行動経済学者ダニエル・カーネマンが発表したピーク・エンドの法則は、人間の心理現象を読み解く有名な法則です。
恋愛をはじめとした心理学で取り上げられることが多いですが、マーケティングにおいても有効に活用できます。
しかし法則をもとにするといっても、どのように活用するべきかわからない方も少なくありません。
そこで今回は、ピークエンドの法則の概要やマーケティングに繋げる活用方法をご紹介します。
効率的なマーケティングを行いたい方は、ぜひご一読ください。
目次
ピークエンドの法則の概要
ピークエンドの法則とは、印象強いピークの出来事とエンド(最後)の出来事が全体評価に影響するという心理現象です。
この法則はほぼ全ての体験にあてはめられます。
マーケティングにおいても同様です。
ピークとエンド以外の場面では全体評価に影響しない、ということを理解しておく必要があります。
伝えたいことをピークとエンドで上手く強調すれば、マーケティングが成功する確率は一気に高くなるでしょう。
顧客満足度を左右する瞬間
ピーク時とエンドの経験は、顧客満足度を大きく左右する瞬間です。
ピークとエンドに良い経験をしていると、顧客の満足度は全体的に高くなります。
この法則を意識してマーケティングを行えば、リピート率の向上も見込めるでしょう。
特にエンドは最後というタイミングがはっきりしているので、意識して顧客満足度を上げることが可能です。
ちょっとした気遣いの一言や小さなプレゼントが、全ての印象を決定づけるような大きな効果を出します。
リピーターの獲得・増加に繋がる
顧客満足度が上がれば、自然とリピーターの獲得・増加に繋がります。
なぜなら、満足度が高いということは顧客が「また利用したい」と感じてもらいやすいからです。
その根拠となる心理の裏付けとして、ピークエンドの法則を発表したダニエル・カーネマンによる実験があります。
内容は、痛いほどの冷水に60秒手を浸すのと、同じ冷水60秒の後に1℃低い冷水に30秒手を浸すという2つの体験によるものです。
もう一度体験するならどちらが良いと質問すると、被験者の8割が後者を選択しました。
後者の場合、前者の30秒も長く苦痛があったのにも関わらずです。
このことから、ピークの後にどのようなエンドを迎えたかで感情が変化するとわかります。
マーケティング戦略の事例はこちら
日常の中にあるピークエンドの法則の事例
ピークエンドの法則は、日常の中で多く見ることができます。
代表的な事例は下記のとおりです
- 行列待ち
- 映画
- 過去の恋愛経験
ここから詳しくご紹介します。
行列のできるお店
行列のできるお店は一目で人気があるとわかるため期待は高まるものの、目的を達するまで長い間待たなければなりません。
そしてどんなに長い時間並んでいても、サービスを受けられる時間は一定です。
大抵は待ち時間の方がはるかに長くなります。
しかしサービスを受けているピークからエンドまでの時間が満足のいくものであれば、結果的に良い印象だけが残るでしょう。
待ち時間の苦痛は忘れ去られ、満足感を得た顧客は「また利用したい」と感じます。
映画
映画を観て得られる満足感は、ピークエンドの法則が大きく関連しています。
例えば中盤までずっと退屈な内容だったとしても、終盤で一気に盛り返すような展開があると記憶に残りやすいのです。
この場合クライマックスがピークであり、ラストシーンがエンドになります。
2つの場面が強く印象に残れば、その映画は「良い映画」という評価に結び付くのです。
つまりピークエンドの法則を上手く活用した映画は、前半が退屈に感じやすい内容でも充分満足度が得られる映画といえます。
思い出
ピークエンドの法則は、思い出という記憶の面でも強く影響を及ぼします。
例えば、過去の恋愛を思い出してみてください。
印象に残っているのは、楽しかった絶頂期か別れ際のエピソードという方が大半です。
この場合楽しかった頃がピークで、別れ際がエンドとなります。
別れ際に激しく揉めた経験がある場合、ピーク・エンド共に別れ際でネガティブな印象しか残らないこともあるでしょう。
ピークエンドの法則のマーケティングへ活用した例
日常での事例を確認したところで、今度はピークエンドの法則をマーケティングに活用した例について見ていきましょう。
法則を上手く活用することで、顧客満足度の向上や成約率アップに繋がります。
その結果、ファンやリピーターを効率良く増加させることができるのです。
マーケティングの場は店舗・デジタルどちらでも高い効果が期待できます。
