「ユーザビリティ」は「使いやすさ」と理解している人が多いのではないでしょうか。
しかし、サイト制作ではユーザーがストレスなく使えることが重要です。
サービス内容が良くてもユーザビリティが悪ければ離脱を招き、コンバージョンに至ることはありません。
企業にとってユーザビリティを高め、ユーザーが定着することが最終目的です。
今回はユーザビリティの成功例、さらに評価・分析方法について解説します。
目次
ユーザビリティ概要
ユーザビリティとは、どのような利用状況であっても想定するユーザーが使い勝手の良さを感じられる指標です。
ユーザビリティの良し悪しがコンバージョン率・リピート率・離脱率などに影響を及ぼします。
ユーザビリティについて見ていきましょう。
ユーザビリティの定義
ユーザビリティの定義についてはISO(国際標準化機構)により定められた国際規格ISO9241-11があります。
定義の詳細は以下の通りです。
- 有効さ
- 効率
- 満足度
- 利用状況
有効さでは、ユーザーが指定された目標を達成するために正確さと安全性が確保されていなければなりません。
ユーザーが欲しい情報・商品を見つけるのに時間がかかったり、間違った商品を購入したりすればサイトの有効性に問題があります。
使いにくい・読み込みに時間がかかる・説明文が不十分であればユーザーにはストレス以外何も残りません。
顧客満足度を高めるためにもシステムのエラー発生率を低くすることも重要です。
たとえエラーが発生してもリカバリーがすぐにできなければ、ユーザーは利用したいと思わないでしょう。
アクセシビリティとの関係
アクセシビリティとユーザビリティの違いについてですが、アクセシビリティはインターネットへのアクセスのしやすさをいいます。
どのような環境にいても平等に誰もがアクセスできること、全てのコンテンツや機能が利用できることを指します。
特にアクセシビリティといえば高齢者や障害者の方も満足して使えることを目的にしているのです。
ユーザビリティはアクセシビリティを構成する1つの要素と捉えられています。
ユーザビリティは特定のユーザーの使いやすさがポイントです。
一方、アクセシビリティは多様なユーザーが同じように利用できることを目指します。
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ユーザビリティの成功事例
Webサイト作成やリニューアルを行っても思うように売上が伸びない際にはユーザビリティテストが有効です。
ユーザビリティテストとはユーザーの行動や会話などから問題を発見する手法になります。
具体的にユーザビリティテストを行って成功した例を見ていきましょう。
サイトデザインは変えずに売り上げがアップ
ある保険代理店のケースです。
知名度が高く、官公庁に特化した自動車保険代理店として業務を行っていました。
しかし、売上低下に悩んでいたのです。
主な原因は3つです。
- ユーザーが購入前にホームページを調べることが多くなり、ホームページの重要性が高まった
- ネット系損保が自動車保険で存在感を高めている
- 昔からのホームページしかない
ユーザビリティテストで発見できたことは以下の通りです。
- 保険に詳しくないユーザーは代理店と保険会社の区別がつかなかった
- ホームページには団体扱割引20%とあるが実際にどれくらいになるのか不明である
- 割引でサービスが悪化すると誤解するユーザーが多い
こうした懸念材料に対して改善を実施したのです。
- 自動車保険は損害保険会社が提供し、代理店が販売する仕組みであることを明確にした
- 割引事例を複数載せる
- 先入観を消すためのQ&Aを導入した
その結果、サイトデザインは変更せずコンテンツのみの変更に抑えられました。
その結果、問い合わせ件数が毎月10倍になり、売上高もアップしたのです。
会員登録画面を修正
こちらの企業はスマホアプリのデザイン変更をするにあたり、ユーザビリティ向上の課題点を見つけるユーザビリティテストを行いました。
ログイン画面は中央に水色の背色に白抜きでメールアドレスとパスワードを入れる入力欄があります。
しかし、ログインボタンが黒い背景上にあり見にくかったのです。
改善点として会員登録ボタンとログインボタン、どちらもはっきり分かるように別々の色で配置しました。
メールアドレスとパスワードの入力欄は、次の画面以降に表示されるようにしました。
その結果、ユーザビリティが向上しスマホアプリの評価で5つ星を獲得したのです。
シンプルなデザインに変更
次はサイトの改善に際し、ユーザーエクスペリエンスとオンライン売上の向上を目標にユーザビリティテストを行いました。
テストで判明した点は競合他社サイトに比べ、自社サイトでユーザーがサービスを理解するのに時間がかかっていることです。
改善案としてユーザーが自社サイトにおけるサービスを理解できるように、サイトトップをシンプルなデザインにしました。
そして簡潔にまとめたサービスの紹介文を記載したのです。
その結果、初回購入が10%アップし、トライアル購入も6%アップしました。
検索画面改善
