アドベリフィケーションツールは、Webに掲載された広告がちゃんと見られているか、適切なサイトに掲載されているかを測るツールです。
デジタル広告市場が広がる中、新たな課題として第三者による詐欺広告・ブランド毀損などが表面化しています。
作り上げた広告が悪用されないようにするためにアドベリフィケーションツールの導入が急がれているのです。
今回はアドベリフィケーションツールの機能や費用を解説します。
目次
広告(ad)を検証(verification)するアドベリフィケーション
アドベリフィケーションは「アド(ad)」+「ベリフィケーション(verification)」からなる造語です。
広告が本来の要求にそったものであるか検証するという意味を持ちます。
アドベリフィケーションが求められるのは、広告を配信したり表示したりする技術が高度化し複雑になったためです。
それではアドベリフィケーションについて見ていきましょう。
アドベリフィケーションの仕組み
アドベリフィケーションでは、広告が悪用されて他のサイトに掲載されていないか、広告の掲載後どれくらい閲覧されているかなど検証します。
Webサイトで掲載された広告を全て把握することが困難なため犯罪の温床になっている現状があるのです。
広告主の知らないところで広告が悪用され、数百億円にものぼる被害をもたらした事件も世界では起こっています。
アドベリフィケーションで検証する主な仕組みは3つあります。
- ブランドセーフティ
- アドフラウド
- ビューアビリティ
「ブランドセーフティ」は、広告がブランドイメージを毀損するような悪質なサイトに掲載されていないか分析します。
「アドフラウド」は、広告詐欺が行われていないかを調査します。
「ビューアビリティ」では、ユーザーが広告を見ているかを検証するものです。
アドベリフィケーションの現状
2020年の調査ではアドベリフィケーションをキーワードとして知っている人が5割を越えました。
しかしながら、内容まで把握している人は3割程度となっています。
また、実際に対策をとっていると回答した企業は4割を越えています。
一方で、対策をとったことはあるが今後は対策をしない、あるいは対策を全くしていない企業も多くあるのです。
特に広告主の規模が小さくなればなるほど実施率は下がる傾向が見られます。
主な理由は、
- どう取り組んだらいいのか分からない
- 予算がない
といったものです。
今後は導入までの工数とコストにどう対処するかが重要な課題といえるでしょう。
アドベリフィケーションの需要の高まり
ブランドセーフティ・アドフラウド・ビューアビリティに積極的に取り組む企業が増えています。
こうした傾向が高まって来た理由は、デジタル広告による詐欺や毀損問題の表面化が著しくなってきたことがあげられます。
放置していればいずれ企業やブランドのイメージが傷つくだけでなく、対策を取らなかったことへの社会的責任問題が出てくるでしょう。
アドベリフィケーションへの意識は高まる一方で、知識不足やコスト負担などの問題も出てきています。
特に中小企業にとってコストは大きな足枷になり得るのです。
アドベリフィケーションの役割
アドベリフィケーションは、ブランドイメージの保護と広告が正しく見られる場所に表示させる役割があります。
特に3つの観点で検証を行っています。
ブランドセーフティ
「ブランドセーフティ」では、ブランドの安全性を検証する手法です。
ブランドセーフティでは、広告が適さない場所に掲載されていないか解析します。
具体例で見ると、2017年3月にある企業の広告がヘイト動画に利用されました。
それが拡散され大手広告主が一斉に広告ボイコットする騒ぎになりました。
アメリカをはじめ諸外国では、ブランドセーフティの規制対象になるサイトとして武器や銃器などがあります。
しかし、日本ではあまり認識されていません。
そのためどのような場合にブランドの毀損リスクがあるのかしっかり見極める必要があります。
ビューアビリティの保証
「ビューアビリティ」とは、実際に広告をユーザーが閲覧できているかどうか検証することを指します。
広告は配信されてから、ユーザーがアクセスしスクロールして初めて閲覧されたと認識するのです。
つまり広告が開いても、直ぐに閉じて他のサイトへ飛んだ場合は閲覧した認識にはならないということになります。
典型的なものとして「ビューアブルインプレッション」という定義があります。
広告面積の50%以上が画面に1秒以上表示された場合にカウントするという定義です。
「ビューアブルインプレッション」によって、閲覧された広告のインプレッションが可視化できます。
アドフラウド対策
「アドフラウド」とはad(広告)とfraud(詐欺)と組み合わせた造語で、広告詐欺を指します。
具体的には、広告の表示回数やクリック数を水増しして広告費用をだまし取る行為のことです。