ここでは2つの例をピックアップしました。
飲食店
飲食店のマーケティングでピークエンドを考えると、ピークは食事をしているときになります。
美味しい料理を提供するのは当然ですが、料理以外の心がけでより顧客の満足度が高くなるでしょう。
例えば料理を提供する店員の態度や、店内に流れるBGMなどがあげられます。
そしてエンドとなるのは帰り際(会計時)です。
店員による心のこもった態度・言葉遣いや、お菓子のような小さなプレゼントは顧客にとって強く印象に残ります。
すると待ち時間の長さといった小さな不満があっても、「最後まで楽しい時間を過ごせた」と思ってもらいやすいのです。
情報発信
情報を発信する際は、まず内容を起承転結に分けて考えることが大切です。
この場合ピークは起・承・転のどこにあててもいいのですが、映画の要領で転を意識するのがおすすめです。
エンドは結になるので、後半からテンポよく明確にアピールできます。
ピークエンドにはそれぞれ顧客に提案したい商品・サービスで最も伝えたいポイントを入れましょう。
ピークとエンドに2回同じことを繰り返すことで、顧客の印象に残りやすくなります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ピークエンドの法則の活用シーン
ピークエンドの法則は様々なビジネスシーンで活用できます。
具体的なシーンは下記のとおりです。
- 購買行動の促進
- 情報発信・プレゼンテーション
- 営業・訪問活動
法則を意識して活用すると、顧客から見た商品・サービスの価値が高くなります。
その結果、競合他社より多少金額が高くても自社を選んでくれる確率が高くなるのです。
ここからは各シーンについて詳しくご紹介します。
購買行動を促進する
購買行動を促進させるためには、顧客に商品の価値を感じてもらう必要があります。
例えば、最高級のワインを提供している2つのレストランがあると仮定しましょう。
A店はお客様に説明することなくワインを出しますが、B店では最高級のワインであることを説明したうえで提供しました。
するとお客様はB店に対して、提供されたワインには相応の対価を払う価値があるものだと納得しエンドで満足感を得ます。
一方A店ではB店と同じ価格で設定しても、価値がわからずお客様が「高い」と感じる可能性が高いのです。
情報発信・プレゼンテーション
情報発信・プレゼンテーションではエンドを意識することが重要です。
興味をひくような情報を提供しても、最後に細かな事項や具体的な見積もりに終始してはあまり印象に残りません。
一方先に提示していた商品のメリットをまとめたり、今後に期待できるようなポジティブな内容を紹介すると効果的です。
エンドに前向きなイメージを印象づけて、顧客の関心を高めましょう。
営業・訪問活動
営業・訪問活動では、セールストークにピークとエンドを決めておくことで商品の魅力が伝わりやすくなります。
顧客の心にどれだけ届くかが重要ですので、セールスの流れはしっかりシミュレーションしておきましょう。
特に「今回限り」といった特別感のあるワードや、「3分だけお時間ありますか」というような興味をひく話法は効果的です。
顧客がピークの内容に耳を傾ける後押しになるでしょう。
また少し高度なテクニックですが、要望に対して一旦断ったり迷ったりすると顧客は「自分のために無理をしてくれた」と感じます。
その結果エンドに顧客満足度が向上するので、成約率がアップするでしょう。
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ピークエンドの法則のWebマーケティングでの活用方法
Webマーケティングにおいても、ピークエンドの法則を活用することで大きな効果が期待できます。
自社のサイトを訪れたユーザーがどこに関心を示すか意識しながら作成してみましょう。
特に重要なのは、初見の印象です。
Webマーケティングにおけるピークとは、ユーザーが最も期待を持てる部分といえます。
ユーザーをエンドまで誘導するためには、最初にしっかりピークを持ってくることが大切なのです。
コンテンツ作成
コンテンツを作成する際は、まず全体の構成を考えることからはじまります。
構成ができたら大まかに起承転結で分類してみましょう。
すると全体の中でどこに1番焦点を当てるべきポイントかが見えてきます。
そのポイントの直前と結に当たる部分に、最もアピールしたいことを入れるようにしましょう。
