AARRRモデルとはビジネスの成長に有効なフレームワークの1つです。
自社ビジネスの現状を正確に把握し、的確な改善点を導きだすことができます。
AARRRモデルを活用して成長につなげるためには各成長段階で適切なKPIを設定することが欠かせません。
各段階の分析ポイントや適切なKPI事例を確認し、自社ビジネスに活かすヒントを得ましょう。
目次
AARRRの位置付け
ビジネスにおけるAARRRモデルはビジネスの現状や抱えている課題を明確にする役割です。
AARRRモデルとは顧客とのファーストコンタクトから継続的な利益獲得に至るまでを5段階で表しています。
<AARRRモデルの各段階>
- Acquisition:取得・獲得・習得
- Activation:取得・獲得・習得
- Retention保持・保有・維持
- Referral:紹介・推薦・照会
- Revenue:収入・収益
各段階には詳細を把握するのに適したKPIがあり、各KPIの達成度によってビジネスの全体像をあぶり出すことが可能です。
つまり、AARRRモデルは正確な現状認識のもとにビジネスをより成長させるための見取り図として位置付けることができます。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
AARRRが有効なビジネス
AARRRモデルがビジネスを成長させるために有効なフレームワークであることは間違いありません。
一方、導入を検討する企業や担当者が自社に向いているか?と疑問を持つのも当然のことです。
AARRRモデルが有効なビジネスとは何か、成功例としてよく取り上げられるビジネスを見てみましょう。
<AARRRモデルの導入が成長につながったビジネス>
- Yumi:アメリカの赤ちゃん用食事宅配サービス
- Apple Music:サブスク型音楽配信サービス
- X(旧Twitter):SNS
- Dropbox:クラウドストレージサービス
- LinkedIn:ビジネス向けSNS
- Airbnb:オンラインの民泊マッチングサービス
- Path:SNS、メッセージアプリ
- STORES.jp:オンラインストアサイト
- Facebook:SNS
- Gleam:流行のファッション情報まとめサイト
各ビジネスの特徴としてインターネットを活用している点は見逃せません。
このことから、AARRRモデルはオンラインビジネスやモバイルアプリを活用して商材を提供するビジネスに向いています。
AARRRのメリット
AARRRモデルの導入によって、ビジネスの課題点が明確になりスムーズにブラッシュアップできます。
なぜスムーズになるのか、AARRRモデルによって享受できるメリットを確認してみましょう。
ターゲットの行動を把握できる
AARRRモデルの導入によってターゲットの行動を知ることができます。
特に神の視点からビジネスを俯瞰しているかのように全体的な流れを把握できるのがAARRRモデルの特徴です。
AARRRモデルは各段階のKPIを見ることでどの段階にいるターゲットが多いのか、どの段階で留まっているのかがわかります。
顧客がビジネスを認知してから収益化に貢献してくれるようになるまで、点ではなく線で把握できるのがメリットです。
課題の所在が明確になる
AARRRモデルのメリットとして自社の商材・ビジネスの成長度合い・課題を明確化できる点も挙げられます。
各段階・各KPIの中でどれが高いのか、もしくは低いのかによってビジネスの中でどこが停滞しているのかわかるからです。
つまり、AARRRモデルに基づいて設定したKPIが課題の所在を知らせてくれる目印となり分析をスムーズにしてくれます。
リソースの最適な配分ができる
AARRRモデルに基づき分析することで課題の所在が明確になります。
つまり、集中的に分析・改善すべき点がAARRRモデルによってわかる点もメリットといえるのではないでしょうか。
【あるAARRRモデル事例】
ビジネスをより成長させるためにAARRRモデルの各段階で、3つずつKPIを設定しました。
4つ目の段階であるReferral:紹介では下記3つのKPIを設定しています。
- 今年度の紹介による新規利用者数を前年比20%アップさせる
- エキテンに投稿される口コミを3か月で50件増やす
- 今月中にSNSで100いいね!以上される投稿を5回行う
<結果>Aqcuisition・Activation・Retention段階のKPIはすべて目標到達したものの、Referral段階の2のみ目標未達
この場合、ビジネスの最終目標を達成するため唯一目標未達だった2)のKPI運用に新しいアクションが必要です。
そのためには何らかのリソースを追加投入する必要があります。
- ユーザーに口コミの投稿を促す企画の運用スタッフの増員
- 口コミを投稿するチャネルへ誘導するタッチポイントを増設
- 口コミ投稿キャンペーンにかかる予算の追加投入 など
どの段階のどの施策にどのようなリソースを要するか、明確な根拠のもと確実性の高い戦略がAARRRモデルでわかります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AARRRがKPI設定で果たす役割
AARRRモデルに基づいてKPIを設定することで、ビジネスをスモールステップで確実に成長させることが可能になります。
例えば、国語が苦手な高校生がいたとしましょう。
成績を上げるために勉強する際、教科書の1ページ目から順に始めるのは効率的とはいえません。
現代文・古文・漢文のどれが点を取れていないのか、まずは比較検討するはずです。
またその中で古文の点数が特に悪かった場合、なぜ古文で点が取れないのかさらに詳細に分析することで課題が見えてきます。
わからない言葉が多いなら語彙を増やす勉強が必要ですし、文法が身についていないのなら五段活用からやり直すべきかもしれません。
語彙を増やす必要があるのなら、1日3~5語程度覚えるだけで3か月あれば大学受験レベルの語彙力を獲得できる改善策を見いだせます。
つまり、各ジャンル・各単元を細かく分析することで課題とすぐに実践できる克服法がわかるのです。
AARRRモデルも同じことがいえます。
KPIの設定によってどの段階のどの施策が目標に到達していないかを把握し、すぐに実践できる改善策を1歩ずつ確実に実践できるのです。
各ステップにおける分析の注意点
AARRRモデルの各段階を分析する場合、段階ごとの目的・目標に注目することで見えてきます。
- 各段階の目標・目的は何か?
