DRMとは広告やWebサイトなどにリアクションしたユーザーのみをターゲットとするマーケティング手法です。
集客・教育・販売の3つの段階を踏まえながら見込み顧客との信頼関係を構築することで売上向上を図ります。
Webと相性が良く体系的な理論も確立しているため、様々なシーンで応用しやすいマーケティング手法といえるでしょう。
目次
DRMの特徴を解説
DRMとはダイレクトレスポンスマーケティング(Direct Response Marketing)の略語です。
長いスパンで見込み顧客を顧客に育て、安定した売り上げの確保を狙います。
定量的な数字による目標設定と体系的理論に基づいたアプローチが特徴です。
数値化して管理
DRMは目標や成果指標など、定量的に数値化して運用するのが特徴です。
そのため、キャンペーンやプロモーションなど期間限定のイベントによる成果を視覚化するのにも向いています。
特に注目したい数字が下記です。
- 顧客生涯価値(Life Time Value):1人の顧客が一生のうちに自社に使ってくれるお金の総額
- 顧客獲得コスト(Customer Acquisition Cost 通称CAC):顧客獲得にかかるコスト、顧客1人を獲得するためにどのくらいのコストがかかったのか
顧客生涯価値と広告にかかる顧客獲得コストを比較して、顧客生涯価値>顧客獲得コストとなれば効果が高い広告と判断できます。
その逆に顧客生涯価値<広告にかかる顧客獲得コストとなっている場合、広告運用に要検討の余地があるでしょう。
特にDRMを目的として展開している広告効果が低い場合、アプローチ方法のPDCAが必要です。
長いスパンで捉えた投資
DRMは長期計画で腰を据えて取り組む必要があるマーケティング手法です。
例えば、シニア向けビジネスにおいて50代以下の見込み顧客は顧客生涯価値<顧客獲得コストの可能性が高いです。
しかし、長い目で継続的なアプローチを続けることで60代以降の顧客生涯価値と顧客獲得コストは一気に逆転しやすくなります。
また、当事者だけでなく家族のUX・CXを高められれば幅広い口コミ効果も期待できるでしょう。
もちろん、他業種も同様です。種をまいてから実際に芽が出るまで10年単位かかることは珍しくありません。
リピーターによる売り上げが大半を占めている状態を最終目標として長期計画で取り組みましょう。
売り上げは要素の掛け算だという考え
売り上げが上がる要素は様々なものがあります。
その中でも特に注目したいのが下記5つの要素です。
- 一定期間中に宣伝した数
- 1回の宣伝で獲得した顧客リストの人数
- 成約率
- 購買頻度
- 注文単価
例えば注文単価アップは売上向上につながりますが、注文単価だけを50%アップさせるのは容易ではありません。
しかし、各要素を10%ずつアップさせる目標であれば実現可能性が高くなります。
取り組みやすい手法・費用対効果の高い手法から積極的にチャレンジすればマーケティング戦略上重要なデータ収集も期待できるでしょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
似た言葉のダイレクトマーケティング
DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)と間違いやすい手法がダイレクトマーケティングです。
有効な見込み顧客のリストが大切な点では共通していますが、見込み顧客が顧客に成長していく過程が異なります。
有効なリスト集め
ダイレクトマーケティングはリストが最も重要な集客ツールです。
リストに記載されている住所やメールアドレスへのアプローチは集客の原点ともいえるでしょう。
リストの有効性を高めるためには自社商材に興味を持っている見込み顧客をできるだけ多く集めることが重要です。
例えば、小学生向けの学習塾であれば下記が有効な見込み顧客に該当します。
- 成績が思うように上がらない生徒
- 中学受験を検討している生徒
- 中学校の勉強を先取りしたい生徒
- そうした生徒の保護者 など
つまり、小学生向け学習塾の見込み顧客リストにおいては上記のような人のデータが多いほど価値が高いリストといえます。
DRMとの違い
DRMとダイレクトマーケティングの違いは見込み顧客が顧客・固定客に育っていく過程にあります。
ダイレクトマーケティングは基本的に見込み顧客のリストを基にしたダイレクトメール送付、テレアポによるアプローチが基本。
マーケティング手法としてはシンプルな攻め方です。
