アップサイクルをビジネスに導入することで、新たな可能性を見出すことができます。
現代のビジネスモデルになりつつあるアップサイクルとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
今回はアップサイクルとは何かという基本的な意味から、デメリットまで詳しく解説します。
なぜアップサイクルが注目されているのか背景を知ることで、ビジネスに上手く活用できるでしょう。
アップサイクルをビジネスに導入しようとお考えの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
アップサイクルの意味
アップサイクルとは、廃棄物にデザインやアイデアなどの付加価値をつけて再利用することです。
使い終わったものではなく、使われなかったものを再利用することをいいます。
始まりは、1994年にライナー・ピルツがアップサイクルとダウンサイクルについて語ったことが初めてだといわれています。
しかし、800年代のアメリカでは既に、当然のごとくアップサイクルが行われていました。
産業革命以降、壊れることが前提で大量生産する使い捨て文化が定着しています。
しかしながら、なぜ今になってアップサイクルが注目されているのでしょうか?
これにはライフスタイルや人々の意識の変化が関係しています。
詳しく見ていきましょう。
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リサイクル・リユースとの関連性
リサイクル・リユースとアップサイクルとの違いはなんでしょうか。
リサイクルは使われなくなった素材を原料に戻したり、新しい製品を作ったりすることをいいます。
例えば使われなくなったペットボトルや牛乳パックを原料に戻し、衣服の原料やトイレットペーパーを作ります。
リユースは使われなくなったものを、そのままの状態で再利用することです。
飲み終わったジュースやビールの瓶を洗浄・消毒して再び使用することはリユースになります。
他にも、着なくなった服をリサイクルショップや古着屋で売り、他の人に買ってもらうこともリユースです。
リサイクルやリユースは、アップサイクルに対してダウンサイクルと呼ばれます。
ダウンというマイナスの言葉が使われる理由は、元の商品よりも価値や質が下がるためです。
一方アップサイクルは、使われなくなったものの形を維持しながら新たに手を加えます。
いわば、商品をアップグレードさせているということです。
アップサイクルはアイデアや工夫を加えることで付加価値をつけ、利用する価値のあるものに生まれ変わらせることが特徴といえます。
アップサイクルが注目されている背景
アップサイクルがビジネスで注目されている理由には2つの背景があります。
ゴミとして廃棄される量を削減できたり、温室効果ガスの排出を抑えられたりといった環境保全が可能な面です。
そしてもう1つは、資源を循環させて持続可能な資源循環を図れる面です。
環境への負担軽減
コストパフォーマンスばかりを気にして大量生産を繰り返せば、その分廃棄量は増えるばかりです。
使い捨てが習慣化してしまうと、原料の生成時やゴミの焼却時に発生する温室効果ガスにより地球温暖化が加速してしまいます。
また有限資源である石炭や石油などの枯渇も問題です。
リサイクルは資源を有効活用できるものの、再生する際にどうしてもCO2が生成されてしまいます。
また現在の技術ではリサイクルできる素材に限界があります。
するとその資源を処理するためには、どうしてもゴミとして廃棄するしかありません。
アップサイクルはリサイクルに比べるとCO2排出を削減でき、かつ廃棄物を出さないので環境保全が期待できるのです。
資源循環の実現
リサイクルやリユースも資源を有効活用する点では、資源を循環させているといえます。
しかしながら、リサイクルは再生にエネルギーが必要であり、リユースできる資源にも限界があります。
アップサイクルは新たな資源を使用することなく新しいものへと作り替えることができ、限りない資源の循環が可能です。
もとの資源を活かすことで、持続可能な資源循環が見込めるわけです。
環境負荷を最小限に抑えながら、資源を最大限に活かすアップサイクルは最も効率の良い資源の有効活用になります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
アップサイクルが導入されている分野
アップサイクルはさまざまな業界で導入されています。
世の中には使われなくなったものが多数存在しており、その使い道について悩みを抱えている企業も多いでしょう。
ここでは食品とファッション業界に注目してみます。
食品
食品廃棄は世界中で問題になっています。
農林水産省と環境省によると日本では年間約600万tの食品が廃棄されています。
