デ・マーケティングとは消費者の高い需要が供給に追いつかなくなり、商品の供給を一時的あるいは永久的に抑制することです。

長期に渡り商品が品薄状態になればブランドイメージに傷が付くことになりかねません。

企業は需給バランスを見ながら供給を抑えたり、供給をストップしたりします。

その結果、適正な需給バランスが保たれるのです。

その一方、この手法を使うことで供給を少なく見せ需要を煽る行為もあります。

デ・マーケティングの事例と方法を解説

案内

デ・マーケティングは旺盛な需要を抑えることで正常な商品の供給ができる環境を整える手法です。

企業は需要を抑えるため、価格を上げたり、生産を抑えたりして供給量をコントロールします。

本来であれば需要を喚起するためのマーケティングを考えるべきです。

しかし、需要が旺盛で商品の供給が追いつかないと企業のダメージは大きくなります。

そのため企業は供給がひっ迫する状況になると販売促進活動をセーブしたりするのです。

今回はデ・マーケティングの事例と方法について解説します。

 

ワンポイント
デ・マーケティングは中長期的な視野に立ち需要をコントロールすることで希少価値を創造する。

デ・マーケティングの概要

スーツ

企業は自らの生産能力や提供能力を考えて常に需要と供給のバランスをコントロールしなければなりません。

目先の利益を優先して供給量を越える販売体制を推し進めればいずれ市場は混乱をきたします。

そうした状況に陥ると、企業のイメージや商品の価値も失われる可能性があるのです。

マーケティングにはこのように販売促進販売抑制の2つの側面があるので注意しましょう。

マーケティング・コミュニケーションを重視するあまり、需要と供給を意識しないとこうした事態になりかねません。

それではどのようにデ・マーケティングをすればいいのでしょうか。

需要の抑制

黒板 指さしポイント

マーケティングは需要を掘り起こし、消費者のニーズに耳を傾け感動を与える商品を生産し届けるための戦略です。

マーケターはそうした商品が売れる環境づくりをするのですが、大量生産してどんどん売れる時代は終わりました。

商品を作っても売れなくなれば在庫調整も出てくるでしょう。

一方、企業は需要を高めて商品を販売し利益に繋げようとします。

しかし、供給体制や生産量が限られる中で需要を喚起させれば品薄になるでしょう。

そこで需要を抑制する方法として、価格を上げる供給量を減らすことになるのです。

つまりデ・マーケティングでは、需要を喚起しない顧客を限定する販売促進をしないなどの手法をとります。

需要バランスの最適化

笑顔の男性

デ・マーケティングは需要のバランスをいかに最適にするかが重要なのです。

デ・マーケティングは場面ごとに利用する3つの方法があります。

  • 企業が需要の水準を下げる時
  • 特定の市場セグメントからの需要を抑えたい時
  • 需要を抑制させると思わせて、実は需要を増加させたい時

企業が供給の水準を下げる時は、需要と供給が追いつかなくなる時に一時的に需要を下げる目的で行うやり方です。

総需要は維持したいけれど特定の市場の需要を抑制したい時にも利用されます。

例えば高級志向のレストランで低価格メニューを提供するとします。

次第に低価格を好む客層が増えて常連の客が来なくなることもあり得るのです。

単価も安くなると売り上げが頭打ちになり始めます。

一度失った客を取り戻すためには大胆な戦略の見直しが必要になります。

もうひとつデ・マーケティングでは供給が逼迫しておらず、表向きは需要を減らすように見せかけて、実は購入を煽る戦略もあるのです。

意図的に供給を減らせば希少価値が固まり需要が高まるのです。
 
Webマーケティングの事例はこちら  

デ・マーケティングの事例

