バリュープロポジションとは、自社の製品の独自性を顧客に伝え競合他社との差別化をPRする手法です。
ただ自社製品を売り込むのではなく、顧客の目線でそのニーズを理解し製品やサービスの良さをPRすることが重要になります。
顧客のニーズの本質を捉えてはじめて企業は顧客との接点を見つけ出せるのです。
この記事はバリュープロポジションの事例とメリット、さらにバリューポロポジションキャンバスの作り方を紹介します。
目次
バリュープロポジションの概要
バリュープロポジションとは、顧客にとってのValue(価値)つまり、その商品を購入してもたらされる実証可能な利益を指します。
その商品がどれだけ顧客に価値を与えてくれるのかが重要になります。
企業も顧客が求めるニーズをしっかり理解し、競合他社の製品にはない唯一の価値を持つことがバリュープロポジションなのです。
自社製品を選んでもらうには差別化が欠かせませんが、単に他社と違うだけでは意味がありません。
バリュープロポジションでは顧客のニーズと自社が提供する価値の一致を目指さなければならないのです。
企業が生き残るためには今回取り上げるバリュープロポジションの作成が欠かせません。
バリュープロポジションの事例
バリュープロポジションにはどのような成功事例があるのか見ていきましょう。
長野県阿智村
長野県にある「阿智村」は名古屋から2時間の所にある温泉地で大変人気の観光地です。
しかし、その観光ブームに陰りが見え始めたのが1990年代のバブル崩壊と2008年のリーマンショックでした。
客足の減少に歯止めがかからない状況を見て、阿智村は再生をかけた取り組みを始めます。
当時、環境省が阿智村を「日本で一番星空が輝いて見える場所」に認定したのです。
これを観光の目玉にすれば再生できると考えました。
そこで、この美しい星空を多くの人に見てもらいたいと、ナイトツアー・トレッキング・野外ライブなどを立案したのです。
その結果、若いカップルや家族連れが訪れ旅館の稼働率も9割まで回復しました。
訪れる人たちにとって阿智村がまさに唯一の価値を持つ存在になったのです。
Uber
配車サービスを手掛ける「Uber」はユーザーの利便性というバリュープロポジションを提供しています。
従来のタクシーのサービスにない画期的な利便性が成功したといえるでしょう。
- スマートフォンをワンタップすれば配車してくれる
- アプリを通じて目的地は運転手には通知済み
- キャッシュレス決済
これまでは行き先を運転手に説明したり、支払いの段階には財布から小銭を探したりと面倒なことばかりでした。
Uberなら余計な会話も必要なくスムーズに目的地まで運んでくれるので利用者には使い勝手がいいのです。
このようにUberは他社にはない独自のバリュープロポジションを提供し、利用者の利便性を高めたといえるでしょう。
iPhone
iPhoneといえばApple社の大ヒット商品ですが、そのコンセプトは「スマートフォンは単なる機能の集合体ではない」ということです。
これまでいくつものシリーズを市場に投入してきたApple社ですが、いずれもスタイリッシュなデザインが多くの人を引きつけました。
現代人のライフスタイルにマッチした機能性とデザインは他を寄せ付けません。
機能が充実していればいいのではなく、細かいところまで行き届いた心配りがユーザーの期待感を煽るのです。
また、iPhoneには魅力的な揺るぎないセキュリティシステムがあります。
一般に人には分かりづらいイメージがあるセキュリティシステムを分かりやすくして提供したのもAppleが初めてです。
常に新作発表は世界中から注目され、まさにバリュープロポジションそのものといえるでしょう。
Zoom
リモートワークが増えている今日、Zoomの存在が大きく取り上げられています。
スマートフォンがあれば自宅でもどこでも気軽に電話会議ができることから利用者が急拡大しているのです。
そのバリュープロポジションはなんといってもユーザビリティです。
直感的に操作できる画面は誰でも分かりやすく、最大1,000人まで参加できる機能は他の追随を許しません。
しかも、分かりやすい料金設定が人気です。
Zoomはセキュリティ問題で一時期騒がれました。
しかし、相変わらずの人気ぶりを見ると多くのユーザーにバリュープロポジションを提供しているといえるのではないでしょうか。
バリュープロポジションで明確にすべきポイント
バリュープロポジションを作る際に明確にすべきポイントが3つあります。
