マーケティングにおいて重要なカニバリゼーション。近年、カニバリゼーションが原因で商品のシェア低下や業績低下の企業も見受けられます。

しかし、しっかりと仕組みを理解したうえで戦略的に取り組めば、さらなる企業の発展も可能です。

本記事では、カニバリゼーションの発生原因から避ける方法、そして戦略的な実施成功例を合わせてご紹介します。

カニバリゼーションの概要

カニバリゼーション、顧客

カニバリゼーションとは、自社または同グループ企業での商品やサービスが市場内での顧客を取り合っている状況のことをいいます。

販売中商品が市場で売上を上げていたとして、追加で自社の違う商品を市場に投入してしまうと、市場内顧客を自社内で取り合うこととなるのです。

この市場内での共食いの状態をカニバリゼーションといいます。

カニバリゼーションが起こる原因

カニバリゼーション、原因

カニバリゼーションが起こる原因として、下記の原因が挙げられます。

  • 新商品の機能・価格が販売中商品と同等
  • 商圏が既存店舗とかぶる出店方法
  • 既存製品のポジショニングの失敗

一つ目の原因については、商品の機能が同じであり価格も同じであるならば、すでに販売中の商品との差別化ができていません。

その結果すでにある商品の売上の一部を奪ってしまうことになります。

二つ目の原因が出店方法です。

自社が地域内でシェアを獲得し、顧客を獲得しているからといって、同地域に集中的に出店することはカニバリゼーションの原因となりえます。

同じサービスを提供するお店をただ出店するだけでは商圏や顧客がかぶってしまうからです。

その結果自社内で地域市場を争ってしまい売上を上げることができなくなります。

また、三つ目に既存製品のポジショニングの失敗も原因として挙げられます。

これは自社内の他製品との機能差が無くなってしまうことで起こるものです。

ターゲット顧客に対して販売する専用製品やサービスに便利だからと機能やサービスを足した結果、カニバリゼーションを起こしてしまうのです。

本来であれば、ターゲットに分けて専用の製品やサービスを展開していたはずが、機能差や価格差が無くなってしまいます。

最終的には各製品のポジションがあいまいになってしまい、市場を自社内で争ってしまうこととなるのです。

マーケティングの重要用語である「カニバリゼーション」

マーケテイング、カニバリゼーション

自社内の商品やサービスで市場を争ってしまうカニバリゼーションですが、マーケティングにおいて非常に重要な用語であることが分かります。

先述した原因はもちろん、仕組みが分からなければその対策も非常に難しいところです。

しかし、その仕組みさえ把握することができれば、市場を共食いすることなく、逆にシェアを拡大することにもつながるのです。

カニバリゼーションは自社にとってマイナス

カニバリゼーション、失敗

基本的にはカニバリゼーションは起こさないほうが良いといわれています。

先述の通り、自社内の商品によって市場をお互いに争っているために、商品は思い通り顧客層を広げられません。

カニバリゼーションは自社にとってマイナスなのです。

また、既存製品の売上を奪ってしまうことになるので、見込んでいた売上金額が下がることになります。

新規に販売する製品の売上ももちろん見込んでいる金額には届かない可能性が高いです。

市場シェアを増やすこともできる

カニバリゼーション、市場

一方でカニバリゼーションをうまく活用することができれば市場シェアをさらに増やすことも可能になります。

あえて戦略的に引き起こすことができれば、新商品に注目した新規顧客を新たに獲得することが可能になるのです。

既存の商品のシェアは一時的には減少するでしょう。

しかし、最終的には、新商品によって獲得した新規顧客との合計で市場のシェアを増やすことができるのです。

さらに、出店に伴っても、戦略的にカニバリゼーションを起こすことができれば、さらに売上を伸ばすこともできます。

同地域に自社を出店することは、カニバリゼーションを起こすことは避けられません。

しかし、戦略的に起こすことでその地域の市場を一挙に獲得することができるようになります。

商圏が広がり自社によって該当の地域が飽和状態になっていれば、その地域の顧客を独占することができるからです。

また、お店ごとのサービス向上をうまく競争させることができれば、顧客のさらなる来店に繋がり総合的な売上増加につながることになります。

 

