昨今では、新しいモノ・サービスの誕生が繰り返し発生しています。
そのうえ関連する情報は膨大であり、何が「大切な情報」であって何が「不要な情報」であるかを見定めなければなりません。
今回はKJ法という発想方法について取り上げながら、メリットやデメリット、活用したい発想方法について解説していきます。
ここで取り上げる事象を適切に理解すれば、新たなアイデアを創出するためのきっかけを得られるでしょう。
目次
KJ法とは
「KJ法」とは、文化人類学者である川喜田二郎(Kawakita Jiro)氏が提唱した情報やアイデアを整理するために用いられる手法です。
川喜田氏の著書において、KJ法が紹介されたことによって、課題解決や企業の経営戦略に生かせると注目を集めるようになりました。
KJ法は膨大な情報を、カードや付箋に細分化することがスタートです。
それぞれのカードや付箋をグループ化し、これらを文章にすることで、問題解決のヒントや新たなアイデアの創出を期待できます。
KJ法の活用例
はじめにKJ法の活用方法について確認していきましょう。
まずは何らかの問題や課題に対して、改善策や解決策を思案する場合において以下のケースを確認ください。
- アイデアが多量になってしまうケース
- アイデアが多種多様になってしまうケース
- アイデア同士の関係性や結びつきがわかりづらいケース
- アイデアの活用方法がわからないケース
このようなケースにおいて、KJ法を活用することは効果的です。
また問題や課題の本質を見失ってしまった場合やアイデアの重要性が分からない場合においても、KJ法は効果を発揮します。
KJ法は多くのアイデアを整理することによって、抽象化していたものをより具体的にできるということを押さえておきましょう。
KJ法の手順
ここからはKJ法を活用するための手順について解説していきます。
主な手順は、以下の通りです。
- 情報を書き出す
- グループ分けする
- グループ同士の関係を図解する
- 文章化する
正しい手順でKJ法を活用することで、効率的に新しいアイデアや切り口の発見、問題解決における最適な解決策を見出せます。
これらの手順について、以下からはより詳しく確認していきましょう。
情報を書き出す
まずは、取扱う問題や課題に関する情報やアイデアを書き出してみましょう。
カードや付箋などに情報を書き出すことで、頭の中でイメージしていたアイデアを可視化できます。
ここでの注意点としては、1つのカードに1つのアイデアを記載することです。
また書き出した情報が「客観的事実」なのかあるいは、「主観的意見」であるかなど、色分けなどをして分類しておくことをおすすめします。
グループ分けする
つづいて、書き出した情報をグループ化(グループ分け)していきましょう。
ここでのポイントはグループを「小グループ」、「中グループ」、「大グループ」といった段階的にグループ化させることです。
小グループを作成する際には、共通項をもとに作成していき、小グループにタイトルを付けていきましょう。
グループにタイトルを付けていく作業を「ラベル化」といいます。
共通項のない独立したカードが生じる場合もありますが、その際には恣意的にグループ化させる必要はありません。
小グループの分類が完了したら、今度は小グループ(タイトル)間において共通項をもとに中グループを作成し、タイトルを付けていきます。
中グループの分類が完了すれば大グループを作成し、タイトルを付けます。
最終的には、10個以下の大グループに整理できていることがポイントです。
グループ同士の関係を図解する
10個以下にグルーピングできた後は、それぞれのグループを俯瞰的に捉えるようにしましょう。
3つ目の作業は、それぞれのグループを全体的に眺めグループ同士の相関関係について思案し図解する作業です。
相関関係とは「因果関係」や「対立」、「類似」などを指します。
冒頭にカードや付箋にアイデアを書き出した利点を生かすこともできます。
グループの配置を変えることで、これまで見出せなかった切り口を見出すことが期待できるのです。
文章化する
最後に図解したグループ同士の相関関係を文章にしてみましょう。
文章化する際のポイントとしては、取扱っている問題や課題に対する重要度が高いグループから文章にしてみることです。
これによって、よりスムーズに図解したグループの文章化を進めることができます。
KJ法を実践するなかで、最後の「文章化」作業を行わないケースが発生しやすくなります。それでは本来の、KJ法の効果を期待できません。
情報同士をつなぎ合わせ、関連性を文章化することが大切であることを押さえておくようにしましょう。
・グループ分け・ラベル化
・グループ同士の関係を図解化
・文章化
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
KJ法のメリット
KJ法を活用するうえでのステップを確認したところでここからは、KJ法を活用するメリットについて解説していきます。
KJ法は多くの情報やアイデアをグルーピングしながら整理することで、抽象的なアイデアも具体的にできることは先にも述べました。
