ビジネスを継続させていくためには新規顧客獲得は欠かせない要素です。

そして、その顧客獲得にかかるコストも健全な運営を保つ上で重要視されるキーワードの1つでしょう。

いくら新規顧客を拡大できたとしても、そこにかかるコストが大きくなり過ぎていてはビジネスとして成り立ちません。

今回はビジネスの健全性を図る1つの指標として使われているCACについて解説していきます。

CACの概要や算出方法、目安となる数値などについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

CACの概要

書類を持つ男性

まずはCACがどういったものであるか、その概要について解説していきましょう。

顧客獲得単価に関わるコスト

コスト

CACとは「Customer(顧客)」「Acqusition(取得)」「Cost(費用)」の頭文字を取った言葉です。

日本語に訳すと「顧客獲得単価」と呼ばれ、顧客1人を獲得するのに費やしたコストを意味します。

顧客獲得のための広告費や営業人件費などすべての費用を合計したものを獲得した顧客数で割って算出される数値です。

費やしたコストによってどれだけ効率良く顧客を獲得できたかを図る指標となります。

CPAとは使用されるシーンが異なる

CACと同じような指標でCPAというものがあります。

CPAは「Cost Per Action」の頭文字を取ったもので、CACと同様に顧客獲得単価を意味する用語です。

ただし、CACとは使用されるシーンが異なりCPAでのコストは広告費に限定されています。

つまり、広告費に対しての新規顧客数の割合を求めるので、その他の人件費などはCPAでは考慮されません。

純粋に広告に対しての効果を求める指標となるので、CPAはどちらかというとWeb広告の分野で使用されることが多いです。

それに対してCACでは諸経費なども含むすべてのコストを考慮するので、利用シーンが限定されることなく幅広い場面で使われます。

 

ワンポイント
・CACは顧客獲得単価を意味しており、顧客1人当たりに費やしたコストを表す指標
・CPAも顧客獲得単価の指標だが、算出するコストは広告費に限定される

 
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CACの種類

ポイント 男性

一口にCACといっても、顧客の流入経路によって大きく分けて3つの種類があります。

CACの3つの種類について解説していきましょう。

Organic CAC

Organic CAC自然に増える顧客獲得コストを意味する言葉です。

例えば、既存顧客からの紹介や口コミ、検索からの流入などが分類されます。

自然に増える顧客であるため、基本的には新規コストをかけない前提で考えることが一般的です。

そのため、明確にOrganic CACの効果で獲得した顧客だと断定しづらい場合もあるでしょう。

しかし、広告施策を打った際にOrganic CACの数値を把握しておかないと必要以上に施策の効果を上積みしてしまう可能性があります。

新規顧客がどの経路から流入しているか判断することも、施策の効果を図る上で重要な要素です。

Paid CACお金を払って獲得した顧客コストを表す言葉です。

これは主にコストをかけた広告や有料チャネルの効果を図るために使われます。

顧客獲得の多くの場合はコストを支払って顧客を獲得することになるので、このPaid CACが主要な数値となるでしょう。

また、有料チャネルから得られた新規顧客というように、Organic CACに比べて顧客の流入経路が特定しやすいのも特徴の1つです。

Blended CAC

Blanded CACはOrganic CACとPaid CACの2つを合わせた顧客コストです。

流入経路を特定せずに、一定期間にかけたコストと増えた顧客数で計算していきます。

一般的にCACという場合にはこのBlanded CACを意味することが多いでしょう。

特に流入経路などを特定する必要のない場合では、このBlanded CACでコストが計算されます。

しかし、Paid CACの広告費の見直しを行う際などではOrganic CACとPaid CACの割合を把握する必要があるでしょう。

費用をかけてどれだけの顧客数が増えているか精査した上で、その後の広告費を考える場合では内訳を把握する必要があります。

どういった目的でCACを算出するか、その用途に合わせてCACの種類を使い分ける必要があるでしょう。

 

ワンポイント
・Organic CACは自然流入で獲得した顧客コスト
・Paid CACはコストを支払って獲得した顧客コスト
・Blanded CACはOrganic CACとPaid CACの2つを合わせたもの

