マーケティングをする上で顧客の心理を活かしたいと思う人も多いのではないでしょうか。
マズローの法則は、そんなマーケティングに活かすことができる心理学理論の1つです。
しかし、マーケティングに活かせるとはいっても具体的にどのような理論なのか分からない人もいるでしょう。
今回は、マズローの法則をマーケティングに活かす方法について事例を含めて解説していきます。
目次
マズローの法則の概要
マーケティングに活かせる心理学理論「マズローの法則」の概要を確認しておきましょう。
マズローの法則とは、心理学者であるアブラハム・マズローが発表した心理学理論です。
人間の欲求をピラミッド型に当てはめて表したもので、以下の5段階層で構成されます。
- 第5段階:自己実現の欲求
- 第4段階:承認の欲求
- 第3段階:社会的欲求
- 第2段階:安全の欲求
- 第1段階:生理的欲求
第1段階の生理的欲求がピラミッドの底辺に、第5段階の自己実現の欲求が頂上になります。
ここで注意しておきたいのが、必ずしもピラミッドの底辺にある階層が優先される訳ではないということです。
優先される訳ではないとはいっても、生きていく上で最低限必要な生理的欲求が満たされなければその上の段階を目指すことはできません。
また、人間はある欲求が満たれるとさらに上の欲求を満たそうとするのがポイントです。
承認の欲求を満たしたら、次は自己実現の欲求を満たそうとするというのは人間の心理といえるでしょう。
それぞれの欲求については、この後詳しく解説します。
これらの欲求は人間のモチベーションや向上心に影響を与えるため、ビズネスシーンや教育現場でも活かすことができるでしょう。
これが、購買行動に影響を与えマーケティングへの活用に繋がるのです。
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マズローの法則が誕生した背景
世の中には数多くの心理学理論があります。
その中でも、マズローの法則は人間にとって身近な「欲求」をテーマにしているのが特徴です。
それぞれの理論には誕生した背景がありますが、この心理学理論はどのようにして生まれたのでしょうか。
マズローの法則の誕生に影響を与えた心理学理論はこちらです。
- 行動主義心理学:人間の心理は外からの刺激による反射であるという考え方
- 精神分析学:人間の心理部分は無意識によって形成されるという考え方
この2つの心理学理論を見ていくと、行動主義心理学は「反射」・精神分析学は「無意識」を主軸に考えています。
マズローは、これらの心理学理論よりもっと人間の心理を日常的感覚に沿って理論化したいと考えたのです。
その日常的感覚に沿ったものが人間心理学で、その中の代表的なものが「マズローの法則」となります。
マズローの法則「欲求5段階説」
マズローは人間の欲求をどのように分類したのでしょうか。
5段階に分けられた欲求を下段から順に説明します。
生理的欲求
ピラミッドの下段にあるのが、マズローの法則の第1段階に位置する「生理的欲求」です。
生理的欲求とは、人間が生きるための本能的な欲求を意味します。
具体的にどのようなものが生理的欲求に当てはまるのでしょうか。
- 睡眠欲
- 食欲
- 性欲
- 排泄欲求
これらは人間として生きていくために最低限必要なものです。
マズローは、これらの欲求が満たされなければそれ以上の欲求を満たすことはできないと考えました。
安全の欲求
第2段階にあるのが「安全の欲求」です。
安全の欲求とは、危険から身を守り安全な暮らしがしたいという欲求を意味します。
例えば、住む家へのこだわりや食の安全といったものがこれにあたります。
健康的で秩序ある環境を求め、精神的に安定した生活を送りたいと思うようになるのです。
社会的欲求
第3段階は「社会的欲求」です。
社会的欲求とは、仲間を集めて集団に所属したいという欲求を意味します。
生理的欲求や安全の欲求が満たされると、人との関わりを求めるようになるのです。
これが満たされないと精神的に不安定になったり、孤独を感じたりすることもあるでしょう。
承認の欲求
第4段階には、「承認の欲求」があります。
集団に属し社会的欲求が満たされると、今度は「自分」に目を向けるようになります。
つまり、他人から認められたいという欲求が生まれてくるのです。
自分の能力を評価して欲しい・尊敬されたいという気持ちがこれに当てはまります。
承認欲求には「自己承認欲求」と「他者承認欲求」の2種類あり、これらが満たされると「自分は価値のある存在だ」と思えるようになるでしょう。
自己実現の欲求
欲求が満たされていくと、ついにピラミッドの頂上である「自己実現の欲求」を目指すようになります。
第5段階にある自己実現の欲求は、自分の可能性を探求し自分らしさを追求することであるべき姿になりたいというものです。
自分で決めたゴールや目標を達成することでモチベーションを保ち、理想の自分を追求します。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
6つ目の欲求「自己超越の欲求」
マズローの法則が知れ渡った後、晩年のマズローはピラミッド頂点の上にさらなる段階があると発表しました。