デジタルグラフ

売らないマーケティングともいわれるデ・マーケティングの事例を紹介しましょう。

理論的背景を知ることでデ・マーケティングを応用するのに役立ちます。

たばこ

ご存知のようにたばこはアメリカなど海外ではテレビコマーシャルに厳しい規制があります。

アメリカでは反たばこの機運が強く、コマーシャルだけでなくドラマや映画にも喫煙シーンはほとんど見られません。

宣伝方法を巡って法廷闘争になるのがアメリカです。

企業だけでなく政府主導でデ・マーケティングを行うほどなのです。

喫煙は健康を害するため禁煙キャンペーンが行われますが、これはまさにデ・マーケティングといえます。

テーマパーク

テーマパークは人気のアトラクションを楽しみに多くの人が長蛇の列を作ります。

大手テーマパークでは人気があるアトラクションは1 時間待ちも珍しくありません。

利益を追求するならどんどん観客を入場させればいいのですが、長時間並ばされる客はストレスでいっぱいです。

そのまま放置していれば客足も徐々に減少して行くでしょう。

デ・マーケティングの考え方ではこういう場合は、観客がアトラクションを楽しめるため入場制限を施し適正な環境を演出します。

適正な入場者数で運営すれば顧客満足度も上がるというわけです。

高級レストラン

考える

高級レストランでは静かな落ち着いた雰囲気で料理が堪能できます。

こうした店舗では小さなお子さんの来店お断りというところもあります。

ファミリー層が来店すれば収益は伸びるのですが、お店の雰囲気は変ってしまうでしょう。

常連客は次第に遠のいて行く事態に陥るかもしれません。

高級が故に来店して食事をゆっくり楽しみたい常連にターゲットを絞る戦略はまさにデ・マーケティングといえるでしょう。

 

ワンポイント
売り過ぎることで顧客満足度が低下するのを防ぐために供給量を抑える方法である。

デ・マーケティングの方法

データ

需要を抑制するデ・マーケティングには環境維持のための入場制限や、コマーシャルの露出の制限などさまざまな方法が用いられます。

デ・マーケティングの方法についてもう少し見ていきましょう。

入場制限

遊園地や観光地ではオーバーツーリズムという言葉が囁かれています。

観光客が押し寄せマナーの悪さが問題になることもあります。

大勢の客に来てもらい儲かればいいという考え方は顧客との関係性を断つようなものといえるでしょう。

本来リピーターに来てもらいたいのであれば必要に応じて入場制限をすることが大切です。

客同士のもめごとや管理が行き届かないことで起こりうる問題も入場制限がないことから発生しがちです。

キャパシティに見合わない集客は最終的に企業のイメージダウンになる可能性があります。

高級料亭取材拒否

デ・マーケティングの一例に高級料亭取材拒否があります。

本来であればメディアに取り上げられれば来店客も増えるはずです。

しかし、その煽りで予約が取りにくいお店と評判になり常連客も減ってしまうこともあるでしょう。

お店の雰囲気もそれまでとは変わってしまうことも考えられます。

一見さんお断りの京都の老舗料亭はまさにその事例なのです。

店側が客を選ぶという姿勢は、客側からすれば特別な存在だと認識されていて誇りにもなるでしょう。

それが根強いリピーターを作るということになります。

希少性を謳う

ほかには希少性を際立たせることで需要を掘り起こす方法があります。

供給を抑えて商品の流通を少なくすることで希少価値が生まれます。

消費者の飢餓感を煽る販売戦略といってもいいでしょう。

通販のコマーシャルにもあるような、「放送後1時間限定○○個」といったものがデ・マーケティングです。

この手法は消費者の購買意欲をあえて高めることで商品のブランディング力も向上します。

 