 
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CACが重要な理由

クエッションマーク

次に、CACが重要な指標として扱われる理由についてご紹介します。

適切なマーケティングチャネルを選択する

マーケティング 数値

CACとは顧客獲得単価であり、文字通り顧客を獲得するのにどれだけのコストがかかっているかを求める際に用いられます。

Web広告や有料チャネルなどそれぞれのCACを算出することで、その効果を可視化することができるのです。

それにより適切なマーケティングチャネルを選択するのに役立たせることができます。

潜在顧客数が多くコストの高い媒体であっても、自社メディアでは反響が得られないようであれば当然他の媒体を選ぶべきです。

CACを把握しておけば、効率の良いコストコントロールにつながっていくでしょう。

ユニットエコノミクスの健全性を把握する

ユニットエコノミクスとは顧客1人当たりの採算性を表す指標です。

このユニットエコノミクスでは、CACと共にLTVの数値が使われます。

LTVとは「Life Time Value」の頭文字を取った言葉であり顧客生涯価値を意味する言葉です。

これは1人の顧客が生涯の内にその企業にもたらす利益の総額を表します。

ユニットエコノミクスは、LTVをCACで割った数値です。

言葉で言い換えると、1人の顧客が生涯の内もたらす利益をその顧客を獲得するのに費やしたコストで割るということになります。

このユニットエコノミクスの数値が1以上であれば、すなわちLTVがCACを上回っていれば健全であるといえるのです。

この数値が1を下回るということは、獲得した顧客が十分に利益をもたらす前に離脱されていることを意味します。

このようにプロジェクトの健全性を図り、継続や撤退の判断をするためにユニットエコノミクスが活用されるのです。

 

ワンポイント
・CACを把握しておくと適切なマーケティングチャネルの選択に役立つ
・ユニットエコノミクスは顧客1人当たりの採算性を表す

CACの計算方法

電卓 男性

CACの計算方法は、以下の数式で求めることができます。

CAC = 顧客獲得コスト ÷ 顧客数

顧客獲得のために費やしたコストを、獲得できた顧客数で割ることでCACを導き出すことができます。

すなわち、CACとは顧客1人当たりに費やしたコストということになるのです。

Paid CACの場合は明確にどのメディアにどれだけのコストをかけたか算出しやすいでしょう。

対して一般的なCACであるBlanded CACを算出する場合は、一定期間でかけたコストの合計とその期間に増えた顧客数をもとに算出します。

任意の期間に対してかけたコストと増えた顧客数の数値をもとにして、顧客1人当たりに費やしたコストを算出するのです。

CACの平均値

データ分析

CACの目安はどれくらいなのでしょうか。

CACの平均値について解説していきます。

中央値

一般的にCACの中央値の健全な状態は、LTVがCACの3倍以上であることだといわれています。

つまり、顧客1人を獲得するのに費やしたコストの3倍以上を顧客から回収できていればビジネスとして健全な状態だということです。

ただし、CACに対してLTVの数値が高ければ高いほど良いというわけではありません。

場合によってはさらに顧客を広げられるように投資を行いCACの数値を上げることが全体の利益額を拡大させる可能性もあるのです。

CACの数値が上がっても、それに応じてLTVの数値が上昇している状態がビジネスとして良い状態だといえるでしょう。

回収期間の中央値

CACのポイントとしてどれだけの期間で投資が回収できるかの回収期間も重要な指標の1つです。

回収期間の中央値としては12ヶ月以内というのが1つの目安とされています。

CACの回収期間は、CACを顧客1人当たりの月の平均売上額で割って算出した数値です。

業績の良い企業では5~7ヶ月で回収できる場合もあり、短いほどキャッシュフローが良いということになります。

LTVはCACの3倍が目安なので12ヶ月で投資コストを回収すると考えた場合、顧客をつなぎとめる目安も36ヶ月となるのです。

これらの数値をもとに、現状のCACが適正であるか精査を行っていきます。

freeeの事例

グラフとパソコン

事務管理のためのクラウドサービスを提供しているfreee株式会社の実際の事例をもとにCACや回収期間を見てみましょう。

CACと回収期間

オフィス ミーティング

freeeが新規上場した2020年第1四半期の公表された数値をもとに考えていきます。

  • 2019年第4四半期有料課金ユーザー数 154,026件
  • 2020年第1四半期有料課金ユーザー数 161,904件
  • 2020年第1四半期営業・マーケティング費用 856,527,000円
  • 2020年第1四半期年間ARPU 35,669円