ここでは主に7つの観点から、KJ法のメリットについて確認していきます。
気軽に実施できる
まずKJ法の大きなメリットが、手軽に実施できる点です。
先ほどKJ法を実践するうえでのステップを紹介した通り、必要なものは紙(カードや付箋)と鉛筆さえあれば、特別なものは必要ありません。
また特別な能力や時間的制限、場所の制限もないため、誰もが気軽にKJ法を実践できます。
アイデアを可視化できる
KJ法は、頭の中でイメージしている抽象的なアイデアをカードや付箋などに記載することで可視化できるといった点もメリットといえるでしょう。
アイデアを可視化することによって、物事や事象を捉える視野を広げることも期待できます。
ロジカルシンキングができる
KJ法を活用することのメリットの1つとして、ロジカルシンキング(論理的思考)ができるといった点も挙げられます。
ロジカルシンキングとは、筋道の通った合理的な思考や方法のことで、この思考には抜けや漏れ・ダブリなどは存在しないことが特徴です。
物事や事象を論理的かつ客観的に捉えられるため、多くの方々に分かりやすく伝えられます。
しかしながらこのロジカルシンキングを意識して実践しようとしても、一朝一夕で習得することは難しいでしょう。
これに対してKJ法は、正しいステップを踏めば自動的に抜けや漏れ、ダブリのない論理的な分析を実践できます。
少数派の意見も活用できる
KJ法のメリットとして、少数派の意見も活用し尊重できるといった点もメリットといえるでしょう。
少数派の意見は人数が多くなったり、規模が大きくなったりすればするほど反映されにくい傾向にあります。
しかしながら少数派の意見には、問題や課題を解決するうえで潜在的なヒントが隠れていることが多々あります。
KJ法では少数派の意見を排除せず、配慮しながら進められるのも特徴の1つです。
例えば、グループなどで意見を出し合いカードや付箋にアイデアや情報を記載する際には、平等に発言機会を与えることも可能です。
これによって一方に偏った思考ではなく、多角的見解を得ながら解決策や改善策を組み立てることもできます。
課題・問題点を抽出できる
KJ法では、取扱っている課題や問題点を的確に抽出できることもメリットといえるでしょう。
加えて問題の本質を捉えたり、課題を明確にできたりすることもメリットの1つです。
思考や分析を進める過程のなかで、課題や問題点の本質を見失ってしまったり、ズレが生じてしまったりすることは多々あります。
そのようなケースにおいてもKJ法は、これまで行っていたステップの1つ前にさかのぼってみることで、課題の全体像を捉えることが可能です。
さらにはこれまで本質と捉えていた事象が誤っていた場合においても、KJ法は役に立ちます。
情報を共有できる
KJ法は、複数人で意見や情報を交換しながら活用できる点もメリットといえるでしょう。
人数が多くなればなるほど、物事や事象の全体像がぼやけてしまうケースは多々あります。
しかしKJ法では、アイデアや情報を可視化することで、言語をもとに情報を共有かつ認識しやすくなります。
課題や問題点を抽出でき、グループメンバーとも情報共有がしやすくなります。
KJ法のデメリット
KJ法の活用は、もちろんメリットだけではありません。
KJ法を活用するうえでは、これまで解説してきたメリットとデメリットと両側面を適切に理解しておくことが大切です。
ここからは、KJ法におけるデメリットについて確認していきましょう。
アイデアが参加者に左右される
1つ目のデメリットは、アイデアが参加者によって左右されてしまう点です。
例えば、ある課題や問題を解決するために編成されたグループを想定してみましょう。
グループを構成するメンバーの年齢や能力、性格などによってアイデアのクオリティーは異なります。
したがって、類似したメンバーでグループが構成されると、抽出されるアイデアや考えは偏ったものになる可能性があります。
KJ法におけるアイデアは、参加者に依存してしまうためグループメンバーの構成には、注意を払うことが大切です。
アイデア整理の手間がかかる
KJ法は、紙と鉛筆のみで行うことができる手軽な手法であることが特徴です。
しかしながら多量の情報やアイデアを集めて書き出し、一度整理(グループ化・ラベル化)する工程は、時間を要すことでしょう。
このようにアイデア整理の時間や手間がかかるといった点は、KJ法のデメリットといえます。
KJ法を活用する場合においては、ある程度の時間を確保しておくことが大切です。
与えられた時間が少ないにもかかわらずKJ法を活用してしまうと、膨大な情報を羅列しただけで、何もまとまらずに終わってしまう危険があります。
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KJ法の前にはブレインストーミングが必要
ここまでKJ法の活用手順やメリット、デメリットについて確認してきました。
ここからは、KJ法を活用する前に行うべき工程について確認していきましょう。
それが「ブレインストーミング(集団発想法)」です。
ブレインストーミングとは?