これら3つの要素が1つのバリュープロポジションに全て含まれている必要はありません。
それぞれ説明していきます。
顧客の課題解決方法
バリュープロポジションを作る目的は顧客の課題解決方法を提示することです。
しかし、必ずしも顧客が専門知識を持っているとは限りません。
つまりこの商品を購入すればどのような課題がどうやって解決されるのかを明確に伝えることが重要です。
そのため言葉を選ぶ際は慎重に行なう必要があります。
専門用語は使わず、誰が聞いてもわかりやすい表現で課題解決方法を提示しましょう。
購入メリット
良いバリュープロポジションはこの商品を購入すればどのようなメリットがもたらされるか瞬時に分かるものです。
例えば、牛丼チェーンの吉野家の場合「うまい、やすい、はやい」と3つのキーワードだけでバリュープロポジションが成立しています。
このキーワードだけで吉野家に行けばどのようなメリットがあるか顧客は十分理解できるのです。
さらにいえばメリットから生じるベネフィットもあればより訴求力が増すでしょう。
競合との差異
バリュープロポジションで重要なポイントは競合他社の商品と比べ自社商品がどの点で優れているかを明確にすることです。
競合との差異は商品の魅力に繋がります。
代表的なバリュープロポジションにダイソン社の掃除機があげられます。
「ダイソン。吸引力の変わらない、ただ1つの掃除機」という言葉はテレビCMでも幾度となく視聴したフレーズです。
このフレーズを聞けば競合他社と比べてダイソンの掃除機が吸引力で優れていることが理解できるでしょう。
吸引力といえばダイソンという方程式が自然と成り立つのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
バリュープロポジションのメリット
ところでバリュープロポジションを作るとどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここではバリュープロポジションのメリットについて解説します。
顧客ニーズ発見
バリュープロポジションを作成するメリットは顧客に商品の価値を伝えるだけではありません。
作成途中で顧客が求める真のニーズを発見できる可能性があります。
それは他の顧客にも共通するかもしれないのです。
マーケティングに活用すれば新たな顧客を獲得できたり、潜在顧客の掘り起こしに役立ったりするかもしれません。
ニーズのずれがわかる
既存商品やサービスについてバリュープロポジションを作成すると、顧客が求めるニーズと「ずれ」があることに気付くことがあります。
企業側が使いやすいと思って提供した製品が顧客には使いづらいといったミスマッチはよくあるのです。
そうした「ずれ」に気付かなければせっかくの商機を失う可能性があります。
顧客のニーズを冷静に分析し、「ずれ」が生じていれば直ぐに修正しましょう。
早期に改善できれば競合他社に先駆けて売上をさらに伸ばすことができるかもしれません。
自社の強みを把握できる
バリュープロポジションを作成すれば自社の強みが見えてきます。
例えば唯一無二の商品を独占的に販売している企業なら販路を広げることでさらに売上を伸ばせるでしょう。
ここでは新商品開発に力を注ぐより、ECサイトを活用するなど検討してみてください。
自社商品の強みを活かした最適なマーケティングを展開することが大切です。
バリュープロポジションキャンバスの特徴
バリュープロポジションキャンバスとは自社商品と顧客のニーズがマッチしているか可視化して見るフレームワークです。
自社商品やサービスについて想定している「バリュープロポジション(顧客への提供価値)」と「顧客ニーズのずれ」を知るのが目的です。
新規商品はもちろん既存商品の改善時に活用して顧客のためのビジネスアイデアを考えるために使われます。
基本的には右側に「顧客セグメント」、左側に「顧客への提供価値」を配置し構成要素がどう対応しているかを検証します。
バリュープロポジションキャンバスの作り方
モノからコト消費に変わるなど消費者のニーズは複雑に多様化しています。
価値ある差別化が求められ、その重要性が高まっているのです。
ここではバリュープロポジションキャンバスの作り方について具体的に解説します。
ターゲットを設定
「顧客セグメント」・「顧客への提供価値」を配置したらまずターゲットを設定します。
提供しようとする価値は誰に向けてのものなのかを考えてください。
顧客をグループ化し、どのセグメントをターゲットにするのかがポイントになります。