対してDRMは見込み顧客が顧客・固定客に育っていくまでの準備期間があるのが特徴です。
企業から段階ごとに異なる目的のアプローチを行うことで、見込み顧客を顧客に成長させるための教育を行います。
例えば、小学生向けの学習塾なら見込み顧客のリストを基に入塾を目的にした広告でアプローチするのがダイレクトマーケティングです。
対してDRMは入塾を促す前に小学生が学習塾に通うべき理由や通った場合のメリットを知ってもらう段階を踏まえます。
見込み顧客の多くは初対面でいきなり商材購入・利用検討を提案されるのはハードルが高いと感じています。
そこで自社商材の意義を十分理解してもらう段階を経てから商材購入・利用を促すDRMが登場したのです。
DRMが注目されてきた背景
DRMが生まれたのは1920年代のアメリカです。
アメリカは国土面積が広いこともあり、商圏が限られる当時の小売店は苦戦を強いられていました。
そこで導入されたのがDRMです。
顧客と直接やり取りして商材を売買できるビジネスモデルなので利益を出しやすい点が多くの人に受け入れられました。
通販事業を行う小売店を中心に取り入れられ始め、現在では体系的な理論が確立しています。
日本で注目され始めたのは1990年頃からです。
日本は中小企業が多いという特徴があり、多くの企業ではマーケティングに必要なリソースが用意できないことも少なくありません。
そうした企業のマーケティング手法として取り入れられ始め、今では多くの企業が基本のマーケティング手法として認識しています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
DRMに向いている商材
DRMが向いている商材はテレビ・ラジオ・Web通販でよく登場する商材です。
例えば、TBSラジオショッピングのラインナップを見てみると下記のような商材があります。※2021年5月現在
- 家電(本体・設置工事・下取りサービス込み)
- 有名産地の高級グルメ
- 害虫駆除・予防サービス
- 化粧品
- 清掃用品
- 衛生用品
- 健康食品
- 健康運動器具 など
上記はテレビの通販コンテンツやWeb通販の人気商品とも共通していて、DRMで売上向上を図る定番商材といえるでしょう。
DRMで重要な「集客」
DRMは見込み顧客からリアクションがもらえないと集客が始まりません。
高い価値を感じられるインセンティブを提案する広告やSNSを活用したプロモーションが有効です。
DRM広告で集客
DRMは企業側からのアプローチにリアクションしてくれた見込み顧客のリスト作成が出発点です。
つまり、見込み顧客からリアクションを多くもらえるようなDRM広告を配信するのが第1歩となります。
リアクションを高める手法としてよく用いられるのがインセンティブです。
<例>
- トライアルにちょうど良い内容・価格帯の商品
- 無料サンプル
- 商材利用のガイダンス本 など
見込み顧客が価値を感じられるもの、使ってみたいと思うものを提案するのがポイントです。
SNSを活用
見込み顧客のリスト作成、見込み顧客からのファーストコンタクトを促すアプローチに最も適しているチャネルはSNSです。
広告で利用されている様々なチャネルの中で最も拡散力に優れている点が集客に適しています。
また、見込み顧客のリストを作りやすいのもメリットの1つです。
Facebook・X(旧Twitter)・Instagramともにフォロー・フォロワーのシステムがあり、どのアカウントがフォローしているか確認できます。
フォローしているということは自社に興味を持っている見込み顧客の可能性が高いユーザーです。
つまり、フォロワー一覧=見込み顧客リストとしても利用できます。
DRMで重要な「教育」
集客の次のステップである教育は見込み顧客に商材の購入・利用を具体的に検討してもらう段階です。
基本的な構成はテレビやラジオなどで良く見られる通販コンテンツとほぼ変わりません。
Web上で置き換えるならSNS・メルマガ・自社のWebサイトが有効です。
通販番組が良い例
DRMの手法を最も有効活用している業界がテレビやラジオの通販番組です。
基本的な構成は概要を把握する認知の段階を経て、詳細・競合との違い・利用シーンを時間をかけて伝えます。
最近はドラマ形式で商材が日常にある光景や、商材利用後の理想イメージを提案することも多いようです。
SNS・メルマガ・自社のWebサイト