ブレインストーミング(“Brainstorming”)とは、グループ内において自由かつ闊達に発言することでアイデアの抽出を促すものです。
一定のルールをもとに、取扱う課題や問題における意見・アイデアを出し合うことで、解決に生かせます。
ブレインストーミングは、一般的に10人程度のグループで行われます。
またグループを構成する構成員は、さまざまな立場や考え方をもったメンバーで構成することが望ましいでしょう。
これは先にも述べたように、アイデアのクオリティーや内容に偏りが生じるのを未然に防ぐためです。
ブレインストーミングの進め方
まずブレインストーミングを進めるうえでは、「進行役」を決める必要があります。
進行役は話し合いの進行を取り仕切り、アイデアを抽出するための時間などを管理する役割です。
進行役の指示によってメンバーは、順番に発言を行いますがKJ法で紹介したように、それぞれの発言をカードや付箋などに記録しておく必要があります。
この記録作業は、進行役とは別のメンバーが望ましいでしょう。
発言者以外の参加者は、発言の意図や背景などについて質問を行います。
この際、批判を含んだ発言は厳禁です。
意図や背景を確認できた場合は、これらについても記録に付け加えておくことをおすすめします。
そして最後に、話し合いの中で抽出されたすべてのアイデアをグループ化していきましょう。
お気づきのようにブレインストーミングの進め方は、これまで紹介したKJ法の進め方と類似しているのです。
ブレインストーミングのルール
ブレインストーミングには、4つのルールが存在します。
- 批判をしないこと
- 自由かつ闊達に発言すること
- 質よりも量を重要視すること
- 連想し、結合させ、便乗していくこと
「批判をしないこと」については、グループ参加者の心理的安全性を担保する目的で設けられています。
立場が異なるメンバーで構成される場合には、年齢や上下関係に左右される傾向にあるからです。
「自由かつ闊達に発言すること」については、たとえ面白可笑しい内容であっても闊達にアイデアを出していきます。
面白可笑しいアイデアであっても、切り口や物事の捉え方を変えれば斬新なアイデアになる可能性も期待できるからです。
「質よりも量を重要視すること」については、クオリティーの高いアイデアを出そうとせず、まずはアイデアを出し続けることに注力します。
「連想し、結合させ、便乗していくこと」については、他のメンバーが抽出したアイデアから連想したり、自分のアイデアと結びつけたりします。
これによって、さらに新しいアイデアを生み出すこともできるでしょう。
KJ法を実施するときの注意点
KJ法の前に行うブレインストーミングを確認したところで、ここからは、KJ法を実施するときの注意点について解説していきます。
これから紹介する注意点を押さえておくことで、より効率的にKJ法がもつ効果を期待できるでしょう。
ここでは、3つの注意点について解説していきます。
参加者全員の同意を得ながら進める
まず1つ目が、参加者全員の同意を得ながら進めることです。
とりわけ、グルーピングやラベル化を行う作業では、参加者全員の同意を確認するように心がけましょう。
ここでの注意点は、「意見がぶつかることを避ける」ということではありません。
それぞれの話し合いにおいて、メンバー間で意見をぶつけたが故に新しい発見を見出すことも期待できます。
ポイントは、意見の背景や考えを参加者全員が共有と納得をしたうえで、KJ法を進めることです。
グループ化は無理のないように行う
2つ目の注意点は、グループ化を無理のないように行うようにしましょう。
グループを作成するうえで、同じ言葉や単語が入っているといった安易な理由でグループ化を行ってはなりません。
また単純な分類分けをするのではなく、グループ内の文脈や共通点を見出してラベル化を行うように心がけましょう。
とりわけグループ化やラベル化を行う場合には、機械的にならず慎重に行うことが大切です。