ワンポイント
ブランディング戦略を立てるならデ・マーケティングを使い、商品価値を守り続けることで安定した需要が見込まれる。

 
Webマーケティングの事例はこちら  

デ・マーケティングのケース

男性

欲しいものが買えない欲求不満は消費者にはどのようにうつるのでしょうか。

単に供給が負いつかず品不足で購入できない場合は、時間が経てば購買意欲が薄れることもあります。

また、購入できないイライラから、もうこの企業の製品は買わないといった企業ブランドのイメージを損ねる事態も起こるかもしれません。

企業にとって需要と供給を管理できるかは顧客の購買意欲にも影響を与える重要なことなのです。

デ・マーケティングの主なケースを見ていきましょう。

一般的

一般的デ・マーケティングとは、企業が需要の全体量を抑えたい時に使う手法です。

テーマパークや遊園地、マイカー規制などが該当します。

特徴としては、企業の供給量を需要が上回る時に需要を抑えるために用いられます。

企業はこうした状況を常に意識し、兆しが見えたらすぐに動かなければなりません。

品不足で市場が混乱してからでは収拾は厳しく、企業イメージに影響すると考えられます。

選択的

選択的デ・マーケティングとは、ある特定の市場セグメントに対して需要を抑制したい場合に使う手法です。

高級レストランや旅館などがこの手法を用いるケースがあります。

マーケティングが必要ない顧客層にアプローチしないことで、既存顧客や今後優良顧客となる消費者に絞って効果的なマーケティングが可能です。

高価格帯の客層を持つことで安定した収益に結びつくでしょう。

企業はターゲティングして顧客に高感度のサービスを提供するよう心掛けることが重要です。

表面的

供給が少ないと見せて需要を喚起する方法が表面的デ・マーケティングです。

実際に品切れにして消費者の購買欲を引き出す手法としても知られるポピュラーなものになります。

表面的デ・マーケティングは倫理的な問題もはらんでいるため裏事情が消費者に知られると信用をなくすリスクもあります。

デ・マーケティングの考え方

スマホで検索する男性

デ・マーケティングは需要と供給のバランスをコントロールして必要以上に需要を喚起せず、ターゲティングした客層に重点的にアプローチするものです。

また、大量に安く売らないことでブランド力の向上に貢献し利益を増やすことができます。

短期的プラス

消費者の中には高いクオリティや満足のいく付加価値の高いサービスには金額ではない魅力を感じる人はいます。

一方で価格を下げて多くの消費者が購入しやすい価格帯にすることで収益を伸ばすこともできるでしょう。

幅広い消費者のニーズに応えることで短期的には企業収益はプラスになるのです。

中期的マイナス

しかし、これまでラグジュアリーなブランド力やサービスに魅了されてきた客層はもう付加価値を見いだせなくなるでしょう。

値上げや高価格帯の商品やサービスでは販売高は伸びないですが、ブランド力があれば中長期的に見て収益増加が期待できます。

 

ワンポイント
デ・マーケティングは需要を抑えるブレーキであり、マーケティングのカギはアクセルとブレーキをコントロールすることである。

マーケティングのブレーキ

ビジネスマン

マーケティングを考える時にはアクセルブレーキがあります。

業務拡大や新商品のプロモーションではアクセルを利かせて収益拡大を目指します。

しかし、売れ過ぎには注意が必要です。

一般的デ・マーケティングを利用して需要の熱を冷まさせることもマーケット戦略には欠かせません。

売れ過ぎは時には消費者の購買意欲を失わせる一面も持っているのです。

もう一つブレーキ役には選択的デ・マーケティングがあります。

ブランドを毀損させずに需要を持続させるためには効果的な手法です。

このようにアクセルとブレーキをうまく使い分けることで持続的に収益は伸びるでしょう。

後の需要増加につながる

悩むビジネスマン

デ・マーケティングを実施すれば過度な需要はいったんは落ち着きます。

企業とすれば売れれば売れるほど嬉しいのです。

しかし、その結果ブランド力に陰りが見え始めたり、既存顧客を失ったりする方がダメージが大きいのです。

短期的なプラスより中長期的な収益の安定こそ企業にはプラスになります。

デ・マーケティングは長く需要を持続させる方法なのです。

そのためには飽和状態のマーケットで需要と供給の動きに注意する必要が常に存在します。

デ・マーケティングに迷ったら

分析

マーケティングもデ・マーケティングもある意味両輪の役割をもっています。

需要が旺盛だから生産体制を拡大することもあるでしょう。

また、供給を抑えて需要を落ち着かせて長い需要の結びつける方法もあります。

しかし、どのタイミングで出せばいいのか判断が難しいのではないでしょうか。

増産体制を敷いて大量に商品を市場に供給したら、希少価値がなくなり逆に需要が落ちたケースもあります。

デ・マーケティングは使い方ひとつでメリットデメリットもあるのです。

そういう時こそデジマクラスやコンサルタントに相談してみましょう。

マーケティング戦略にはノウハウをよく知り、経験豊富な専門家に相談するのがおすすめです。
 
Webマーケティングの事例はこちら  

まとめ

ガッツポーズ

売れ過ぎで顧客満足度が低下する時はデ・マーケティングがいいでしょう。

中長期的にリスクがあるなら供給量を抑えて正常化するのを待ちましょう。

また、デ・マーケティングには既存顧客を満足させる目的で利用することもあります。

正しい利用方法を身につけて実施しましょう。