実際に行われたロシアのハッカー集団の手口が問題になりました。
この時の手口は、オークションページを偽装して高価格の入札を行い,不正に広告収益を得ようとしたものでした。
例えば大量のスマートフォンを使い、クリックする「クリックファーム」も問題になりました。
この手口は、閲覧数を不正に増やしサイトの評価や収益性を高めることを目的としたものです。
不正に広告収入を得ようとする不正業者を排除するためにも、アドフラウド対策は欠かせません。
アドベリフィケーション導入の流れ
デジタル広告が普及し、広告が「いつ、どこに表示され、誰に見られて、費用がいくらかかっているのか」を把握することが困難になっています。
しかし、何もしないで放置しておくと不正業者の餌食にされる可能性が出てきます。
これを未然に防ぐためにアドベリフィケーション導入が急がれているのです。
ここではアドベリフィケーション導入の流れについて解説しましょう。
広告配信状況の把握
当たり前ですが、自社がどのような広告をどこに掲載しているのかまず確認しましょう。
把握できていないのも不正利用される原因と考えられます。
デジタル広告にはいくつもの種類があります。
デジタル広告には、掲載しているサイトがアドベリフィケーションに未対応の場合があるのです。
全てアドベリフィケーションに対応するのは負荷がかかるなら優先順位を付けて順次対応しましょう。
緊急性がある場合は早めに着手して悪用されないようにしてください。
アドベリフィケーション施策の把握
自社の広告配信の現状が分かれば、アドベリフィケーションをどうやって実施するかです。
アドベリフィケーション施策する方法として2つあります。
- ベンダーを利用する
- 自社で行う
一般的にはベンダーを利用して施策するのがほとんどでしょう。
「アドフラウド」・「ブランドセーフティ」・「ビューアビリティ」の全てに対応している会社があります。
一方、アドフラウド対策のみなどもあるのです。
アドベリフィケーションベンダーを利用する場合、その会社が作ったブラックリストを活用するのもおすすめです。
広告配信除外リストとして活用しましょう。
リストの更新頻度が高ければそれだけリスクも低減されます。
ただし、ドメインしか登録ができません。
自社に合う方法の選定
アドベリフィケーションの施策方法が決まったら早くとりかかりましょう。
ベンダーを利用する場合、Post-Bidならベンダーから付与される解析用のタグを広告と併せて入稿してください。
Post-Bidとは入札した後の広告のことで、リスクを可視化して問題があれば対応します。
Pre-BidならDSPの画面から操作するだけで対応できます。
Pre-Bidでは、入札前にDSPから広告配信リクエストがあれば設定していたリスクに該当するかどうか検証するのです。
もし、リスクがあると判明すれば入札を中止します。
特にアドベリフィケーションで問題になるのがコストです。
費用対効果を考えて自社に合うツールを選定することが重要になります。
実施施策の検証
アドベリフィケーションを実施したら次に繋げるためにきちんと検証してください。
アドベリフィケーションベンダーが使用する基準値を用いるといいでしょう。
自社の検証結果を基に基準値を上回るかどうか、もし下回る場合は見直しをしてください。
その際にブラックリストの精査や配信プラットフォームの変更を検討する必要があるかもしれません。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
アドベリフィケーションツールの機能
インターネット上に配信する広告をコントロールするアドベリフィケーションツールの需要が高まっています。
自動で広告枠を買い付けるプログラマティックな広告取引では常にリスクが潜んでいるのです。
広告を悪用されて企業がダメージを受けて、不正な手法で広告料を搾取されたりします。
アドベリフィケーションツールは、適正な運営ができているかチェックする機能を持っているのです。
そうした不正行為に対して自社の広告を検証できる優れたツールといえるでしょう。
先に述べた3つのポイントを検証することで、広告の投資効果の向上と無駄な費用の削減に貢献します。
アドベリフィケーションツールの費用
アドベリフィケーションツール導入には、工数と費用がかかります。
アドベリフィケーションツール導入費用はCPMで課金されます。
CPMはインプレッション単価のことで1,000回表示あたりの広告のコストのことです。
アドベリフィケーションツールのランニング費用がCPMに含まれるため費用増に感じられ、費用対効果が低いと誤解されるケースがあります。
実はアドベリフィケーションツールを導入した方が無駄な支払いがカットできたという事例はいくつもあるのです。
導入した場合としない場合を詳しく検証すれば費用対効果が高いと結論が出る可能性が高くなるでしょう。
