企業の意思決定方式には「トップダウン型」と「ボトムアップ型」があることをご存じの方も多いでしょう。
しかし、それぞれの違いやメリット・デメリットまで詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回は企業経営になくてはならない意思決定方式について詳しくご紹介します。
目次
トップダウン型の特徴は?
企業経営の意思決定方式の1つに「トップダウン型」があります。
トップダウン型とは、企業のトップである上層部(経営陣)が意思決定をし社員におろしていくというものです。
上層部にはCEO・社長・役員などが含まれ、経営方針や風習が反映されやすいのが特徴といえます。
トップダウン型の意思決定方式をマーケティング戦略の決定に例えて見ていきましょう。
- 上層部による現状分析・戦略立案
- 上層部からマーケティング部門に提示
- マーケティング部門が実行に移す
トップダウン型は、主にこの3ステップで意思決定が行われます。
トップが決定したことを現場が実行するため、スピード重視のプロセスといえるでしょう。
ボトムアップ型の特徴は?
企業経営の意思決定方式には、「ボトムアップ型」というものもあります。
ボトムアップ型は、先ほどお伝えしたトップダウン型とは逆のプロセスを辿るのが特徴です。
そんなボトムアップ型の意思決定方式を、マーケティング戦略の決定に例えるとこのようになります。
- マーケティング部門による現状把握・戦略立案
- マーケティング部門から上層部に提案
- 上層部の承認
- マーケティング部門が実行に移す
トップダウン型が3ステップだったのに対し、ボトムアップ型はこの4ステップになります。
ボトムアップの1番の特徴は、現場の声を上層部が吸い上げるというところです。
これまでトップダウン型の企業で働いてきた人にとっては、「そんなことができるのか」と疑問に思うこともあるでしょう。
もちろん、それぞれの意思決定プロセスにはメリット・デメリットが存在します。
トップダウン型とボトムアップ型のメリット・デメリットについては、この後詳しく見ていきましょう。
トップダウン型のメリット
トップダウン型は企業のトップが決定権をもつため、「ワンマン経営」という印象をもつ人もいるのではないでしょうか。
もちろんそのような企業ばかりではなく、トップダウン型のメリットを活かすところもたくさんあります。
ここでは、そんなトップダウン型のメリットを3つご紹介します。
スピーディな経営判断ができる
トップダウン型のメリットには、スピーディーな経営判断ができることがあげられます。
トップは経営方針をしっかりと把握しており、その方針に合った意思決定を行うことができるでしょう。
特に中小企業やベンチャー企業では、短期間の決断・実行が求められることも少なくありません。
そんな時にトップがスピーディーな判断をすることで、現場の社員が動きやすくなるのです。
組織が一体感をもって取り組める
組織が一体感をもって仕事に取り組めることも、トップダウン型のメリットの1つです。
トップが明確なビジョンをもっていれば、それがそのまま企業のブランディングに繋がる可能性があります。
ブランディングができている企業では、組織に対して愛着をもつ人も多いです。
「経営陣のビジョンに共感する」「組織の一員としてトップを支えよう」という思いがあれば、一体感をもって取り組むことができるでしょう。
一体感をもって取り組むことは、業務の効率化や社員のモチベーションにもつながります。
トップ次第で急成長できる可能性もある
トップダウン型は、トップ次第で急成長できる可能性があるのもメリットといえます。
トップが意思決定を行うということは、その人たちの考えや方針に左右される可能性があるでしょう。
そんなトップがいわゆるカリスマ経営者や優秀な人であれば、組織の舵取りとして大きな可能性を見出すことができるのです。
そのためには、スピーディーな経営判断の前段階として現状を把握するスキルが求められます。
また、プロジェクトの成功や新規市場の開拓など急成長できる要素を見逃さないことも大切です。
トップダウン型のデメリットは?
