して更に投資を行うと効果的です。
企業拡大による信用力を活用すれば、金融機関から好条件で資金調達がしやすくなる財務シナジー効果が期待できます。
また、企業の将来的な発展に繋げるためには余剰資金を優秀な人材の確保に回すことが大切です。
研究開発シナジー
企業が合併することで、両企業の研究資産が統合されます。
優秀な人材や製品や資金が集結することで、研究開発力と投資力アップが期待できるのです。
また、元々互いの企業が持っている経営ノウハウやマニュアル、技術力、特許などを共有利用できるメリットがあります。
その他のシナジー
企業拡大による人材の獲得や会社のイメージアップ、信用力の向上などがその他のシナジー効果に挙げられる特徴です。
多くの場合、長期的で安定した会社運営が経営者の目的になります。
一つの企業の一部門に顧客が固定された場合、客離れや取引会社の倒産などのトラブルにより経営危機に陥りがちです。
企業合併によるリスク分散がシナジー効果に期待できます。
アナジー効果とは
アナジー効果とは、本来見込んでいた事業間のシナジー効果を得られない現象を指します。
収益や従業員のモチベーションが低下して顧客離れが起こるなど、企業にマイナス効果だけが現れる「負のシナジー効果」を表す言葉です。
相乗効果を得られないどころか企業価値を下げてしまうアナジー効果は、経営者として避けるべき状態と言えます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
シナジー効果の成功事例を紹介
各企業や事業の価値を統合することでより高いシナジー効果を得て企業規模を拡大しつつ、事業を発展させることができます。
シナジー効果を利用して成功した企業について知り、より効果的な経営戦略を立てるのが重要です。
ソフトバンク
1981年に設立したPC用パッケージソフト流通事業「日本ソフトバンク株式会社」は、現在数多くの企業を傘下に持っています。
ソフトバンクは、会社創業時点で経営の多角化を開始し、データ処理事業に加えて出版事業や通信事業に参入するなど、シナジー効果戦略で企業買取を積極的に行ってきました。
1994年の米国Yahoo!株式会社の買収に始まり、2006年にボーダフォンの日本法人を買収して、ソフトバンクは携帯電話事業としての地位を確立しています。
この買取により、ソフトバンクはインターネットのYahoo!ポータルサイトと携帯電話事業が持つ通信網を獲得したのです。
2016年には、3兆円もの膨大な金額で英国の半導体設計企業ARMホールディングスを買収しARMを子会社化し、世界の半導体市場を抑えました。
ファミリーマート
株式会社ファミリーマートは、他企業とのコラボレーション戦略でシナジー効果を得ている企業です。
具体例として、セルフ式ガソリンスタンドに併設することで「用事や買い物を一度に済ませたい」という給油時のドライバーの心理をつき、購買意欲を促進しています。
また、コインランドリーやフィットネス施設と融合することで、双方にとってプラスのシナジー効果を獲得することが可能です。
鉄道会社
鉄道会社の沿線上には、系列の百貨店やデパートが併設されています。
これは多角化戦略によるシナジー効果で利益を効率的に生み出す目的があるためです。
沿線上に百貨店を建てることで、電車を稼働させつつ百貨店の売上を促進することができます。
また、家族連れの来訪を見越してテーマパークや遊園地を沿線上に建設するのも、シナジー効果を狙った戦略です。
鉄道会社は自社の資産である電車を使用し、大勢の人が移動する状況を利用してシナジー効果を効率的に獲得しています。
シナジー効果を出すには
シナジー効果を生み出すには「M&A」、「アライアンス」、「ジョイント・ベンチャー」、「グループ一体経営」の三つが挙げられます。
これらの方法で得られるメリットを知れば、経営戦略に活用することが可能です。
M&A
M&Aとは、合併を意味する「Mergers」と買収を意味する「Acquisitions」の二つを組み合わせた言葉です。
文字通り二社以上の会社が買収や合併によって一つになり、シナジー効果を生み出す方法になります。
企業間のM&Aによるメリットは、生産効率の向上やコスト削減、節税効果を得られる点です。
具体的なM&Aの手法として、同じ職種や業務形態の企業同士で合併し、事業規模を拡大する「水平型M&A」や、バリューチェーン強化と新市場への参入を目的とする「垂直型M&A」などがあります。
企業同士での提携
合併や買収をせず、企業同士で業務提携や戦略的同盟を組むアライアンスという手法があります。
企業間で資本や資産の共有はしませんが、それぞれの技術や能力とブランドをシェアしてマーケティング力を強化し事業拡大を目指す方法です。
アライアンスの代表例は、ANAの航空連合「スターアライアンス」が挙げられます。
加盟企業は航路を共同利用することで、マイレージの共通化や乗り継ぎの簡略化を計り顧客獲得できるのが特徴です。
また、食品のコラボレーションもアライアンスの一つになります。
