バイヤーイネーブルメントとはアメリカで生まれた営業活動の概念を示すものです。
ミレニアル世代を中心に注目されていて、特にBtoBの営業活動に大きな影響を与えています。
フィールドセールスが一般的である営業活動では顧客のニーズを知り、最適な商品やサービスを提案します。
しかし、バイヤーイネーブルメントは全く異なる手法です。
今回はバイヤーイネーブルメントの施策の特徴について解説します。
目次
バイヤーイネーブルメントの基本概念
バイヤーイネーブルメントは2018年、米国大手調査会社Gartner社がレポートに使ったのが始まりといわれています。
彼らはバイヤーイネーブルメントを、顧客にとって購買活動を成功に導く情報提供と定義しているのです。
それまで一般的であったフィールドセールスを不快に受け止める顧客も少なくありません。
ミレニアル世代(1980年~1995年生まれの世代)がまさにそうなのです。
彼らはインターネット環境で育っていて、分からないことは自らネットで調べて解決しようとします。
そのため営業担当者が積極的に売り込むことを敬遠します。
顧客自らが情報収集し意思決定をするのがバイヤーイネーブルメントです。
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バイヤーイネーブルメントの施策の特徴
バイヤーイネーブルメントの特徴は大きく2つに分けられます。
- 営業担当者によらない顧客の購買担当者による購買活動
- 企業はあくまで必要とされる情報提供に徹する
ミレニアル世代に当たる購買担当者はWebを駆使して営業担当者に頼らない情報収集を行います。
市場調査会社Forrester社が行った調査では、自らWebを使い情報収集を好むBtoBの購買担当者は約68%に上るのです。
さらに営業担当者とのコミュニケーションを好まない担当者は62%にも及びます。
この数字からを見てもお分かりのように、購買担当者は自分で情報収集し意思決定まで行っているのです。
それでは企業はどうすればいいのでしょうか。
以前のように積極的に顧客にコンタクトするのは逆効果です。
そのため購買担当者が満足できる顧客体験ができる情報をWebで提供することが重要になってきます。
セールスイネーブルメントとバイヤーイネーブルメント
セールスイネーブルメントとは、営業活動で継続的に成果を挙げいくことを目的として営業組織の強化を総括的に行うことをいいます。
セールスイネーブルメントの主な業務は人材育成といえるでしょう。
具体的に解説します。
セールス・イネーブルメントの概念
セールス・イネーブルメントの目的は営業組織の強化・改善です。
そのため営業スキルの向上を目指した教育プログラム・研修・営業ツールの開発などがあります。
営業活動は個人レベルに偏る傾向が強いですが、セールス・イネーブルメントでは組織の底上げを図るものです。
特に施策の成果を数値化して評価し、業務改善の手法であるPDCAを回して継続的に改善を行います。
セールス・イネーブルメントは営業部門のほか、経営企画部門・IT部門・人事部門なども関わることで会社組織全体の向上を目指すのです。
こうしてセールス・イネーブルメントで磨き上げられた営業施策を公開して顧客に活用してもらいます。
セールス・イネーブルメントとバイヤーイネーブルメントは相乗効果を生む手法といえるでしょう。
ビデオによるサポート
ビデオによるサポートは顧客とのミーティングを効率よく進める優れたツールといえます。
ビデオを活用したセールス・イネーブルメントはどのようなものでしょうか。
実はセールス・イネーブルメントを強化するためにビデオによるサポートは欠かせないのです。
いくつがメリットを挙げてみましょう。
- トレーニングコストの削減
- 情報検索の時間短縮
- いつでもどこでも学習できる
- コミュニケーションの向上
例えば以前は新人研修といえば本社に集めて合同で行っていましたがコストがかかるのがデメリットでした。
そこでビデオを活用すれば仕事をしながらでも受講できるため、マンパワーを取られることもなくなります。
また、ビデオ講習なので自分の好きな時間に受講することも可能です。
ビデオなら誰もが欲しい情報をすぐに検索でき、効率的に学習ができるのです。
営業担当者は社内にいる時間が少ないため、落ち着いた環境であればどこでも学習できるようになります。
営業チームはスマホやノート型パソコンで動画を撮影し、情報共有することで営業活動の参考になりコミュニケーションも図れます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