- 目標を達成するためにどのような施策を実施しているか?
その達成度が分析のスタートになるからです。
Aqcuisition
Aqcuisitionの段階はまず商材の利用をスタートしてもらうのが目標です。
- 商材を知ってもらえているか?
- 他社商材と比較検討してもらえているか?
- 利用開始準備を進めているか? など
商材に対してターゲットが興味を持っているか、が分析のポイントです。
KPIも商材の認知や顧客リストの獲得に関連するKPIに注目する必要があります。
Activation
Activationは初めてサービスを利用した、利用開始した顧客が今後も購入・利用を継続するかどうか見定める段階です。
- 商材利用に必要なアカウントを持っている人はどの程度いるか?
- 商材利用をアプリから行っている人はどの程度いるか?
- UX・UIが最適化されているか?
- 購入に至るまでのハードルとなるチュートリアルの突破率は? など
分析する上でも顧客が次回利用の可能性を残しているかどうか、をチェックポイントに設定してみてください。
Retention
Retentionの段階の最優先事項は継続して利用してもらうことです。
また、初回利用の壁は突破したものの継続利用に至らなかったユーザーに注目できる段階でもあります。
- 再訪問してくれているか?
- 2回以上利用している顧客はどのくらいいるか?
- 連続利用している顧客はどのくらいいるか?
- 休眠中のユーザーはどのくらいいるか? など
特に継続・連続というキーワードに注目して分析してみましょう。
Referral
Referralは顧客から顧客へ、商材利用の輪が広がっていくように働きかける段階です。
継続利用の顧客を起点に新規ユーザー・見込み顧客を増やせるか、という視点が有効と考えられます。
- 新規ユーザーの参考になるようなレビューはどのくらいあるか?
- SNSでどのくらい投稿・シェアされているか?
- 紹介キャンペーンへのリアクションは? など
また、Referral段階の施策がどの程度紹介につながっているのかにも注目してみてください。
Revenue
Revenuは収益化の段階です。
もちろん、分析のポイントも収益につながっているかどうかが中心となります。
- 価格設定は適切か?
- 商材の内容は魅力的なものになっているか?
- プラン設定は選択肢を増やすべきか?