ある不動産会社が運営するサイトの改善のためアンケート調査を実施したり、インタビューをしたりして意見を収集しました。
テストでユーザーは立地条件を重視するため、物件の問い合わせに際し、物件リストと地図を同時に見られた方が便利だと分かったのです。
改善案としてサイト画面の左側に地図を設定、右側に地図に連動した物件を表示できるように変更しました。
その結果、ユーザーの利便性が高まり問い合わせが8%アップしました。
ユーザビリティテストのメリット
ユーザビリティテストを実施するメリットについて解説します。
ユーザビリティテストで得られることは以下の通りです。
- ユーザー視点での行動・心理がわかる
- サイトやシステムの課題が見つかる
- 社内で情報共有ができる
詳しく見ていきましょう。
ユーザーの行動理由がわかる
Googleアナリティクスを使えばユーザーがどのページを訪れ、どこで離脱したか行動パターンが分かります。
しかし、なぜそのページを訪れ離脱したのかその時のユーザーの心理や行動理由までは分かりません。
そこで、ユーザビリティテストを実施すれば、数値だけでは分からない行動や心理を把握できるのです。
検索時や競合サイト上の行動がわかる
Webサイトではユーザーは自社だけでなく、他社サイトも比較しながら閲覧し情報収集します。
サイトの良し悪しも比較対象によって大きく変わります。
そのため、自社サイトだけでなく競合他社のサイトも調査しなければ、ユーザーが見る自社サイトの立ち位置が理解できないのです。
そこで、サーチエンジンで検索行動・競合サイトの行動を観察することで、ユーザー目線で評価ができるようになります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ユーザビリティ評価・分析手法
ユーザビリティを評価する方法としては、ユーザビリティテストだけでなくヒューリスティック評価などさまざまあります。
また、評価は目的に応じて2種類に分けられるのです。
- 統括的評価
- 形成的評価
統括的評価は測定を目的とした評価で、パフォーマンス測定が該当します。
形成的評価は改善を目的とした評価でユーザビリティテストやヒューリスティック評価が該当します。
それではいいユーザビリティであるかどうか評価・分析するための代表的な手法を紹介します。
ヒューリスティック評価
ヒューリスティック評価とはヒューリスティックスという評価項目に沿ってユーザビリティをチェックする手法です。
ユーザビリティの第一人者ヤコブ・ニールセン博士が提唱した「10ヒューリスティックス」に基づいて評価していきます。
「10ヒューリスティックス」とは以下のものです。
- システムの状態が視覚的に分かる
- 専門用語でなく実際の利用環境に適したシステムを作る
- ユーザーに操作の主導権と自由度を与える
- 一貫性のある表現や用語を使う
- エラーが起きないようにする
- 記憶しなくても見ればわかるようにデザインする
- 柔軟性と効率性を持たせる
- 情報は必要最小限にしてデザインの規則を守る
- エラーが発生した場合は分かりやすいエラーメッセージにすること
- 見やすく簡潔なヘルプとマニュアルを用意すること
こうした指標に基づいて評価してください。
ユーザビリティテスト
ユーザビリティテストはシステムやサービスのユーザビリティの程度や内容を調査します。
ユーザーにプロダクトを利用してもらい使いやすさや問題が明らかになり、開発の指標が把握できるのです。
ユーザーがなぜ不満に思ったのかまで踏み込んで明らかになるのが最大のメリットといえるでしょう。
ただ、ユーザー選定や準備までの時間・コストがかかることがデメリットとなります。
認知的ウォークスルー
認知的ウォークスルーとは、一般ユーザーではなくユーザビリティ専門家がターゲットユーザーとして評価対象のサイトを閲覧します。
その上で問題点を指摘する手法になります。
認知的ウォークスルーはヒューリスティック評価とユーザビリティテストの中間的な手法です。
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ユーザビリティの視点
ユーザビリティは特定の利用状況で、その視点は特定のユーザーによる指定された目標を達成する際の有効さ・効率・満足度です。
こうしたユーザビリティを考える際に重要になるのはユーザーの目線です。
ユーザーは何に関心を持ち、何を知りたいのか、どんな疑問があるのかなどユーザーの心理を分析することが大切になります。
企業はユーザー目線で考えることで課題が発見でき、サイトの現状が把握できます。
その上で改善策が洗い出され解消されていくのです。
ユーザビリティにおける使いやすさ
Webサイトを訪問して、ボタンが見えにくい・綺麗だけど文字が小さ過ぎるなど経験はないでしょうか。
見た目が綺麗、かっこいいのは本当のユーザー目線で作られたサイトとはいえないのです。
ユーザビリティを使いやすさの点から考察することは重要です。
機能的にきちんと動作するか・反応性として動作しているのがストレスなく使えるかがポイントになります。