この数値からCACを求めると以下のようになります。

2020年第1四半期有料課金新規ユーザー数 161,904件-154,026件=7,878件

CAC 856,527,000円÷7,878件=108,723円

上記数値となり、freeeの2020年第1四半期のCACは108,723円となります。

また、一定期間内で平均して顧客から得られる売上のARPUの値が上記数値です。

これを月間数値に換算すると以下の通りになります。

月間ARPU 35,669円÷12ヶ月=約2,972円

1人の顧客を獲得するのに費やしたCACを、月間で得られる売上のARPUで割ると費やしたコストの回収期間が求められます。

回収期間 108,723円÷2,972円=約36.5ヶ月

上記数値より、ユーザーが37ヶ月利用すると投資コストが回収できる計算だということが分かります。

一般的にCACの回収期間は12ヶ月程度なので、現状freeeは顧客獲得のコストを大きくかけていることになるでしょう。

LTV向上のための取り組みが必要

顧客がもたらす生涯価値であるLTVは以下の数式で求められます。

LTV=ARPU÷離脱率

freeeの場合2019年6月期で月次平均解約率が2%以下であると公表されています。

ARPUを2,972円、離脱率を2%と仮定して計算した際のLTVは以下の通りです。

LTV 2,972円÷2%=148,600円

ここで算出したLTVと前述のCACの数値を使って、LTVの値がCACの何倍であるか算出します。

LTV÷CAC=148,600円÷108,723円=約1.37

一般的にLTVの数値はCACの3倍であることが目安となっているので、freeeの場合現状はその値を下回っています。

CACの数値からも分かるように、freeeは現状顧客獲得に注力しており成長段階であると考えられるでしょう。

今後はCACを削減していくか、LTVを伸ばしていく施策を行うことが求められます。

Blended CACを低下させた事例

ポイント

次に、Blended CACを低下させた実際の事例についてご紹介します。

Dropbox社

オンラインストレージサービスを行っているDropbox社は、Web広告費用の低減を目指した施策を打ち出しています。

利用者が友人にDropboxを紹介すると、紹介者と紹介された人双方に容量の追加をサービスするキャンペーンを実施しました。

これは既存ユーザーに新規ユーザーを口コミで呼び込むことを促すOrganic CACを増やす戦略です。

既存ユーザーが容量追加の恩恵を受けるために自発的に宣伝活動を行うことを促しています。

新規で広告費をかけWeb広告を出稿するようなPaid CACを低減させられるので、相対的にBlended CACを低減させている施策です。

ウーバー・テクノロジーズ社

フードデリバリーサービスなどを展開するウーバー・テクノロジーズ社でもBlended CACを低減させる施策が行われています。

提供アプリの既存ユーザーが新規ユーザーを紹介することで、双方に無料の利用チケットを配布するキャンペーンが実施されました。

チケット金額は大きくなかったのですが、利用者が増えるとさらに提供サービスが拡充されると考えられ大きな効果をもたらしたのです。

これによりDropbox社同様にPaid CACを抑えられ、Blended CACの低下を実現しました。

このDropbox社とウーバー社はOrganic CACで新規顧客獲得を強化し、全体のBlended CACを低減することに成功した典型的な事例です。

CAC低下にはLTVの視点が欠かせない

パソコンに向かう男性

CACを低下させるためにはコストの削減を行うだけではありません。

CACの数値が適正であるかどうかの指標にはLTVの視点も欠かせないでしょう。

まず前提として、顧客がもたらす生涯価値であるLTVが顧客獲得コストのCACを上回っていなければなりません。

また、1つの目安としてはLTVはCACの3倍以上あればビジネスとして健全であるといわれています。

したがって、CACの数値が低減されているようにみえてもLTVの数値が十分でなければ事業モデルとして改善が必要でしょう。

裏を返せばCACが高くても、それ以上にLTVの数値が上昇していればビジネスとしては健全なのです。

CAC単体の数値だけで判断するのではなく、それに関わるLTVなどの数値も含めて考慮する必要があるでしょう。

 

ワンポイント
CACの削減だけに注力するのではなく、LTVの数値も見ながら適切かどうか判断する視点が必要。

CACに対する施策で悩んだら

任せる 男性

CACはマーケティングで意識すべき顧客獲得においての大事な指標です。

CACが適切な数値を保った状態で継続して顧客獲得できていれば、健全な状態でビジネスサイクルを回せているといえるでしょう。

しかし、CACだけを単体で意識すればよいわけではありません。

関連する数値である顧客生涯価値であるLTVの数値と照らし合わせて相対的に評価する視点も持っておく必要があります。

また、LTVには有料チャネルなどからの顧客の離脱率も関係するのです。

CACを適切に保つためには、いくつもの数値を考慮した上で自社にとってどれくらいの値が適切であるか考えなければなりません。

多くの数値の釣り合いを保たせることは難しく、数値の目安の算出方法などで悩むことも多いのではないでしょうか。

CACに対する施策で悩みがあれば、デジマクラスにご相談ください。

デジマクラスではプロのコンサルティングの視点と、豊富なノウハウ情報を持ち合わせているので企業に合わせたアドバイスが可能です。

企業にとって適切なCACを導きだし、それに近づける施策をサポートいたします。
 
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まとめ

男女のビジネスパーソン

新規顧客の獲得は企業にとって重要な要素です。

しかし、顧客獲得のプロモーションにコストをかけ過ぎてしまうともたらされる利益と見合わなくなってしまう場合もあります。

そのため、どれだけのコストをかけどれだけの新規顧客獲得が行えているかの指標としてCACの数値が重要です。

また、CACと併せて顧客生涯価値であるLTVなども含めて意識しておくと現状の自社の運営が健全であるか見極めるのに役立つでしょう。

CACに対する施策で悩みがあれば、プロのコンサルティングであるデジマクラスに相談することをおすすめします。

しっかりと情報を集め、適切なCACを保つことで収益率を拡大させていきましょう。