OEM生産とは他社に依頼して自社オリジナル商品を製造してもらうことですが、OEM生産にはどのような事例があるのでしょうか。
こちらではOEM生産の事例だけでなく、マーケティングにおけるメリットやOEMの種類について詳しく解説しています。
CDM・PBとの関係性などもお話しているので、ぜひマーケティングの参考にしてください。
目次
OEMの概要
OEMは「Original Equipment Manufacturing」の略語で「他社のブランド商品を製造するメーカー」と訳されます。
直訳すると、製造した製品を自社ブランドではなく他社のブランドで販売するメーカーとなります。
言い換えると、OEMとは自社ブランドの商品を製造できるメーカーに委託して製造してもらうことともいえるのです。
OEMの特徴
OEM生産とはオリジナル商品を他社に依頼して製造してもらうことになりますが、多様化した形態では次の2つの種類に分けられます。
- 受託業者がブランド商品の企画も行う
- 受託業者は製造のみ行う
製造業者が企画したブランド商品の企画をブランド側に持ち込み、ブランド側が提案を受け入れた場合はそのまま製造を行います。
ブランド側は企画・開発などの手間が省けることで、相互にメリットのある方法となるのです。
委託するブランド側が企画などのすべてを手掛けて製造のみを委託する場合は、管理権や所有権をもつのはブランド側となります。
この場合も委託を受けた製造業者も、ブランドの製品を製造したことでネームバリューが上がる可能性は大きいのです。
このように生産をメーカーに委託する方法をOEMと呼ぶのですが、2種類の手法があることが特徴といえます。
OEMの歴史
そもそもOEMはどのようなことから始まったのでしょうか。より理解するためにまずその歴史についてお話しましょう。
OEMは1950年代に登場した造語といわれていますが、1960年代の後半あたりから頻繁に使われはじめました。
元々は、下請け製造として生まれた用語です。市場での敗北者同士の在り方から出ている造語であるといえます。
生産工程を放棄した企業が受託業者となり、生産設備の無い企業が他社の設備を借りて製品を製造したことが始まりです。
当初はあまり良い印象ではなかったのですが、徐々に発展を遂げて販売戦略にも取り入れられるようになったのです。
OEMの目的
次にOEMが取り入れられるようになった目的について解説しましょう。
OEMの最大の目的はコストを削減するということになります。
生産工場にかかる人件費や光熱費、そして仕入にかかる費用などのコスト削減が期待できるのです。
また製造のみならず企画や開発などをあらかじめ行い、ブランド側に提案する受託者も現れました。
この提案がブランド側と一致すれば、ブランド側は手間と労力をかけずにブランド名の製品を販売することができるのです。
このように相互のメリットが形になることも、OEMの目的といえるのです。
ODM・PBとの関係性
OEMと似た手法にODM・PBがあります。それぞれの特徴とOEMとの関係性について解説します。
ODMの特徴と関係性
CDMは「Original Design Manufacturing」の略で、委託者のブランドで製品を設計し生産することをいいます。
OEMでは主として製品の生産のみを受託者に依頼し設計から製造の詳細を受託者に渡すのですが、CDMは設計や開発まで受託者が行います。
形態としてはCDMは受託者が委託者と同レベル以上の高度な技術を持っていることが条件になるのです。
OEMの場合は委託者が高レベルで受託者に指導を行い生産を依頼する場合が多いので、この技術面での形態がCDMとは異なります。
OEMは委託者に主導権があるのに対して、CDMは委託者と受託者が対等であるかそれ以上の技術を持っている場合が多いのです。
委託者と受託者の技術面の関係性をいうなら、CDMはOEMの進化した形といってもよいでしょう。
PBの特徴と関係性
PBとは「プライベートブランド」で、販売店などが企画販売するブランド製品を受託業者に依頼し、受託業者は製造のみを行います。
内容的にはOEMと同じですが、さまざまな業種で行われているOEMに対し、PBは小売店など販売店が依頼する形となります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
OEM生産の事例
OEM生産について解説しましたがお分かりいただけたでしょうか。