国民1人あたりに換算すると、年間約47tになりこれは毎日お茶碗1杯分のご飯を捨てていることと同じです。
しかし食品にアップサイクルを活用することで、フードロスの削減が可能になります。
またアップサイクル食品はフードロス削減だけでなく、人々の意識にも働きかけます。
今まで廃棄されていたはずの食材を口にすることで、新しい美味しさに気がつくことができることが1つです。
もう1つは消費者が食品の購入を通じて、手軽に環境保全に貢献できるという面です。
廃棄予定だった野菜の屑などを自宅内でも活用する意識に持っていくことができれば、尚よいでしょう。
アップサイクル食品に触れることで、人々の意識を変化させ最終的にフードロス削減へとつなげます。
ファッション
ファッション業界ではアップサイクルをどのように活用しているのでしょうか。
毎年のようにトレンドが変化するファッション業界では、シーズンが終了すると大量の在庫を抱えることになります。
さらに昨今では、大量生産により安い服が出回るようになってから、服の廃棄量は増加する一方です。
しかし、このデッドストックをアップサイクルで活用できれば、服の廃棄を減らすことができます。
アップサイクルは新しく原材料を用意する必要がないため、ファッション業界でももちろん注目されています。
服をアップサイクルすることで得られるメリットは、服の廃棄量削減だけではありません。
服の原材料を製造するときには、化学物質が生成されたり温室効果ガスが発生したりします。
デッドストックを活用することは、環境保全にも繋がるわけです。
他にもアップサイクルが浸透することで、消費者が自発的にアップサイクルを活用するかもしれません。
ファッションにアップサイクルを活用することで、環境にも消費者にもアプローチができます。
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アップサイクルビジネスの事例
アップサイクルを活用している企業の具体的な事例をみていきましょう。
ここでは食品業界から2つ、ファッション業界から1つをそれぞれご紹介します。
日本丸天醤油株式会社
食品業界から1つ目の事例をご紹介します。
日本丸天醤油株式会社が販売する「YASASHIKU Gelato(やさしくジェラート)」です。
このジェラートは醤油の製造過程で生まれる甘酒と規格外のフルーツを使用して作られています。
甘酒の自然な甘みのみで、乳化剤や着色料不使用な点が大きな特徴です。
季節ごとに販売するフレーバーが異なり、完売次第終了となる人気商品となっています。
オイシックス・ラ・大地
食品業界から2つ目の事例です。
オイシックス・ラ・大地はブロッコリーの茎と大根の皮をチップスにした商品を販売しました。
ブロッコリーは、冷凍ブロッコリーのカット工場での残りの茎を食べやすくスティック状にします。
大根は漬物を製造する過程で残った皮を細長く切り、それぞれをココナッツオイルで揚げます。
そのまま食べるだけでなく、サラダやスープに入れても楽しむことができるよう工夫されました。
このアップサイクル食品がうまれる前、ブロッコリーの茎は月1.5t、大根の皮は月4t廃棄されていました。
商品販売後は月1tの食品ロスを削減することに成功し、企業はより食品ロスが削減されるよう商品開発に努めています。
ビームス
続いてファッション業界からも1つ事例をご紹介します。
日本を代表するビームスが新提案する、アップサイクルファッションです。
ビームスは同社が倉庫に抱えていたデッドストック品を、デザイナーやクリエイターと共同してよみがえらせました。
1点ものとしての付加価値がついたデッドストック品は、個性を重視する消費者に支持されています。
この試みによって環境保全というメリットだけでなく、新しい客層の獲得という意外な効果もありました。
このアップサイクルビジネスの成功により、ビームスは取引先の余った布の切れ端や不良在庫も引き取る事業も開始しました。
アップサイクルビジネスのメリット
アップサイクルをビジネスに活用することで、得られるメリットは2つです。
環境面とビジネス面でのメリットを詳しく解説します。
廃棄物を代替素材として活用できる
アップサイクルをビジネスに導入するメリットの1つ目は、廃棄物を有効に活用できる点です。
捨てるはずだった廃棄物を素材として活用できれば、新たな素材を作り出す必要がありません。
つまりその工程で生成される、無駄なエネルギーも削減でき環境保全に貢献できます。
手間を省いて効率的な企業活動が可能になります。
また廃棄物を処理する際にはそれなりの費用が必要です。
廃棄の種類や量にもよりますが、使用しなくなったものを代替素材として活用できればコストが削減できます。
アップサイクルビジネスは環境保全に貢献できるだけでなく、企業活動を円滑に行える点がメリットとして挙げられます。
別業界への参入チャンスになる