DRMの「教育」を行うチャネルとして注目されているのがSNS・メルマガ・企業Webサイトです。
DRMは見込み顧客との関係を途切れさせず、自社の存在感を日常にしてもらうのが大事。
ただしアプローチ頻度が高すぎると見込み顧客からの好感度が下がり、逆に距離を置かれてしまう可能性もあります。
- 違う情報が伝わっているなら正す
- 他社商材との比較について正直な考えを伝える
- 信頼関係の構築を重視してデメリットも隠さない
以上のポイントに注目してみてください。
SNSや企業公式Webサイトは時間帯を問わず見込み顧客にアプローチできる方法です。
見込み顧客の教育チャンスを逃さないようにするアプローチに適しています。
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DRMで重要な「販売」
見込み顧客が十分に成長したら、いよいよ販売の段階に進みます。
ポイントは背中をそっと押すようなクロージングと安心できるアフターフォローの提案です。
クロージング
信頼関係が構築できたら購入に向けた販売の段階です。
見込み顧客が購入・利用を決心する最後の一押しとしてクロージングを行いましょう。
クロージングはいくつかのパターンがあります。
- 商材利用によって得られるメリット・利益を念押し
- 保証について念押し
- 利用の流れを説明
- 商材のレビューを紹介
- 利用が限定的になる懸念を伝えておく 商品数・期間など
- 見込み顧客が持っている選択肢を整理して伝える
- 商材の価値・意義を再度論理的に説明
- 商材を利用するべき理由を簡単にまとめる など
信頼構築ができていることが前提なので、押しつけがましいと感じるアプローチはおすすめできません。
見込み顧客の背中をそっと押す感覚でアピールしてみてください。
アフターフォロー
見込み顧客は失敗を最も嫌います。そこで重要になるのがアフターフォローです。
例えば購入後のフォローを促すため一定期間はちょっとした不具合の調整を無償で行う、などの手法が該当します。
また万が一の場合の返品・交換など保証に関する明確な説明も、より強い信頼関係の構築につながるでしょう。
アフターフォローをしっかりと行うことで顧客とのつながりが途切れないようにする効果も期待できます。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
DRMのメリット・デメリット
DRMのメリットは商材の購入・利用をポジティブに考えている見込み顧客に絞ってアプローチできる点です。
ただし、実践するためには導入ハードルの高さがデメリットとなります。
メリット
DRMの最も大きなメリットは見込み顧客から顧客に成長する確率が高いことです。
見込み顧客には商材の特徴・購入メリット・利用イメージを十分検討する時間があります。
その上で商材利用に前向きな見込み顧客は顧客に成長する確率がかなり高く、固定客・ファンになる可能性も期待できるでしょう。
デメリット
DRMのデメリットはノウハウを熟知した人材を用意しないと成功確率を上げにくいこと。
例えば、Webマーケティング×DRMはSNS・メルマガ・LP(ランディングページ)などが基本です。
LPであればキャッチコピーやページ構成、自社サイトへの動線構築などならではのノウハウがあります。
他のチャネルにも当然それぞれのマーケティングノウハウがあり、それを熟知していないと運用が難しいのがデメリットです。
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DRMを実施する中で悩んだら
DRMは商材の利用に対して前向きな見込み顧客のみをターゲットにできるメリットがあります。
また、体系的なノウハウも構築されている成熟した手法のため、比較的取り組みやすいマーケティング手法といえるでしょう。
しかし、ノウハウをしっかりと修得したプロの存在が不可欠というハードルの高さは見逃せません。
そこで、Webマーケティングコンサルタントの利用を検討してみましょう。
WebマーケティングコンサルタントはDRMをはじめ様々なマーケティング手法に精通している存在です。
DRM導入の最も高いハードルであるノウハウを持った人材としてスムーズな運用をサポートできます。
まとめ
DRMは見込み顧客のみに絞ったマーケティング手法のため、有効に活用できれば売上アップの確率を高めることができます。
ノウハウを熟知したパートナーとしてWebマーケティングコンサルタントの存在も見逃せません。