2回同じような内容を繰り返すことで、ユーザーにも重要な情報が効率良く伝わります。
金額提示の方法
金額提示はどのマーケティングにおいてもタイミングが重要な場面です。
Webマーケティングではユーザーの期待値が最も高くなったと予測できる場面で金額提示を行います。
このとき提示するのは、あくまでも定価や標準価格です。
そして最後に割引価格や限定価格として特別感を出します。
するとユーザーは自然と背中を押されたように感じ、購入を決断しやすくなるのです。
ランディングページで活用
ランディングページで活用するには、全体をひとつのストーリーとして考えることからはじまります。
基本的には下記の構成となるのが一般的です。
- タイトル
- 導入文
- 主張
- 主張の理由・経緯
- まとめ
このときピークにあたるのは「主張」か「主張の理由・経緯」となるのが理想です。
タイトルや導入文をユーザーがピークと捉えた場合、期待外れに感じてエンドを見る前に離れてしまうリスクがあります。
エンドは「まとめ」にあたりますので、ピークを意識しながら作成しましょう。
サンキューページの設定
商品・サービスの購入後は、サンキューページを設定するのが効果的です。
この場合商品・サービス購入がピークで、サンキューページがエンドとなります。
店舗で店員がお客様をお見送りするように、最後に感謝を伝える姿勢は「また来たい」という好印象に繋がりやすいです。
特にユーザーの心理として、購入直後は後悔が生じる傾向があることを理解しておきましょう。
自動メールひとつ送るだけでも、そうした後悔が緩和され顧客満足度の維持に繋がります。
ピークエンドの法則を演出するにはユーザー体験を意識する
ピークエンドの法則を演出するには、ユーザー体験を意識することが大切です。
演出次第で、ユーザーの感情はポジティブにもネガティブにも変化する可能性があります。
そして人間の心理的にネガティブな感情の方が記憶に残りやすく、周囲に共有したくなる傾向があることに注意が必要です。
全体的にポジティブな内容でも、ピークとエンドがネガティブに感じれば全てがネガティブな体験となってしまいます。
逆にいえばピークとエンドさえ良ければ、ポジティブな体験としてユーザーに良い印象を残せるのです。
ピークの感じ方は人それぞれ異なる
ピークエンドの法則を意識してマーケティングを行っても、実際ピークの感じ方は人それぞれ異なることがあります。
さらにピークを感じる場面も、意図していた部分とは違うケースが少なくありません。
つまりピークを完全にコントロールすることは不可能なのです。
一方エンドの演出はピークに比べて簡単です。
最後であることが決まっているので、好印象を与える心がけひとつで顧客満足度の向上に繋がります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ピークエンドの法則の営業での活用方法
ピークエンドの法則を営業で活用するには、顧客満足度を意識することが重要です。
全体の流れでピークとエンドを設定し、ポイントを絞って効果的にアピールしましょう。
基本的にはピークでしっかりと良い印象を与え、エンドでまた利用したくなるような演出を行います。
ピークとエンドを意識することで、競合他社との差別化をはかることも可能です。
自社独自の価値を顧客に伝えられるでしょう。
ピークエンドの法則をマーケティングで活用する時に悩んだら
ピークエンドの法則をマーケティングに活用するうえで悩んだときには、デジマクラスに相談するのがおすすめです。
デジマクラスは多くのマーケティングを成功させてきた実績があり、様々なノウハウを持っています。
そしてそれぞれの会社に合った活用方法を提案することが可能です。
デジマクラスのコンサルタントが、マーケティングの成功に向けて最後まで丁寧にサポートします。
ぜひ気軽にご相談ください。
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まとめ
ピークエンドの法則は、マーケティングにおいて様々な場面で活用できます。
上手く活用することで、ファンやリピーターの増加に繋がる可能性が高いです。
そのためには全体の構成を考えてから、ピークとエンドを意識することが重要になります。
ユーザーの心理を考えながら、良い印象が残るよう効率的にアピールしましょう。
ピークエンドの法則を活用して、ぜひマーケティングを成功に導いてください。