単語だけ見ると難しく感じるかもしれませんが、実はとても身近なところで多くの企業が活用しているのがOEMなのです。
どのような企業がOEM生産を取り入れているのか、主な事例をそれぞれ確認していきましょう。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアでのOEMは最も身近な事例の1つです。どのコンビニエンスストアでもOEM商品がたくさん並んでいます。
セブンイレブンを例に取ると、お弁当や総菜を製造しているのは「わらべや日洋ホールディングス株式会社」となっています。
人気のスイーツもそれぞれ大手のお菓子メーカーが製造しているのです。
とろりんシューは「株式会社シェフォーレ」、金のしっとりバウムクーヘンはあの「株式会社ユーハイム」が製造しています。
他にもカレーのルウや調味料に至るまで、セブンイレブンブランドの商品を大手メーカーが製造するOEM生産であるとわかります。
化粧品
化粧品もまたOEM生産が多く活用されている分野です。オリジナル化粧品を小ロットで製造を行う場合もあります。
市場調査・製品企画の実績があるメーカーや、大手化粧品メーカーの中にもOEM事業を行っているメーカーがあるのです。
アパレル
アパレル業界もOEM生産を活用して多くの商品を販売しています。
大手アパレル企業はもちろんですが、ブランドを立ち上げたばかりの小さな個人経営店もOEMを活用して商品の生産を行っています。
オンワード樫山・ワールドなど大手アパレル企業は株式会社小島衣料がOEM生産を一手に引き受けているのです。
もちろん縫製技術指導では日本の職人の技術をそのまま伝え、大手企業のブランドを損なうことはありません。
個人ブランドでは、小ロット数での生産を請負うOEM生産業者もあります。アパレル業界では多くのOEM生産が活用されているのです。
自動車
自動車業界でもOEM生産は盛んに行われています。特に人気の軽自動車ではOEM生産によって同一車体が別の名前で販売されています。
主なOEMモデルとして知られているのは、スズキのワゴンRとマツダのフレア・ダイハツのムーヴとスバルのステアなどでしょう。
大手自動車メーカーのトヨタ・スバル・日産では軽自動車の製造を行っていないため、販売される軽自動車はすべてOEMモデルです。
携帯電話
携帯電話の大手メーカーであるAppleも自社で製品を製造している訳ではなく、他社メーカーへ委託しOEM生産を行っています。
Appleが委託しているのは台湾に本社を置くFoxconnです。
FoxconnはApple社のみでなく多くの大手企業から委託され生産を行っているのです。
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OEMのメリット
身近な所で活用されているOEM生産ですが、OEMを行うことのメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
委託者側と受託者側に分けて、そのメリットを解説します。
委託者側のメリット
OEMを委託するのはネームバリューのある販売会社が多いのですが、委託者側のメリットは次になります。
- コスト削減
- 企画や販売に専念できる
- ノウハウや技術を任せられる
委託することで、製造にかかる費用を削減することが可能になります。
製造工程で必要な設備や人員確保が不要になることでコスト削減が期待でき、余分な在庫を抱えることもなくなるのです。
製造工程やそれにかかる手間が省け、ブランド企画や販売に専念できるのもOEMの大きなメリットになります。
高い生産技術力を持ったメーカーに生産を委託することで、技術の研修を行わず製造を任せられるのもメリットの1つです。
受託者側のメリット
OEM委託者のメリットは多いのですが、受託者側のメリットもたくさんあります。受託者側のメリットを挙げてみましょう。
- 収益率がアップする
- リスクを低減できる
- 技術力やノウハウのアップが見込める
OEM受注により製造量も増え利益率が上がります。製造設備や人員を無駄なく活用でき、利益に結びつけられるのはメリットです。
生産のみを受託するので、問題が起きた時のリスクは最小限となります。
有名ブランドの製品を手掛けることから、技術力やノウハウを学べるのは受託者側の大きなメリットです。
OEMにデメリットはある?