ピラミッドの頂上の上にある6つ目の欲求が「自己超越の欲求」です。
お金や名声を得るためではなく、「人の役に立ちたい」「見返りを求めず貢献したい」という欲求をさします。
自己実現はあくまで自分が対象ですが、自己超越は社会や他者を対象とした自分以外のものや他人に貢献したいという思いです。
この自己超越の欲求を満たすビジネスも登場してました。例えば、慈善事業や社会貢献のための活動がこれにあたります。
マズローの法則をマーケティングに活用する際には、自己超越の欲求も意識してみるといいでしょう。
欲求の分類
ここまではマズローの法則の基本的な考え方についてご紹介しました。
それでは、マーケティングに活かすにはどのようにすればいいのでしょうか。
マーケティングに活かすためのポイントは、人間の欲求を分類して考えることです。
人間の分類は、以下の6つに分けることができます。
- 物質的欲求:衣食住を満たしたい
- 精神的欲求:認められたい・理想の自分になりたい
- 外的欲求:自己の外部を満たしたい
- 内的欲求:自己の内部を満たしたい
- 欠乏欲求:自分にないものを満たしたい
- 成長欲求:精神的欲求のために求め続ける欲求
この6つの分類に、マズローの法則の5つの欲求を当てはめると以下のようになります。
- 物質的欲求:生理的欲求と安全の欲求
- 精神的欲求:社会的欲求から自己実現の欲求まで
- 外的欲求:生理的欲求から社会的欲求まで
- 内的欲求:承認の欲求と自己実現の欲求
- 欠乏欲求:生理的欲求から承認の欲求まで
- 成長欲求:自己実現の欲求
6つの分類にマズローの法則を当てはめることで、どのような欲求を満たす必要があるかが見えてきます。
例えば物質的欲求を満たすのであれば、生理的欲求と安全の欲求へのアプローチが必要です。
食べ物や日用品などのモノによって、物質的欲求が満たされる可能性があるでしょう。
このように、欲求を分類しながら考えていくことでマーケティング戦略を考えていくことができるのです。
それぞれのマーケティング戦略についてはこの後ご紹介します。
マーケティング戦略の事例はこちら
欲求の分類別マーケティング戦略
先ほどお伝えした欲求の分類をもとに、それぞれに合ったマーケティング戦略を考えていきましょう。
物質的欲求/精神的欲求
仕事で成功する喜びを得ることや大切な人とレストランで過ごす時間など、社会との関わりを含む欲求であり精神的に満たされる必要があります。
物質的欲求を満たすためのマーケティング戦略は、効果的にモノを提供することです。
そして、精神的欲求を満たすためのマーケティング戦略は経験・体験を提供するということを押さえておきましょう。
外的欲求/内的欲求
マーケティング戦略を考える上で、消費者の何を満たすか考えるのは重要なことです。
外部環境を満たすか・内部環境を満たすかという考えをもってマーケティング戦略を立てましょう。
外部環境にアプローチして外的欲求を満たすのか、内部環境にアプローチして内的欲求を満たすのかということです。
外的欲求を満たすのであればモノや環境作りに着目するといいでしょう。
これを満たすには、消費者の自己肯定感を高めるようなサービスの提供というアプローチがあります。
欠乏欲求/成長欲求
欠乏欲求でポイントとなるのが、一度満たされた欲求は同じ動機によってモチベーションを維持することができないことです。
例えば、国産の軽自動車から高級車に買い替えたとします。
すると、その次は「もっといい車」「さらに高級感がある車」とどんどん欲求がふくらんでいくでしょう。
欠乏欲求に働きかけるには「足りないものを埋めるサービスやモノ」の提供が効果的といえるでしょう。
その商品を手に入れることで、どのような生活が手に入るのかを明示化できるようにマーケティング戦略を立てます。
成長欲求とは自己実現・自己超越の欲求であり、自分が満ち足りているからこそあふれ出る豊かさから生じるものです。
精神的にも物質的にも満たされ自分の可能性を追求することで、他者へ貢献することにも目を向けられます。
成長欲求に対するマーケティング戦略としては、自らのモチベーションを高められるようになるという切り口から戦略を立てるとよいでしょう。
レベルアップし続ける欲求にどう応える
人間は、その段階の欲求が満たされると次の段階の欲求へとレベルアップしていきます。
足りない欠乏感を満たしながらも次の段階に進むことでモチベーションを感じ、だんだんと幸福を感じられるようになります。
満たされない気持ちを段階ごとに少しずつ埋めることで自己肯定感が向上していき、欲求に応えることができるでしょう。
マーケティング戦略を立てるときには、そういった消費者の欲求のレベルアップを考えていかなければなりません。
欲求を満たしたその先を見越した戦略が求められるのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
各欲求を満たすビジネス事例
マズローの法則をビジネスに活かしたビジネス事例はこれまでにたくさんあります。
ここでは、各欲求を満たすビジネス事例を見ていきましょう。
その欲求が何を表しているかを理解してマーケティングに活かすことを意識してください。
生理的欲求を満たすビジネスは難しい?
