デジタル化が進む現代、デジタルマーケティングによる顧客獲得のためには得られたデータに対する統計分析が欠かせません。
ただそうした統計分析の重要性は認識していても、具体的な種類や手法に関してはピンとこない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事ではデジタルマーケティングにおける統計分析の種類や手法について詳しく解説します。
効率的なマーケティングを可能にする統計解析の事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
デジタルマーケティングの統計分析を解説!
現代では技術の進歩によって多くの人が気軽に膨大な数のデータを扱えるようになりました。
効率的なデジタルマーケティングを展開するためにはそれらのデータに含まれる要素や割合を詳細に分析しなければなりません。
根拠が曖昧なまま施策を試みるのではなく、統計分析の結果に基づいた、より効果的と思われる施策を行う必要があるからです。
統計分析はデジタルマーケティング担当者がデータと向き合う時の最も重要なツールの1つだといえるでしょう。
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統計学の必要性
統計学とは、ばらつきのあるデータの性質を調べたりデータの一部が持つ特徴から全体の傾向を推測したりする学問です。
マーケターがデータに基づいたマーケティング施策を立案するためには統計学が欠かせません。
どんなデータも、分類したり平均を出したりすることでそこにある意味を明らかにしなければ施策に有効活用できないからです。
統計学は日々蓄積される膨大な数のデータにどのような活用の可能性があるかをマーケターに教えてくれます。
マーケティングの統計の考え方
マーケティングにおける統計の考え方には大きく分けて3つあります。
適切なKPIの設定・因果関係の調査・データ分析です。
それぞれについて詳しく見てみましょう。
適切なKPIの設定
KPIとは目的を果たすための指標やその達成度合いを意味する言葉です。
マーケティングによって目的を達成したり課題を解決したりしようと思うなら、このKPIの適切な設定が欠かせません。
目標にふさわしいKPIをデータから導き出したい時、平均を出したり分類をしたりする統計の手法は大いに役立ちます。
データに対して施した統計学的な処理は、適切なKPI設定の根拠としてはたらくことになるでしょう。
因果関係の調査
マーケターはデータを分析して得た結果から因果関係に基づいた予測を立て、そこから新たなマーケティング施策を立案します。
この因果関係に関する調査を行う時にも統計の考え方が重要な役割を果たすことをご存知でしょうか。
具体的には因子分析や重回帰分析といった手法があります。この後の項目で詳しく紹介していますので確認してみてください。
データ分析
マーケターは日々蓄積されていく膨大な量のデータを統計学的に分析します。
得られた分析結果は新たなマーケティング施策を立案・実行するためのヒントやエビデンスとなります。
このデータ分析の手法についても別に項目を設けて説明していますのでぜひ確認してください。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
統計データ収集方法
統計データの収集・分析方法には大きく分けて2つあります。全数調査とサンプリング調査です。
どちらにもメリットとデメリットがあるため、マーケターはこれらを場合によって使い分けることになるでしょう。
以下でそれぞれ詳しく解説します。
全数調査
全数調査とはその名の通りすべてのデータに対して集計や分析を加える手法です。
対象すべてについて分析処理を行うため漏れや例外がなく、得られた結果の精度が高いという大きなメリットがあります。
デメリットとして挙げられるは実施や処理に莫大なコストと時間がかかることでしょう。
代表的な全数調査には総務省統計局が行う国勢調査や事業所統計調査、経済産業省の商業センサス、工業センサスなどがあります。
サンプリング調査
サンプリング調査は標本調査とも呼ばれ、全体のデータから一部を抜き出して調査し、その結果から全体の特徴を類推します。
全体からランダムに抽出される標本データの規模は、数%の時もあればそれ以下の時もあって一定ではありません。
メリットは調査のためのコストや時間が少なくて済むことです。全数調査に比べると圧倒的に負担が小さい調査方法だといえます。
デメリットとしては調査結果の信頼性の問題があります。一部がそうだからといって全体がそうとは限らない、ということです。
サンプルの大きさをどの程度にすれば良いかは常に重要な問題だといえるでしょう。
代表的なサンプリング調査の例として、視聴率調査や世論調査、製造工場における製品の抜き取り調査などが挙げられます。
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統計分析でできること
収集したデータに統計分析を加えることによって様々な判断材料を得ることができます。