マーケティング戦略の事例はこちら

 

カニバリゼーションの事例を解説

カニバリゼーション、事例

カニバリゼーションが予期せず起きてしまい、見込み通りの数字を挙げられなかった事例は過去にいくつもあります。

新規顧客獲得やさらなる売上増加を目的に、新規商品開発や出店を行うことは間違いでありません。

しかし、予期せずカニバリゼーションが起き失敗に終わればせっかくの業績が悪化することも考えられます。

今後失敗を避けられるように過去の事例を参考に解説します。

食品会社の新商品展開における例

カニバリゼーション、食品会社

 

カニバリゼーションの過去の事例でよく知られるのが、とあるビール会社の新商品展開時に生じた事例です。

そのビール会社はすでに缶ビールを販売していました。そして、新規に発泡酒を販売したのです。

発泡酒はビールに比べ価格が安く、それでいてビールと同じような雰囲気を味わうことができるものでした。

そこで、社内では普段ビールを飲まない消費者が発泡酒を購入することを見込んでいました。

ビールの消費者と発泡酒の消費者は異なると考えていたのです。

しかし、結果はビール消費者が安く買える発泡酒に手を出し始めただけでした。

ビールの雰囲気をより低価格で味わうことができるため、新規顧客よりも既存顧客に対してメリットが大きく映ったのです。

発泡酒の売上は、缶ビールの売上の一部から移動してきただけなので、当初の目的である新規顧客の獲得が発揮されませんでした。

社内では、売り上げの共食いが発生し、売上拡大が叶わなかったのです。

出版業界の電子版展開における例

カニバリゼーション、電子書籍

近年電子書籍の需要が増加していますが、そんな出版業界にもカニバリゼーションが起きています。

スマートフォンやタブレットの普及に伴って、出版業界は電子書籍を展開しましたが、売上拡大には至っていないといわれています。

それは、これまで紙媒体のものを購入していた人が、電子書籍に流れているだけだからです。

電子版が展開されたからといって新規顧客が増えたわけではなく、紙媒体の読者が電子版を購入し、紙媒体の売上が下がってしまったのです。

紙媒体と電子版が市場の共食いを行うことになり、出版業界が計画していた売上拡大にはなりませんでした。

ECサイト導入で実店舗の売上が減少した例

カニバリゼーション、ECサイト

実店舗にとって、顧客がいかにお店に来店してくれ商品を見てくれるかは売り上げに大きくかかわる問題です。

そこで活躍するのはECサイトです。

場所を問わず日本のどこからでもお店にアクセスできるので、商品を見てもらうことができ売上の拡大を見込めます。

しかし、とあるお店では実店舗の売上が減ってしまい、ECサイトとの合計の売上に悩んだ事例もあります。

そのお店では、ECサイトを運用したことで売上増を見込んでいました。

しかし、ECサイトを利用する顧客は新規顧客だけでなく、実店舗に足を運んでくれていた顧客がECサイトを利用するようになったのです。

その結果、ECサイトの売上増は行われましたが、実店舗の売上は下がってしまうという現象が発生してしまったのです。

ドミナント戦略による失敗例

カニバリゼーション、ドミナント戦略

特定地域に集中出店することで、その地域でのシェアを確保するドミナント戦略ですが、この出店にともなって失敗した例もあります。

ドミナント戦略においてはコンビニが代表的な例になりますが、同様の出店をして失敗をしてしまったのが、「いきなり!ステーキ」です。

急速な大量出店により、市場のシェアを獲得し売上向上を計画していたようです。

しかし、短期間で店舗数を増やし過ぎたために、各店舗の商圏がかぶってしまい、地域の顧客を奪い合うこととなってしまいました。

結果として、各店舗の売上増にはつながらず、閉店を余儀なくされる店舗を発生させてしまいます。

 