Webサイトではクリックすると404エラーが表示されたり、ページの読み込みが長かったりするとユーザーのストレスになります。
ボタンにカーソルを合わせてもカーソルが「指」に変わらない、ECサイトで買い物した後に確認メールが来ないなどもそうです。
こうしたことが一度でもあればユーザーはそのサイトを2度と訪問しなくなるでしょう。
いつサイトを訪問しても使いやすいようにナビゲーションしたり、リマインドを促したりする機能が必要です。
どのユーザーにも使い勝手が良く快適であることが大切なのです。
- 機能性
- 反応性
- 人間工学性
- 利便性
- 万人保証性
これらが使いやすさの要素になります。
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ユーザビリティにおける優美さ・明快さ
Webサイトは目に優しくきちんと見えることが必須です。
機能が見えないところに隠れていたら使えません。
スマホで横スクロールしないと見えないサイトは可視性の問題があります。
また、説明文は専門用語など使用せずちゃんと理解できるか、ビジュアルの説明にミスリードを招くものがないかも確認します。
主なポイントは以下のものです。
- 可視性
- 理解可能性
- 論理性
- 一貫性
- 予測可能性
可視性にはちゃんと見えて伝わりだけでなく、情報ノイズやバナーブラインドネスにも注意しましょう。
理解可能性ではユーザーが何を見て、どう機能するか分かることです。
デザイナーとユーザーの基本的な理解が同じでなければいけません。
論理性では、デザイン的不協和を起こさないように見ているものと意味づけが合っているかに注意してください。
一貫性では視覚的に同一のものは同一機能を持ちます。
1つのボタンやリンクには1つの機能がシンプルで分かりやすいといえます。
見かけが同じなのにもかかわらず異なる機能を持つものがないかチェックしましょう。
予測可能性は過去の経験から機能がどれだけ予想されやすいかを示します。
例えば電子機器の充電が足りない場合を示すランプは赤で統一されているなどが該当します。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ユーザビリティ改善のポイント
ユーザビリティ改善のためのポイントとして5つ紹介します。
ユーザビリティの課題解決のヒントにしてください。
情報の可視化
Webサイトやアプリケーションでは、ユーザーはシステムの裏で起こっていることは分かりません。
そうした際に、何も表示されないままだと、ユーザーは不具合が起こっていると勘違いして離脱してしまいます。
データを読み込んでいるなら、あとどれくらいかかるのか目で分かるように情報を伝えることが欠かせません。
ユーザーへの操作ガイド
ECサイトで商品を購入注文したいのに次に何をしたらいいのか分からなくなった経験はないでしょうか。
こうした場合に、注文完了までのステップを画面上部に表示するなどすればユーザーは安心できます。
次に入力すべき内容が分かるような色分けなども1つの対策になるでしょう。
操作ガイドが表示されればユーザーはストレスを感じることなく注文完了できます。
ボタンは直感的に理解できるデザインにする
ボタンは直感的に分かるデザインにしましょう。
ボタンを迷いなく押せるためにはテキスト化するなど工夫してください。
ユーザーがサイトに問い合わせをしたい場合は、手紙の形をしたアイコンを設置すればいいでしょう。
ユーザーはクリックしてメールフォームが立ち上がる仕組みだろうと予想できます。
マイクロコピーの追加や改善
検索窓に検索したい商品名を途中まで入力すると表示される経験をしたことないでしょうか。
この機能をマイクロコピーといいます。
マイクロコピーはユーザーの次のアクションを予想し誘導する機能で、スムーズにユーザーを目的までガイドできるのです。
シンプルなデザインを心がける
サイト作成者はあれもこれも入れたいと情報盛り沢山にしがちです。
しかし、ユーザーの視点でいえばシンプルに目的地に辿り着くことが大切になります。
デザインはシンプルにし、ユーザー目線で考えることがユーザビリティに繋がるのです。
ユーザビリティを意識したサイト作りで悩んだら
ユーザーを意識したWebサイト作りが重要になっています。
利便性と使いやすさを考え、ユーザビリティ・アクセシビリティどちらもしっかり理解してWebサイトを作成しましょう。
ユーザビリティのことがよく分からないとお悩みの方はデジマクラスにご相談ください。
ユーザビリティやアクセシビリティ向上を中心にあらゆるマーケティング戦略のサポートを行います。
まとめ
ユーザビリティに求められるものや成功例、さらに分析方法について解説しました。
ユーザビリティはWebサイトやアプリケーションの出来具合がユーザーの満足度に影響を与えます。
ユーザビリティは、ユーザーの行動・心理・目的などを正確に分析してマーケティングに活かすことが重要です。
多角的な視点からユーザビリティを理解し課題を見つけ出すことが必要です。
自社サイトにユーザビリティを取り入れて売上を改善しましょう。