バイヤーイネーブルメントが着目される背景
インターネットやスマートフォンの普及で社会構造が大きく変貌しました。
特にBtoBでは対面形式で商談していたスタイルが一転したのです。
バイヤーイネーブルメントは顧客だけではなく、企業の営業活動にもメリットはあります。
これまで多くのコストをかけてきた企業にとって経営資源の効率化に繋がります。
バイヤーイネーブルメントが着目される背景について考えてみましょう。
オンラインで情報収集する購買担当者
顧客の購買担当者はWebを活用し情報収集し購買プロセスを進めていきます。
購買担当者は自社に合った商品やサービスを購入する意思決定を自ら得た情報により決定するのです。
一方、営業担当者は施策を開発しWebで公開するなど顧客に情報提供していきます。
従来のような営業担当者はフィールドセールスだけでなく、営業企画を兼ねた幅広い業務を遂行することになるでしょう。
その上で、最終プロセスで意思決定できない顧客にピンポイントでアプローチようになります。
ミレニアル世代の影響
インターネットが発達しデジタル環境が整備された中で育ってきたミレニアル世代は、自ら情報を求めて必要かどうか判断します。
購入したい商品やサービスがあれば検索し口コミや評判を入手します。
似たような商品があれば比較検討して購入決定するのがミレニアル世代です。
企業でもミレニアル世代が入社し購買担当になるケースが増えています。
もともと彼らは欲しい商品を買う際に企業の説明より、SNSなどで消費者の意見を重視してきました。
会社においても営業担当者の説明より自分でWebを駆使して情報を収集するのが当然なのです。
企業側の営業担当者は顧客がよく閲覧する商品の情報を配信することが重要になっています。
積極的なアプローチではなく、パーソナルアプローチが顧客との信頼関係構築に欠かせなくなっているのです。
BtoB営業マネジメントで注目されている理由
BtoB営業において直接営業支援を必要としないバイヤーイネーブルメントが注目されています。
一般的にBtoBの方がBtoCより成約に時間を要します。
意思決定までに多くの人を介することが原因です。
そこで対策としてバイヤーイネーブルメントが有効になります。
そして求められるのは購買支援のデジタル化です。
購買担当者はいつでも支援を求めるわけではありません。
営業担当者は購買の意思決定の邪魔を避けるためデジタルで必要な情報提供を適宜行うことが大切になります。
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バイヤーイネーブルメントにおける顧客の購買支援
Gartner社は、BtoBにおいて購入プロセスに必要なものは、「人」ではなく「情報」であるといっています。
バイヤーイネーブルメントでは、営業担当者が推し進める購買支援にはどのようなものがあるのでしょうか。
営業担当者による購買支援
例えば顧客で入手できない情報を使った他社との比較や顧客の社内のステークホルダーと情報共有することもカギになります。
また、顧客の購買活動に役に立つ自社商品を使った模擬実験などもおすすめです。
BtoBではバイヤーイネーブルメントを施策することが成功のポイントになります。
デジタルによる購買支援
デジタルコンテンツを通じて営業担当者は必要な情報を提供し、購入担当者に自社の商品を購入してもらいます。
バイヤーイネーブルメントが好まれるのは客観的に顧客が他社製品との比較検討が自由にできるからです。
そのため顧客のニーズを理解し、営業担当者は自社との差異を提示して他社の商品を比較できる機能を提供します。
マネジメントで行うべきこと
マネジメントで行うべきことは、ヒト・モノ・カネの経営資源を効率的に活用し、組織の成果を最大にすることです。
また組織の成果を最大限活かすためには人材育成と活躍できる場の提供も必要です。
具体的に解説します。
顧客の購買プロセス
顧客の購買プロセスとは企業の購買担当者や一般の消費者が、商品やサービスを認知し購入するまでの心理的変化を段階で分けたものです。
特にデジタル技術革新を境に顧客の購買活動には変化が見られます。
BtoBの購買プロセスはBtoCに比べ複雑であり時間もかかります。
BtoBの購買プロセスを理解するためには、関わる担当者の心理状態を捉えることも必要です。
デジタルによる購買支援
一般に商品を購入する「購買チャネル」と商品やサービスを理解する「タッチポイント」が企業と顧客の接点です。