トップダウン型はメリットがたくさんあるように思えますが、デメリットもあることを忘れてはなりません。
デメリットは、実は多くの企業が陥りやすいことでもあります。
そんなトップダウン型のデメリットを見ていきましょう。
社員から反発が起きやすい
トップダウン型には、社員から反発が起きやすいというデメリットがあります。
それでは、なぜ社員からの反発が起きてしまうのでしょうか。その要素をご紹介します。
- トップと現場の間で信頼関係ができていない
- トップが現場の仕事を理解していない
- 現場の問題点がトップに伝わらない
これらの要素があると、社員の反発に繋がりやすいといえるでしょう。
経営陣と社員では、求められる視線や業務は異なります。
だかこそ、トップが現場を理解して信頼関係を構築していく必要があるのです。
また、トップダウン型だからといって現場の問題点が上層部まで届かなければ不満につながりかねません。
社員だけでなく、顧客やクライアントの不満も溜まってしまうリスクがあります。
このように、トップダウン型では社員からの反発に注意が必要です。
トップの能力に左右されやすい
トップダウン型には、トップの能力に左右されやすいというデメリットもあります。
それは、トップダウン型の特徴のところでご紹介したようにトップが意思決定をして社員におろしていくからです。
トップがスピーディーな経営判断ができなければ、それだけプロジェクトの進行が遅れてしまうでしょう。
また、トップの能力次第で判断の内容がズレてしまうというリスクもあるのです。
トップダウン型は、上層部次第で良くも悪くもなり得るでしょう。
ボトムアップ型のメリット
現場の社員から意見を吸い上げるという、ボトムアップ型のメリットをご紹介します。
トップダウン型の特徴やメリットを踏まえて、比較しながら見ていきましょう。
社員にしか分からない課題を拾うことができる
ボトムアップ型には、社員にしか分からない課題を拾うことができるというメリットがあります。
トップダウン型と大きく異なるのが、ボトムアップ型はまず現場で現状把握や戦略立案をすることです。
そのため、最初の段階で現場の課題や問題点を集約することができるでしょう。
集約したものや立案した戦略をトップに報告するため、これらのことが直に伝わりやすいといえます。
社員が感じる課題や問題点は、顧客やクライアントに直結することも少なくありません。
ボトムアップ型は、その特徴によって現場の声が経営陣に伝わりやすくなっているのです。
現場の社員が意見を出しやすい
ボトムアップ型のメリットとして、社員が意見を出しやすくなることがあげられます。
そもそも、ボトムアップ型は現場が現状把握・戦略立案をしなければなりません。
そのため現場の意見が重要視されることになります。
社員はそこにやりがいを見出し、1人1人の責任感や自覚にもつながるでしょう。
企業全体にそういった雰囲気があるため、現場の社員が意見を出しやすくなるのです。
社員の成長につながる
ボトムアップ型には、社員の成長につながるというメリットもあります。
その理由は、ボトムアップ型の特徴やここまで説明してきたメリットからお分かりいただけるのではないでしょうか。
現場の社員の意見がトップに上がり、それが承認されることで現場が動いていきます。
社員はやりがいを感じるだけでなく、お互いに切磋琢磨しながらいいものを作り上げていこうとする可能性があるでしょう。
そのため、社員1人1人が成長しやすい環境になるのです。
ボトムアップ型のデメリットは?
ここでは、ボトムアップ型のデメリットをご紹介します。
トップダウン型にデメリットがあるように、もちろんボトムアップ型にもデメリットは存在します。
デメリットを把握した上で、最適な意思決定プロセスを導入することが大切です。
意思決定が遅くなる
ボトムアップ型のデメリットは、意思決定が遅くなることです。
トップが支持を出すトップダウン型と違い、ボトムアップ型はまず現場の社員が問題点や戦略を話し合う必要があります。
そのため、実行に移すまでに踏むべきステップが多くなり、時間がかかってしまうのです。
また、現場の社員でなかなか話がまとまらない・アイディアが浮かばないといった状態に陥ることもあるでしょう。
そのような状態を乗り越えることで成長できるものの、「時間」という面ではデメリットとなってしまいます。
方向性が明確にならないとうまく機能しない
ボトムアップ型の意思決定プロセスは、方向性が明確にならないとうまく機能しません。
明確にすべき方向性とは、企業の経営方針やプロジェクトの目的といったものが当てはまります。
これらが明確にならないと、現場の社員が話し合う過程で本来求められている方向とは異なる結果を招きかねません。
また、方向性が明確でなければ社員1人1人の認識が違ってしまうこともあり得るのです。
そうなるとボトムアップ型の意思決定プロセスはうまく機能しなくなるでしょう。
最初に方向性を明確にし、共有しておくことが大切です。
社員の能力に左右される
ボトムアップ型のデメリットには、社員の能力に左右されるということがあげられます。
現場の社員の声が反映されるボトムアップ型ですが、成果を出すためにはその社員の能力が必要不可欠なのです。
例えば社員が現状の課題を見出すことができなかったり、人任せだったりするとどうなるでしょうか。
それがチームの中の1人だけなら他の人でカバーし合えるかもしれません。