ターゲットを間違わないように注意してください。
提供できる価値を洗い出す
次にターゲティングされた顧客に対して、「どんな価値を提供するするのか」・「どういったニーズを満たすのか」を書き出します。
セグメントごとに提案内容を考えていきます。
注意したい点は提案内容に「ずれ」が起きていないか確認しなければならないことです。
顧客のニーズを書き出す
顧客のニーズを正確に捉えて製品の価値が顧客の利益にどう繋がるのか検証するために書き出してみましょう。
特に注意しておくポイントはこちらです。
- 顧客が抱える課題
- 顧客の利益
- 顧客の悩み
自社サービスありきで考えるのではなく顧客のニーズを理解した上で、自社の商品で解決できるものがないか書き出します。
提供できる価値を整理する
次は顧客への提供価値を整理して書き出します。
ポイントはこちらになります。
- 製品名
- 顧客に利益をもたらすもの
- 顧客の悩みを取り除くもの
顧客が嬉しいと感じる商品やサービスを提供することを考えましょう。
顧客セグメントに記載された要素に対して、バリュープロポジションに書かれた要素で対応できない時は「ずれ」が原因の可能性があります。
こうした場合は最初から見直して改善点を見つけましょう。
顧客のニーズと価値の相関性が整理できれば、提供価値の機能や訴求ポイントの把握へ移っていきます。
バリュープロポジション作成のコツ
バリュープロポジション作成ではターゲットを考える際に客観的な情報を元に悩みや要望を設定します。
恣意的な考えが介入すると「ずれ」が起こるためです。
参考データはWebのアクセスデータ・ターゲットに行ったアンケートなどもいいでしょう。
またカスタマーセンターにコンタクト履歴があれば是非活用しましょう。
最初から良いバリュープロポジションを作成しようとは思わないことです。
修正を繰り返しながら作り上げればいいのです。
ポイントは以下の通りです。
- 顧客目線
- 顧客が得られるものを明確にする
- 自社製品の機能を洗い出す
- 製品からの利益と顧客が求めているものが一致しているか確認する
まずは顧客目線で課題に向き合い、どうすれば利益が生み出せるのか考えてみることです。
そのためにも自社製品の特徴や機能を知ることが大切になります。
競合他社が提供できないもので自社なら提供できるものがないか探しましょう。
そして製品から得られる利益が顧客の利益に一致するか検証してみてください。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
バリュープロポジションの評価項目
バリュープロポジションができたら顧客に提案して真意が伝わるか評価しましょう。
評価項目はこちらになります。
- 読んで3秒で理解できるか
- 曖昧な表現を使っていないか
専門知識を持たない人が読んでも理解できる内容になっているかが重要なため専門用語は使いません。
またイメージコピーを使わないことも忘れてはいけません。
テレビCMでよく使われるイメージコピーは3秒で理解できるとは限らないので使わないようにします。
バリュープロポジションを作成する時は曖昧な表現は使いません。
例えば効率化や高品質といった言葉が該当します。
どの部分がどれくらい(何%)良いのかイメージしやすいように具体的な数字をあげて明示してください。
自社のバリュープロポジションを知りたいときは
バリュープロポジションの重要性・作り方は理解できたでしょうか。
ターゲットが求めるニーズが分からない、ニーズに応える価値が見つけられないと相談される方がいます。
初めてバリュープロポジションを作成するとなると何から始めたらよいか戸惑うのは当然です。
デジマクラスは、クライアントがその顧客に価値を提供し利益を上げるため一貫してサポートするコンサルティング会社です。
自社の製品・サービスの価値を明確にし、効果的にそれを伝えたいという課題をお持ちであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
バリュープロポジションの事例とメリット、さらにバリューポロポジションキャンバスの作り方を紹介してきました。
バリュープロポジションは顧客にとっての商品価値と利益を表します。
バリュープロポジションを可視化するためには各ステップに沿って書き出すことが効果的です。
明らかになった課題が自社製品で解決して利益をもたらすことができるのか検証しましょう。
自社にしか提供できない価値を見出してマーケティング戦略に活かしてください。