こうした施策の達成度をチェックできるKPIに注目したいところです。
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各ステップで有効なKPI
AARRRモデルの各段階における分析ポイントは目標・目的を達成できるかどうかです。
そのため、KPIも目標・目的に応じた指標が有効となります。
Aqcuisition
Aqcuisitionの段階では下記KPIが有効と考えられます。
- Webサイトのクリック率
- 各WebページのPV数
- サイト(初回)訪問者数
- ユニークユーザー数
- 広告のインプレッション数
- Appストアページ訪問者数
- アプリなどのダウンロード・インストール回数
- Web広告クリック数・クリック率
- 会員登録者数
- 無料トライアル利用者数 など
顧客はWebサイトを初めて訪問・アカウント登録・アプリをダウンロードした段階です。
商材を利用しやすいか、利用しやすい環境が整っているかがわかるKPIが有効と考えられます。
Activation
顧客の商材に対するモチベーションを高められるかどうかの分岐点となるのがActivationの段階です。
- 顧客別の利用回数
- チュートリアル突破者数・突破率
- メルマガ登録者数
- プッシュ通知へのリアクション数
- 顧客(アカウント)登録から一定時間内にアクセスした回数・率
- カスタマーサポートの利用数
- 既存顧客向けのグレードアップ商材トライアル利用者数
- 離脱率 など
Activationは継続利用に進むかどうかの分岐点なので、次回利用の期待度がわかるKPIが有効です。
Retention
Retentionの段階は「継続」「連続」がキーワードとなります。
KPIも継続利用者・連続利用者を分析できる指標やリピーターを分析できる指標が有効です。
- 一定期間内のアクティブユーザー数
- DM開封数・開封率
- メール広告のリアクション数・リアクション率
- プッシュ広告のリアクション数・リアクション率
- 複数回利用者数・利用率
- 一定期間内の再訪問者数
- 訪問頻度
- 連続利用回数
- 休眠ユーザー数・休眠ユーザー率
- 休眠ユーザーの再利用率 など
Retentionの段階では休眠ユーザーの動向がわかるKPIも見逃さないようにしましょう。
Referral
Referralの段階は友人・知人の紹介を促す戦略やアプローチとそれを評価できるKPIが求められます。
- SNS投稿数
- SNSシェア数
- 紹介利用者数
- SNSコメント数
- 口コミ・レビュー件数
- Appストアなどの平均評価点数 など
特にSNSでどのように輪が広がっているかを把握できるKPIの設定が重要です。
Revenue
Revenueはビジネスの最終目標でもある収益化を目指す段階です。
つまり、Revenueの段階の各KPIはAARRRモデルそのものの達成度を測るものといっても過言ではありません。
- 売上金額
- 売上件数
- 売上単価
- 有料プラン利用者数
- ユーザー1人あたりの平均売上金額
- 顧客生涯価値
- プランをアップグレードした顧客数・顧客率
- アプリから商材を購入・利用した売上件数・売上金額
- 広告視聴数
- 広告クリック率
- 広告収入額 など
Revenueの段階をクリアすることでAARRRモデルによって成長させてきたビジネスに価値が生まれます。
KPI設定のコツ
KPIを設定する際は目標を明確な数字で定めましょう。
あわせて実際に運用してみた結果も人数・割合を明確な数字で記録していきます。
目標・結果を定量的に数値化することによって比較・分析がやりやすくなるためです。
数値化されていれば表・グラフなどの状態で可視化しやすく、他部署への認識共有ハードルも低くなります。
また、一定期間ごとにKPIの見直しもしてみてください。
改善策を講じリトライを繰り返している内に目標と結果のギャップを埋めていく必要があるからです。
もちろん、設定しているKPIの適切さ・必要性の有無を検証することも重要となります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
AARRRのポイントは循環
AARRRモデルが注目のフレームワークである理由は循環によって半永久的にビジネスを成長させられるからです。
循環していることを確認するために、改めて5段階を見てみましょう。
- Aqcuisition:集客
- Activation:利用開始
- Retention:継続
- Referral:紹介
- Revenue:収益
顧客は1のAqcuisition:集客からスタートし、5のRevenue:収益まで順に成長していきます。
中でも注目すべきは4のReferral:紹介です。
Referralの段階を踏まえることによってターゲットの輪が広がり1のAqcuisitionからスタートする見込み客・顧客が増えていきます。
つまり、見込み客・顧客の輪が少しずつ広がりながら1~4・5を繰り返し循環する理想的な形がAARRRモデルによって実現できるのです。
AARRRを用いたKPI設定で悩んだら
AARRRモデルの戦略策定・運用を確実に進めていくためには各段階における適切なKPIの設定が欠かせません。
しかし、AARRRモデルを運用する上で下記のようなお悩みを持つ企業や担当者も多くいます。
- 自分たちのビジネスに適切なKPIがわからない
- KPIを基に導き出した数字をどのようにビジネスに活かせばいいのか
- KPIを根拠にした施策・改善策をどのように考えればいいのかわからない など
このようなお悩みをお持ちでしたら、デジマクラスに協力させてください。
デジマクラスはデジタルマーケティング・Webマーケティングについて豊富なノウハウと実績を蓄積しています。
特にSNSの活用が欠かせないAARRRモデルの運用についてもわかりやすく的確なアドバイスが可能です。
自社ビジネスを成長させたい、自然に成長できる仕組みを作りたい場合は相談してみてください。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
まとめ
AARRRモデルは正しく運用できれば確実なビジネスの成長と継続性のある利益獲得の仕組みづくりにつながります。
そのためには5つあるAARRRモデルの各段階に適切なKPIを設定し、正確で定量的な指標に基づいた運用が必要です。
まずは自社ビジネスに適切なKPIは何か、数ある選択肢の中から正しい指標を選択しましょう。