OEMのメリットはたくさんありますが、同時にデメリットもあるのです。どのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
まずは委託者側のデメリットについて挙げてみましょう。
- 自社での製造力を育てることができない
- 生産による利益が見込めない
生産のすべてを委託するので、自社の製造力やノウハウを育てられないというのはデメリットといえるでしょう。
自社で生産した場合には利益となるものが、反対にコストとなり利益を上げられないのはやはりデメリットとなります。
次に受託者側のデメリットについて確認していきましょう。
- 自社のブランドが育ちにくくなる
- 受託量などは主導権のある委託者による
委託ブランドの製品を手掛けるため、OEMメーカーの自社ブランドがどうしても育ちにくくなるのです。
また受託量は委託者によって決まるので、増減してしまい生産量が一定しないのはやはりデメリットといえるでしょう。
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OEMの種類
OEMは自社ブランド商品を製造業者に委託して製造してもらう方法ですが、2種類の方法があるのです。
ブランド名は製造側にある場合と依頼者側にある場合の2種類で、どちらもOEM生産ということになります。詳しく解説しましょう。
製造側にブランド名がある場合
製造側にブランド名がある、というのは製造するOEMメーカーが依頼者側にブランド名ごと製造した商品を提案する方法です。
こういった商品を販売しませんかと依頼者側の企業ブランド名で提案し、依頼者側がその提案を受け入れれば双方にプラスになります。
製造側は生産することで利益を上げ、依頼側は新商品の企画や開発をせずに自社ブランドの商品を販売することが可能となるのです。
依頼側にブランド名がある場合
依頼側にブランド名があるとは、委託者である依頼業者が自社ブランドの企画をたて設計したものを製造依頼する形です。
双方で契約を交わし分業の形をとりますが、所有権はあくまでも依頼側にあり、すべての所有者は依頼側となります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
OEMの流れ
OEMには受託者が提案し委託企業のブランド名で製品を作る場合と、依頼を受けて製造のみ受託者が行う場合があるとお話しました。
方法は2種類ありますがどちらも次のような流れで行われます。
- 打ち合わせ
- 試作・サンプルチェック
- 工場との打ち合わせ
- 生産
- 検品
- 納品
それぞれ詳しく確認していきましょう。
打ち合わせ
委託側はどのような商品をどのように作るのかをメーカー側と打ち合わせして決定します。
メーカーが委託企業のブランド商品を提案する場合もあります。生産数や金額などさまざまな条件を話し合い決めていくのです。
試作・サンプルチェック
受託側は依頼された通りの試作品をサンプルとして委託側に提出し、委託側は思い通りに仕上がっているかチェックを行います。
問題点があれば何度でも納得できるまで調整を行うのです。
工場とのすり合わせ
サンプルチェックでOKが出たら、OEMメーカーは実際に稼働する工場と綿密なすり合わせを行います。
納期やコストなどもこの段階でしっかりと確認し作業工程もチェックし、スムーズに作業が進むように念入りに打ち合わせしていきます。
稼働・生産
すべてのチェック・点検が終ったら、いよいよ工場を稼働させて生産を開始させます。
工場稼働後も効率的に動いているか、問題点は無いかなどに気を配りながら生産管理を行っていくのです。
品質管理
でき上った製品の検品を行い、仕様指示書通りに仕上がっているか問題無く作動するかなどチェックします。
納品数量に過不足がないかも確認して、梱包まで入念にチェックを繰り返します。
納品
指定場所・指定日時を守り納品します。商品納品後のフォローも双方で必要となります。
製品についての意見や今後の予定などを話し合い、次に繋げることも大切になるでしょう。
ブランディング戦略の事例はこちら
OEMの導入で悩んでいるなら
OEMについてお話しましたが、お分かりいただけたでしょうか。
OEM生産はさまざまな業界で取り入れられており、今後ますます活用されることが多くなるでしょう。
OEMの導入で悩んでいるなら、コンサルタントの力を借りてより有利に活用するようにしてください。
デジマクラスでは、OEM事例に基づきOEMを活用する方法について適切なアドバイスを行っています。
OEM生産の件で迷ったら、ぜひデジマクラスに相談されることをおすすめします。
まとめ
OEM生産とは自社オリジナル商品を他社に委託して製造してもらうことをいいます。
委託者・受託者双方にメリットの多いOEM生産ですが、活用方法によってはより大きなコスト削減も期待できます。
デジマクラスに相談して、よりメリットのあるOEM生産方法でマーケティングを成功させましょう。