バイヤーイネーブルメントサービスではタッチポイントが購買支援に繋がります。
タッチポイントに求められる役割は、顧客目線で顧客の理解度・興味関心度に応じた情報を配信し意思決定を補助します。
顧客体験を実現するためにはこのタッチポイントをいかに活用するかが大切です。
例えば、顧客にデータ分析機能を提供し、それぞれの購買活動に対して顧客をコーチングします。
また、現状のパフォーマンスを評価または顧客に必要なオプションを特定して明示します。
顧客には入手困難な情報を使って他社と比較して見せるのもおすすめです。
営業担当者の営業力向上
営業担当者の営業力の向上にはセールスイネーブルメントが欠かせません。
そこでは営業活動での最適化を図り、継続的な成果を出し続けることを目指します。
その上で顧客の多様化に対応してデジタルで対応を希望する顧客にはデジタルで応じます。
そうではなく直接訪問してもらい商談したい顧客にはフィールドセールスを行うなど臨機応変の対応が欠かせません。
バイヤーイネーブルメントを希望する顧客でも、最後の決断の際には営業担当者の訪問を希望する声もあるのです。
やはり最後の一押しには営業力が必要といえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
バイヤーイネーブルメントが示す営業の形
バイヤーイネーブルメントは顧客の購買活動がスムーズにより良い形で進められるように支援する営業の形をいいます。
具体的に見ていきましょう。
営業担当者に頼らない購買担当者
購買担当者が営業担当者によるセールスに頼らなくなり、自分で情報収集をWebで行うようになりました。
Gartner社が調査した購買担当者が営業担当者に感じる意識調査でもそれは明らかです。
そのため営業担当者は軸足をフィールドセールスから顧客体験ができる情報をWeb上で提供する手法に変更することになります。
多くの企業では購買担当者が自分の力で情報を収集して購買決定をするのが主流になっています。
適切な情報提供が必要
営業担当者は顧客の購買行動に対応して営業ではなく、購買担当者が入手できない情報を提供することが重要になります。
購入担当者も情報収集の難しさは痛感しており、営業担当者はそこに商機を見い出せるでしょう。
バイヤーイネーブルメント・サービス
バイヤーイネーブルメント関連のサービスとは主に3つあります。
まずWebの機能やデザインを改善することです。
顧客が求める情報を見つけやすくするサービスになります。
具体的には顧客体験とバイヤーイネーブルメントを組み合わせます。
次は、MAツールを使い顧客企業それぞれの購買活動の進捗状況を見ながら、購買に役立つ情報を個別に提供するサービスです。
もう1つは、顧客の購買活動の効率化に繋がる機能を持つサービスです。
「顧客は知識がない」という思想が阻むもの
バイヤーイネーブルメントの根底には、顧客は勝手に自走するのだからこちらは情報を渡して役立ててもらう考え方があります。
一方で、顧客は正しく分析する知識がないから渡すのはかえってリスクがあるという意見もあります。
しかし、これではバイヤーイネーブルメントの概念は浸透しないことになるのです。
日本でもバイヤーイネーブルメントを導入するために、従来の概念を捨てて発想の転換が欠かせません。
バイヤーイネーブルメントで悩んだら
バイヤーイネーブルメントの施策の特徴について解説してきました。
マーケティングの新しい手法として注目されているバイヤーイネーブルメントはこれまでの営業スタイルと異なります。
顧客の購買担当者が求めているニーズはどの企業にも当てはまります。
企業側の一方的な情報配信ではなく顧客目線で有益なコンテンツを提供することが大切です。
しかし、従来の営業スタイルから大きく方向転換するため、どのように対応すればいいのか悩んでいる方もいるでしょう。
バイヤーイネーブルメントで悩んだらデジマクラスにご相談ください。
自社のマーケティング戦略を分析し、顧客目線でどのような情報提供が顧客にできるのか検証します。
ベストソリューションをデジマクラスは提示します。
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まとめ
バイヤーイネーブルメントは新しい営業スタイルです。
ミレニアル世代やZ世代を顧客に持つ方は、ぜひバイヤーイネーブルメントを導入して競合他社との差別化を図りましょう。
バイヤーイネーブルメントを活用し顧客目線で顧客と良好な関係を築きながら収益を伸ばしてください。