ワンポイント
商品展開や出店方法を間違うと、過去事例のような大きな失敗につながることもあります。

カニバリゼーションを引き起こさせないポイント

カニバリゼーション

カニバリゼーションを引き起こしてしまい、当初の計画と違い売上増にならなかった事例や、閉店を余儀なくされた失敗例を解説してきました。

しかし、今後の新製品の販売や新規出店に伴って、カニバリゼーションを起こさないためには、どんなポイントに注意しておけばいいのでしょうか。

意図しないカニバリゼーション発生を防ぐためにも、引き起こさないポイントを解説します。

ペルソナを設定する

カニバリゼーション、ペルソナ

一つ目のポイントがペルソナを詳細に設定することです。

新商品開発時などペルソナが甘いと、ターゲットとなる顧客が絞り切れておらず、多くの人がその商品のターゲットに該当してしまいます。

そのまま商品開発が進んでしまうと、既存商品を利用中の顧客とかぶってしまいます。

そして、その結果新商品と既存の商品との間で顧客の奪い合いが起こってしまうのです。

ペルソナをいかに詳細に設定しておくかで、予期しない顧客の移動を防止でき、商品ごとのターゲット顧客を獲得できます。

差別化を図ること

カニバリゼーション、差別化

商品の差別化を図ることもカニバリゼーションを引き起こさないポイントです。

仮にターゲットの顧客がかぶっても、差別化が明確にできていれば、顧客は必要に応じ各商品を購入する可能性があります。

その参考例がiPodです。

iPodはいくつか機種が展開されていますが、それぞれに用途に応じた特徴が存在します。

どの商品も目的は音楽プレイヤーとしての利用ですが、機種ごとに明確な差別化が図られています。

iPod touchについては、画面があり動画視聴やゲームを利用可能な点が強みです。

別の機種では、画面がありませんがシンプルな操作とクリップ固定による運動時の利用に適したものがあります。

この機種では、音楽をどこでも気軽に楽しむことができる点が強みとなっているです。

同じ音楽プレイヤーとしてのターゲットは確かに重なる部分もあります。

しかし、商品がしっかりと差別化されているので、使用シーンによって使い分けるために購入し利用する人も多く、売上拡大につながっています。

企業内の意思疎通を図る

カニバリゼーション、意思疎通

基本的なポイントになりますが、会社が大きくなればなるほど難しくなるポイントです。

自社内で新商品を出した際にカニバリゼーションが起きてしまう原因には、部署間の意思疎通ができてないことが非常に多いです。

意思疎通が図れていれば、あらかじめ開発段階で同様の製品が存在することが発覚します。

また、開発段階で新商品の差別化もしっかりと取れるので、自社内の意思疎通は非常に大きなポイントになります。

 

 

カニバリゼーションのデメリット

カニバリゼーション、デメリット

予期せず引き起こしてしまったカニバリゼーションは、大きなデメリットをもたらします。

その結果自社の売上だけでなく、競合他社に劣ってしまう状況を作りかねません。

その後の会社への影響の大きさを確認するためにも、デメリットを解説します。

市場の奪い合いが起こる

カニバリゼーション、市場

 

既存商品と、ほぼ遜色ない新商品を展開すると仮定しましょう。

すると、自社内の商品同士で市場の奪い合いを引き起こすこととなります。

もちろん、新商品を展開したことで売上は生まれます。

しかし、一方で既存の商品の売上が減ってしまう可能は大きいです。

総合的には、市場をお互いに奪い合っているだけなので、売上は伸び悩むこととなります。

競合他社との競争力を失う

カニバリゼーション、競争力

同じような商品を市場に展開したことで、自社内で市場の共食い状況が続けば、さらに悪化を招く可能性もあります。

それが、競合他社との競争力を失うことです。

カニバリゼーションを起こしている中、競合他社が自社製品とは異なるターゲットに向け、新商品を展開する可能性は十分あります。

そして、そのままシェアを獲得してしまった場合、本来自社の新商品が得られる可能性のあった顧客を失うことになります。

すでに新商品開発にコストをかけてしまっている自社にとって、また新たな商品を開発するのは容易ではありません。

得られる可能性のあった顧客を失い、さらにはその後の競争力まで失ってしまうのです。

 