しかし多くの社員が人任せで自分で考えなければ、ボトムアップ型を機能させることすらできないでしょう。
そのため、ボトムアップ型は社員の能力に左右されやすいのです。
トップダウン型・ボトムアップ型の使い分け
意思決定方式として異なる特徴やプロセスをもつ「トップダウン型」と「ボトムアップ型」ですが、どのようなケースが向いているのでしょうか。
起業する時や転職を考える時など、どちらの意思決定方式がいいのか気になる人も多いはずです。
ここでは、それぞれのプロセス毎に向いているケースをご紹介します。
トップダウン型が向いているケース
トップダウン型が向いているケースには、以下のようなものがあります。
- トップ(経営陣)と社員の距離が近い
- トップのビジョンが明確
- トップにカリスマ性がある
- 取り扱う商品・サービスのマニュアル化が可能
- スピード重視で取り組みたい
トップダウン型では、トップと社員との距離感はもちろんのことお互いの理解が必要といえます。
トップのビジョンが明確であっても、現場にいる社員がそれを理解していなければ意味がありません。
また、トップも現場の状況を分かった上で指示を出さなければ現場の不満を生む結果になるでしょう。
そして、トップダウン型が向いているケースで押さえておきたいのが「スピード重視」というところです。
意思決定のプロセスを見れば分かるように、トップが支持を出して現場が実行に移すためスピード感があります。
これらのことから、トップダウン型は急成長中のベンチャー企業に向いているでしょう。
ボトムアップ型が向いているケース
ボトムアップ型が向いているケースには、以下のようなものがあります。
- 企業規模が大きい
- 事業内容が多岐にわたる
- 専門性が高い商品・サービスを扱う
- 社内コミュニケーションを図りたい
- 現場の判断が重要視される
- スケジュールに余裕がある
これらが、ボトムアップ型が向いているケースです。
企業規模が大きい・事業内容が多岐にわたるケースでは、トップがすべての部署や事業の把握をリアルタイムでするのが難しくなります。
その場合、それぞれの部署で検討したり部署間で調整する方が複雑化を回避できるでしょう。
また扱う商品・サービスの専門性が高いケースでは、事業内容が複雑ということも少なくありません。
そのため現場の意見をトップにあげていく方が、効率的かつ複雑化回避になります。
トップダウン型・ボトムアップ型に向いているケースをそれぞれ見ていきましたが、どちらが優れているという訳ではありません。
自社にとって合っている方式で、トップと社員が一体になれることが重要なのです。
また、その時のプロジェクトや企業の成長具合によってトップダウン型とボトムアップ型を使い分けることもできます。
例えば、普段はボトムアップ型にして、スピード重視のプロジェクトの時はトップダウン型にするということです。
いずれにしても、最終的な責任・判断はトップ(経営陣)にあることを押さえておきましょう。
デジタル時代の意思決定の在り方
デジタル化が進んだ現代では、それに対応した意思決定の在り方について考えなければなりません。
様々なデバイスやIT技術によって、ビジネスも多様性を極めているからです。
まず、デジタル時代の意思決定で重要視されるのが「時間」だといわれています。
インターネットやIT技術を活用することによって、よりリアルタイムに情報を得ることができるでしょう。
それに伴い、情報を扱う人たちもリアルタイムな対応が求められるようになったのです。
リアルタイムな対応を可能にするために、業務の効率化を図るツールが必要になることも少なくありません。
また、デジタル時代であっても意思決定を行うのはもちろん人間です。
トップダウン型・ボトムアップ型のどちらのプロセスをとるにしても、コミュニケーションは忘れてはなりません。
Web会議システムやチャットツールなど、対面ではないコミュニケーションツールの導入を検討するのもいいでしょう。
意思決定のノウハウを学ぶには
意思決定のためのプロセスは、企業経営にとってなくてはならないものです。
また、今後リーダーシップを取っていく立場にある人にも意思決定のノウハウは必要となります。
これから起業したい人や転職でキャリアアップしたい人など、組織のリーダーを目指すのであれば意思決定のノウハウを身に付けてください。
しかし、実際に経験してみなければトップダウン型・ボトムアップ型の特徴がつかめないこともあるでしょう。
もし意思決定のノウハウを実践で学びたいと思ったら、急成長を遂げるベンチャー企業への転職という方法があります。
意思決定のノウハウを学びたい方は、まずはデジマクラスにご相談ください。
転職の相談やノウハウの学び方など、希望に沿ったサポートをさせていただきます。
まとめ
今回は、トップダウン型とボトムアップ型の意思決定方式の特徴をそれぞれご紹介しました。
トップダウン型は経営陣であるトップが決定したことを現場におろすというプロセスです。
一方、ボトムアップ型は現場で決めたことをトップに報告し、承認を得た上で実行するというプロセスを踏みます。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらが優れているという訳ではありません。
企業の成長や、事業に合った意思決定方式を選択することが大切なのです。
企業経営に欠かせない意思決定プロセスについて学びたい方は、ぜひデジマクラスにご相談ください。