共同開発で協力関係を築き、各企業の独立性を維持したままシナジー効果を得られるのがメリットです。
新たな事業分野
ジョイント・ベンチャーは合弁企業を指し、主に二つ方法があります。
ジョイント・ベンチャーは、M&Aやアライアンスの中間に位置しており、メリットは大幅にコスト削減が可能です。
- 複数企業による共同出資で新たに会社を設立し、事業を始める
- 既にある企業の株式の一部を買収し、既存企業の株主や経営者と会社を共同経営する
これらの方法を取ることで、経営難に陥った際に失う出資金のリスクなどを軽減することができます。
M&Aで得られるシナジー効果
一つの会社だけで一から開発、生産、販売を実施するのは、市場のニーズが多様化している現在において厳しい面があります。
M&Aは、経営者の課題である後継者問題の解決や経営基盤の強化が見込める他にも運営の多角化でリスクを分散できるメリットが期待できるのです。
売上シナジーやコストシナジー効果を期待できる戦略の一つでもあります。
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企業同士の得意分野がシナジーを生みだす
企業の連携や事業提携でシナジー効果を生み出すために重要なポイントは、互いの技術や得意分野を組み合わせて相乗効果を高めることです。
自社の事業にウィークポイントや苦手分野がある場合、他社との合併や提携で弱点をカバーしてシナジー効果を狙う戦略を考えがちになります。
しかし、合併側の企業にメリットがないとM&Aが成立しないケースが殆どです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
シナジー効果の活用における注意点
シナジー効果を生むには、企業同士の得意分野と強みを組み合わせて価値を増幅させなくては、十分な結果を望むことができません。
他企業とのM&Aやアライアンスを考える場合、どの企業と合併や提携するか熟考しましょう。
その上でマイナスのアナジー効果が発生しないよう注意が必要です。
また、販売シナジーや投資シナジーなど、M&Aで獲得したいシナジーについて事前に明確にする意識が大切になります。
とくに、買収や合併によるM&Aでは法務リスクや財務リスクを念頭に入れて計画を立てることが肝心です。
M&AではなくアフターM&Aが重要
ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)は、M&A成立後の統合過程を指す言葉です。
統合には三段階あり、経営統合、業務統合、意識統合が挙げられます。
M&Aは成立後が特に重要で、PMIに精力的に取り組まなければ十分なシナジー効果を得ることができません。
つまり、M&Aが成約した後も綿密な計画を立て、経営統合を実施する必要があるのです。
計画や準備が不十分だと、M&Aの効果が発揮できずM&A自体が破談になり、双方に損失が発生する可能性があります。
企業統合後は「アフターM&A」の計画を立てることが肝心です。
- コミュニケーションを円滑に図る環境づくり
- 従業員のケア
- 社内のスムーズな情報告知
アフターM&Aではこれらのポイントに注目し、精力的に社内環境と従業員のメンタルをケアします。
M&Aにおける従業員の心離れ
M&Aの成立後は、企業の環境が大きく変化します。
職場環境や経営方針が変わって今後の事業発展に期待する半面、従業員は不安を抱きやすい状態です。
従業員のメンタルケアは取引先や顧客のフォローより優先度が低い傾向になります。
しかしながらアフターM&Aの意識統合で不安や不満を取り除く必要があるでしょう。
従業員の仕事へのモチベーションが低下すると企業全体の業務効率が下がるのはもちろん、優秀な人材の離脱で経営にダメージが生じるためです。
外部へのフォローは大切です。
しかしM&Aの恩恵でシナジー効果を生み出すためにも従業員のフォローに気を配りつつ業務統合を目指すのがポイントになります。
シナジー効果をもっと詳しく知りたい時には
単にシナジー効果だけを期待して買収や合併、提携を計画するのではなく、まずはシナジー効果の意味と生み出したいシナジーの種類を検証することが必要です。
シナジー効果を十分に発生させるには信頼できる適切なパートナーとのマッチングが不可欠になり、成立後のPMIにも力を注ぐ必要があります。
必要に応じてM&Aアドバイザーや専門家からシナジーについての知識を学び、合併後のサポートを相談すると安心です。
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まとめ
効率的にシナジー効果を生み出すことができれば、更なる事業拡大や新たな市場への参入が実現します。
シナジー効果を発揮するには、双方の企業が良好な関係を構築しながらアフターM&AでPMIの統合を目指すことが重要です。
場合によっては、信頼できるM&Aアドバイザーを交えながら計画を立てるとより効果が期待できます。
売上を向上させる相乗効果やコストを削減するメリットを利用して、上手にシナジー効果を活用していきましょう。