ただツールの種類によってコストが異なるため、費用対効果と優先度を考え、どのツールを選択すればいいのか検討しましょう。
アドベリフィケーションツールは無駄な広告費削減にも寄与するため、導入を前向きに考えることをおすすめします。
アドベリフィケーションツールの代表ベンダー3選
ここで代表的なアドベリフィケーションベンダーを紹介します。
IAS
Integral Ad Science (インテグラル アド サイエンス)株式会社が提供するツールです。
2009年アメリカで設立され、世界19拠点でサービスを提供しています。
3つの機能に対応し、Facebook・YouTube・YDN・GDNとも連携している信頼度の高いツールです。
企業に合ったサービスを提供し、日本ではロート製薬株式会社・日本マイクロソフト株式会社などが導入しています。
Momentum
Momentum株式会社は2014年に日本で設立された会社です。
日本におけるアドベリフィケーションツールの草分け的存在で、ビューアビリティ・アドフラウド・ブランドセーフティに対応しています。
広告プラットフォームや広告代理店とも提携するなど実績がある会社です。
HYTRA (ハイトラ)というツールで、入札前のブロック・入札後のブロックで広告主のニーズに応えます。
さらに、ユーザーを不快にする配信フォーマット対応も行っているのです。
主な取引先には、株式会社電通・株式会社博報堂・株式会社ADKホールディングスなどがあります。
DoubleVerify Japan
DoubleVerify Japan株式会社は2008年アメリカで設立された会社の日本法人です。
フラウドフリー、ブランドセーフ、ビューアブル、in-geoを満たしている認証「Authentic Impression」を持っています。
これはアメリカのMedia Rating Councilがメディア調査とレーティングの目的で認定を管理する非営利組織が認証しているものです。
DoubleVerifyの計測方法は主に2つあります。
まず、Pre-Bidでは広告費用が発生する以前となる入札リクエスト段階で機械的なフィルタリングを行います。
こちらの機能は大手のDSPにほぼ全て対応しているのです。
そしてPost-bidでは、広告配信後に問題ある広告を表示させない処理をします。
後者は新規のプラットフォームにも対応します。
アドベリフィケーションツール・ベンダーの選定ポイント
広告主にとって最良のベンダーを選定するポイントは、正確なフラウド検出・多面的なアプローチが可能なことです。
デジタル広告には不正や詐欺は付いて回るものです。
しかし、無効なトラッキングで広告費用が流用されないように対策は必要といえます。
ベンダー任せではなくユーザーもアドベリフィケーションに関する知識を増やしましょう。
自社のデジタル広告にアドベリフィケーションツールを導入するメリットとデメリットを検証して最適なベンダーを選んでください。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
アドベリフィケーションツールの注意点
アドベリフィケーションツールでは広告配信の実績データを分析して不正サイトであると判断します。
しかし、注意点があり表示回数の多さや成果の低さだけでアドフラウドと確定できないことです。
例えばPost-bidでは問題ある広告はブロックできますが、その広告にかかる費用は負担しなければなりません。
また、ブロックした広告には問題がないものも含まれるケースがあるのです。
もちろん不正な広告はブロックすべきですが、それと同時にブランドセーフティの基準とキャンペーンの効果は維持する必要があるのです。
必要な広告までブロックしてしてコストを支払わないように注意しましょう。
アドベリフィケーションで悩んだらプロに相談しよう
これまでも何か不正への対策をとれば、それをかいくぐるように巧妙化が進んできました。
今後もその流れは変わらないでしょう。
しかし、手を打たなければ不正利用の標的にされてしまいます。
アドベリフィケーションの導入やどこのベンダーを選定すべきか悩んでいるならデジマクラスに相談ください。
アドベリフィケーションに関する知識とノウハウがデジマクラスにはあります。
アドベリフィケーションツールの費用でお困りでしたらシミュレーションして検証もいたします。
マーケティングツール導入・活用の事例はこちら
まとめ
デジタル広告配信の最適化を図るアドベリフィケーションツールは、複雑化する広告業界には欠かせません。
不正や詐欺行為も根絶することは難しいでしょう。
しかし、被害を最小限に抑えるアドベリフィケーションツールのニーズは今後も高まるでしょう。
アドベリフィケーション知識を備えておけば、Web広告においてメリットを享受できます。
この機会に自社のWeb広告を見直してみてはいかがでしょうか。