ワンポイント
デメリットは自社内で市場の奪い合いだけでなく、競合他社との競争力まで失ってしまいます。

カニバリゼーション対策方法

カニバリゼーション、プロモーション

様々なデメリットがあり、予期せず起こるカニバリゼーションはけっして良いことではありません。

しかし、新商品を展開するにあたりどうしても避けては通れない問題でもあります。

では、どのように対策を講じればいいのでしょうか。

その対策方法が、既存の商品のポジショニングを再度検討し、ターゲットを明確にした後のプロモーションに力を入れることです。

これらによって、新商品との差別化をより一層図ることができます。

また、場合によっては新商品との統合を行い、古い商品は不要と判断可能であれば廃止にすることも必要です。

こうすることで、無駄な共食いを減速させることが可能になります。

 

ワンポイント
ターゲットを明確化し、プロモーションに注力することが差別化への第一歩です。

カニバリゼーションの成功例

カニバリゼーション、成功例

意図しないカニバリゼーションは多くの問題を抱えていますが、戦略的に攻めの姿勢で行われるカニバリゼーションもあります。

そして、この戦略がうまくいけば、よりシェアの維持や拡大に大きく貢献することができるため、過去の成功例をご紹介します。

戦略的カニバリゼーションって何

カニバリゼーション、戦略

戦略的カニバリゼーションとは、あえてカニバリゼーションを引き起こすことで自社内の競争力をさらに高めていく方法です。

本来、自社製品でシェアを獲得すれば、競合他社の参入を防止できますが、一方で市場が硬直化してしまい廃れてしまう可能性を孕んでいます。

しかし、戦略的に引き起こすことができれば、自社の競争力を高めることが可能になります。

さらに製品やサービスの向上を図ることができるので、硬直化を防ぐことができるのです。

トヨタなどの自動車メーカーの事例を紹介

カニバリゼーション、トヨタ

うまくカニバリゼーションを引き起こし成功させたのがトヨタです。

トヨタの販売店にはトヨタやトヨペット、カローラやネッツトヨタやレクサスといった種類の販売店があります。

これらを同じ地域で出店されていることを見かけますが、もちろん商圏はかぶっている状況にあります。

しかし、これは戦略的に行われたものです。

そもそも同地域の中でトヨタの販売店で飽和状態になっているので、競合他社が出店する隙が無くなります。

また、商圏内の各店舗でお互いにサービスを競い合うので、トヨタ全体でのサービス向上と売上維持に成功しているのです。

 

ワンポイント
戦略的にカニバリゼーションを引き起こせば、競合他社の参入を防ぐことにつながります。

カニバリセーション対策で悩んだら

カニバリゼーション、悩み

カニバリゼーションは新商品の展開時や店舗の出店拡大を図る際には、小さくとも起こりうる問題です。

しかし、だからこそ大小企業問わず、多くの参考例が過去には存在しています。

社内で予期しない問題が生じた場合、あるいは今後の展望でささいなことでも心配になる人は多いと思います。

今後カニバリゼーションにつながるかもしれないと心配な方は、デジマクラスに相談してみてください。

専門のコンサルタントとの相談により、今後の対策を一緒に考え企業のさらなる発展につなげることができるでしょう。

 

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まとめ

カニバリゼーション、企業

企業にとって大きな問題になりうるカニバリゼーションがなぜ起きるのか、その原因と対策などを解説しました。

しかし一方で戦略的に行えば、自社シェアをさらに維持向上させ、売上も伸ばす可能性があることも事実です。

今以上の企業に発展させるために、今回の記事を参考に積極的に実施することも考えてみてください。