生理的欲求は、生命を維持するために最低限必要な欲求です。
そのため性的欲求以外は直接ビジネスに活かすことが難しいとされています。
例えば食欲を満たすための「食料品の買い物」「外食」は、生理的欲求を満たすことはできないのでしょうか。
日本は食糧難という状況ではなく、食料品の買い物や外食をする時に付加価値を求める人が少なくありません。
つまり、すでに生理的欲求が満たされる状況にあるということです。
ただし付加価値ばかりに目を向けるのではなく、生命維持のために必要なことも意識しておく必要があるでしょう。
老後の安心のための資産運用
人生100年時代といわれており、老後資金に不安を覚える人は少なくありません。
そこで将来の安心感を得るために行われているのが資産運用です。
老後の資金調達のための資産運用セミナーなどがこれにあたります。
仲間を作り人や他者と関わるためのSNS
仲間を作りたい・他者と関わりたいという欲求を満たすビジネスはSNSです。
会社の同僚とグループを作る・共通の趣味を持つ人と交流するなど、多くの人とインターネット上で繋がることができます。
学校や職場などに所属するというのが、これまでの社会的欲求の考えでした。
しかし、インタネットが普及した現代ではオンライン上での仲間作りが可能になったのです。
またオフラインで知り合った人同士がオンラインで繋がることもできます。
SNSは人との繋がりが多様化した現代において、社会的欲求を満たすビジネスとなりました。
スキルを役立てるクラウドソーシングサイト
自分のスキルをお金にできるクラウドソーシングサイトは、承認欲求を満たすビズネスの1つです。
スキルをもっていても、それをどこかで発揮することができない人は少なくありません。
もっと自分のスキルを役立てたい・認められたいと思う人にとって最適なのがクラウドソーシングサイトです。
クラウドソーシングサイトでの仕事がお金になったり、他者から認められれば欲求が満たされる可能性があるでしょう。
自分を高めるためのビジネスオンラインサロン
成功者の主宰するビジネス系オンラインサロンは、まさに自己実現の欲求のためにあるようなビジネスです。
メンバーのみのクローズドな環境でリーダーのマインドに触れられるだけでなく、そこで自分を高め合う仲間と出会うこともあります。
このような環境に身を置くことで自己肯定感やモチベーションをキープすることが出来るので、自己実現の欲求が満たされます。
マズローの法則を活かしたマーケティング戦略で困った時は?
マズローの法則をマーケティングに活かすことができれば、消費者のニーズにあったものを提供できる可能性があります。
しかし、この法則自体への理解や活用方法に悩む人は少なくありません。
どの階層へのアプローチが必要なのか、どのような戦略が効果的なのかを見極める必要があるからです。
もしマズローの法則の活用で悩むことがあれば、デジマクラスのコンサルタントにご相談ください。
経験豊富なコンサルタントが、消費者の欲求を満たすためのマーケティング戦略をサポートします。
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まとめ
今回は、マズローの法則を構成する欲求をマーケティングに活かす方法をご紹介しました。
人間の欲求は、ある段階を満たすとまた次の欲求を満たそうとするものです。
5つの欲求とそれを超越した欲求について理解し、それぞれの欲求に合わせたマーケティング戦略を立てましょう。
消費者の欲求を満たすということは、ニーズに合ったマーケティングに繋がります。
マズローの法則を活かしたマーケティング戦略に迷ったら、ぜひデジマクラスにご相談ください。