文章化まで行う
KJ法を実施しても、最後の文章化の作業を省いてしまうといったケースが見受けられます。
グループ化やラベル化を終え一見すると、作業が完了しているようにも見えます。
しかしながらKJ法を実施している本来の目的は、新しい考えやアイデアを得るために行っていることを忘れてはなりません。
文章化の作業は、KJ法の中でも時間を要する作業の1つですが、必ず最後までKJ法を完遂するようにしましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
KJ法と併せて活用したい発想方法
ここからは、KJ法と併せて活用したい発想方法を3つ紹介していきます。
KJ法を活用しても、新たなアイデアや発想の転換が思うように進まない場合などにおいて、これから紹介する発想方法を併せて活用してみてください。
構造シフト発想法
1つ目が「構造シフト発想法」です。
まずは、取扱う問題や課題を縦軸と横軸の2軸上に表現します。これをポジショニングマップと呼びます。
ポジショニングマップ上でアイデアを整理したうえで、配置されたアイデア要素を動かしてみる発想方法です。
これによって固定観念を排除でき、新しい発想を創出しやすくする効果が期待できます。
マインドマップ
2つ目が脳の思考を開放する「放射思考」をもとに考案された、「マインドマップ」です。
取扱う問題や課題を真ん中に記載し、これに関連するアイデアを放射線状につなげて記載をしていきます。
これによって問題や課題は必ずアイデアと紐づき、物事や事象の全体像を捉えやすくすることが期待できるでしょう。
リフレーミング
そして3つ目が、物事や事象の枠組み(フレーム)を変える「リフレーミング」といった発想方法です。
リフレーミングには「事象のリフレーミング」、「性格のリフレーミング」、「行動のリフレーミング」といった3つに大別できます。
事象のリフレーミングを活用する場合は、発生している状況に対する解釈を捉え直すことに適しています。
また性格や行動のリフレーミングを活用する際は、性質や行動にフォーカスして枠組みを変えることが可能です。
KJ法でビジネスのアイデアを生み出そう
KJ法を効果的に活用することで、新たな考えやアイデアを生み出しやすくなることをこれまで解説してきました。
このような効果が期待できるため、KJ法はビジネスの場面においても多々活用されています。
新商品の開発や企業が抱える独自の業務問題などについて取扱う場合においても、KJ法の活用は有効とされています。
マーケティングフレームワークの事例はこちら
ビジネスの問題解決にはデジタルマーケティングの活用を
KJ法は、ビジネスシーンにおいても活用できる発想方法です。
しかしながらKJ法によって抽出されるものは、あくまでも課題や問題を解決するためのアイデアやヒントといったことを忘れてはなりません。
KJ法の効果を十分に発揮してビジネスに生かすためには、問題に対する調査や現状を把握しておく必要があります。
そのための有効的なツールが「デジタルマーケティング」です。
より的確な情報を入手して、効果効率的に問題や課題に取り掛かれるようにする準備も大切です。
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また弊社がご提示する情報をもとに、より効率的に問題や課題にアプローチするお手伝いをさせて頂きます。
まとめ
KJ法は多くのヒトや大規模な組織のなかであっても、物事や事象についての全体像や関連性を広い視野から捉えられる発想方法です。
またKJ法のステップを適切に踏んでいけば、新たな切り口や斬新なアイデアを創出することも期待できます。
やがて創出したアイデアは、現在直面している、またこれから直面する問題や課題に対するヒントにもなり得ます。
より効果的にKJ法を活用して、現状よりもさらに良い考えを創出できるように、ここで取り上げたKJ法を適切に理解することから始めてみましょう。