使わなくなった廃棄予定の素材に手を加えることで、新しい商品を作り出すのがアップサイクルです。
アップサイクルを活用することで生まれた商品の種類によっては、別の業界への参入が可能になります。
カルビー株式会社が規格外のじゃがいもを除菌ウエットティッシュへとアップサイクルさせた例があります。
独自の発酵技術を持つ株式会社ファーメンステーションが、このじゃがいもから発酵アルコールを精製し、商品化しました。
食品業界から日用品業界への参入へと成功しました。
アップサイクル後の商品の種類によって、別業界への進出が可能になる点がメリットの2つ目です。
アップサイクルビジネスのデメリット
アップサイクルはメリットばかりではありません。
ビジネスに導入するにあたってのデメリットもあります。
このデメリットをいかに少なくするかが、アップサイクルビジネスの成功のポイントになります。
安定的な代替素材回収システムの構築が難しい
アップサイクルは廃棄物を代替素材としています。
廃棄に回る量は販売が全て終わってからでないとわかりません。
つまり、事前にどの程度の廃棄が出るのかを予測できないということです。
安定した素材を回収できないことが、アップサイクルビジネスのデメリットといえるでしょう。
循環型デザインの構築が必要
アップサイクル商品が使い終わった後に廃棄されてしまっては、意味がありません。
アップサイクルがゴールではなく、その後の活用をも見越したデザインを構築しましょう。
別業界のノウハウが必要であるならば、共同開発をしてくれるパートナーを探す必要もあります。
廃棄物をどのように活用してサービスを展開していくのか、循環型デザインを構築を探りましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
アップサイクルビジネスの今後の展望
アップサイクルビジネスは今後どのように浸透していくのでしょうか。
食品業界やファッション業界も、続々とアップサイクルを事業として取り入れています。
アップサイクル商品がより身近に存在するようになった今、アップサイクルビジネスの展望をお伝えします。
世界的に注目度が高い
アップサイクルがなぜ重要なのかは、2015年に国連サミットで採択されたSDGsの目標が根本にあります。
SDGsとは「持続可能な開発目標」の略称であり、193カ国が達成目標として掲げています。
SDGsには17の大きな目標がありますが、その中の12番目に注目しましょう。
目標の12番目には、「持続可能な消費と生産パターンを確保する」とあります。
アップサイクルはまさに、SDGsの視点を取り入れたものといえるでしょう。
そのため、アップサイクルを活用した商品や企業は、世界中で受け入れられています。
スイスで設立されたFREITAG(フライターグ)というバッグブランドを例に挙げましょう。
この企業は使われなくなったトラックの幌布やシートベルトをアップサイクルして、1点もののバッグを制作しています。
日本へは4店舗展開しており、現在はヨーロッパとアジアの11の国と地域へと進出を果たしました。
1点ものという付加価値に刺激されて購入する人も多い一方で、環境に優しい商品として購入する人も増えています。
人々の意識の変化が、アップサイクルビジネスの成功へと導いた一例です。
今後の成長が期待できる
昨今、消費者の中で「エシカル消費」という行動が広がりつつあります。
これは、倫理上正しいと思われる商品を購入するという消費行動です。
本来であれば廃棄されるはずだった資源をアップサイクルした商品は、エシカル消費に合致します。
消費者もアップサイクルを意識し始めると、アップサイクルを導入する企業も自然と増えるでしょう。
アップサイクルビジネスの市場は、これからどんどん大きくなっていきます。
アップサイクルビジネスの導入で悩んだら
アップサイクルをビジネスに導入するメリットとデメリットを解説しました。
将来期待されているビジネススタイルとはいえ、いざ導入となると何から始めてよいかわかりません。
ビジネス開拓には疑問や不安がつきものです。
新たに導入を検討しているのであれば、弊社へご相談してみてはいかがでしょうか。
デジマクラスは、専門的な知識を持つプロの集団です。
困ったときや迷った時は、まずプロへ相談することをおすすめします。
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まとめ
アップサイクルビジネスについて解説しました。
日本のみならず世界中で注目されているこのビジネスは、今後も成長が期待されています。
企業のみならず、消費者もアップサイクルについての意識が高まっています。
アップサイクルビジネスは、環境保全をしつつ別業界へ進出できるのがメリットです。
検討をお考えの方は、一度デジマクラスへご相談ください。