マーケターはそこから自社にとって重要な要素を洗い出し、仮説を設定して施策を立案します。
適切な判断に基づいたマーケティング施策の実行によって、より良いPDCAサイクルを回していくことが可能となるでしょう。
以下の項目で詳しく解説します。
要素の洗い出し
統計分析でできること、1つ目は要素の洗い出しです。
たとえば新規顧客獲得という目標があるとします。取り得るマーケティング施策は数多くあることでしょう。
それらたくさんの施策の中から自社の商品・サービスに最適なものはどれかを洗い出し、優先順位を付けることができます。
顧客獲得のためには自社商品の特性をよく把握した上でターゲットを選定し、最適なアプローチをかけなければなりません。
メインターゲットが男性か女性か、高齢者か若者か、ネットに強いか弱いかなど判断すべき要素はいくつもあります。
ターゲットの選定ができたらふさわしいアプローチの仕方を洗い出します。
これもやはりネット広告・飛び込み営業・テレアポといったいくつも仮定される方法の中から適した物を選ぶことになるでしょう。
このように統計分析は複数ある要素に優先順位をつけて最適なものを洗い出すために使えるのです。
仮説の設定
統計分析でできること、2つ目は仮説の設定です。
上の顧客獲得のためのアプローチを例に取れば、メインターゲットの選定も営業方法の検討もすべて仮説の設定に他なりません。
統計分析はこうしたいくつもの仮説に優先順位を付け、取り組むべきことやそのための手法を選択する手助けをしてくれます。
時間とコストをかけて顧客獲得に乗り出すのですから、手法の選択には経験や勘よりも統計学的な裏打ちがある方が良いでしょう。
PDCAの実行
統計分析でできること、3つ目はPDCAサイクルの実行です。
どんなデジタルマーケティング戦略に取り組む時もPDCAサイクルによるスパイラルアップの意識は欠かせません。
統計分析は実行した戦略を評価するCheckの段階でその効果を発揮します。
結果に対する統計学的な分析を通じて、マーケターは次に取り得る戦略に優先順位を付けることが可能となります。
統計分析手法
統計分析に用いられる手法には以下の通り色々なものがあります。
- t検定
- 分散分析
- 多次元分析
- 主成分分析
- クラスター分析
- コレスポンデンス分析
この項目ではそれらいくつもの手法の中から因子分析・PSM分析・重回帰分析の3つを取り上げて詳しくご紹介します。
因子分析
因子分析は変数と称されるたくさんのデータを読み解き、その背後にある性質や要因を明らかにする分析手法です。
因子分析はそもそも教育心理学の分野で用いられる手法でした。
多くの科目テストの成績から各生徒の読解力や説明力、発想力といった数値化が難しい個人の能力を分析・説明したのです。
マーケティングの分野では、たとえば顧客に対するアンケートの結果などを用いて因子分析が行われます。
分析結果からは顧客の本心や潜在的欲求が読み取れます。それらがマーケターの新たな判断材料となるでしょう。
PSM分析
PSM分析のPSMとはPrice Sensitivity Meterのこと。商品・サービスの適正価格を導き出せます。
PSM分析の基本は顧客へのアンケートから最低価格・最高価格・妥当価格・理想価格の数値を導き出すことです。
これによって企業は新たな商品・サービスの市場導入価格を設定したり、既存商品の価格の見直しを検討したりできるでしょう。
商品が市場で受容される価格帯を推測できるので、マーケティング戦略の展開に最もふさわしい価格の設定も可能となります。
重回帰分析
重回帰分析は1つの結果を複数の要因で説明し、どの要因がどれくらい結果を左右しているかを数値で表わすというものです。
導き出された結果は将来の予測をするために使われることになります。
たとえばある本屋の1日の売上げという結果の背景には本の品揃え・立地・従業員数・売り場面積など複数の要因があります。
それら要因と結果の関係を定式化することで売上げ予測やプロモーション戦略が立てやすくなるでしょう。
様々な形で応用の利く重回帰分析はマーケティングの様々な場面で広く用いられています。
統計解析とは
統計分析と似た言葉に統計解析がありますが、両者には明確な違いがあるので混同すべきではありません。
統計解析とは、蓄積した大量のデータを詳しく分析してそこに含まれる傾向やパターンを見出すことです。
統計分析がデータに含まれる様々な要素や割合を調べるだけなのに対して、統計解析ではなぜそのデータが得られたかを探ります。
マーケティング施策に活かすために、得られたデータが持つ意味を正しく理解する。それが統計解析の目的だといえるでしょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
効率的なマーケティングのために
効率的なマーケティングのために統計解析が果たす役割は非常に大きいといえます。
統計解析は判断材料や根拠という形で施策のチョイスに重みを与えてくれるからです。
この項目ではそんな統計解析の実例を2件ご紹介しましょう。
SNS分析
SNS分析はSNS利用者の声を収集・分析することで、ソーシャルリスニングとも呼ばれます。
SNS分析にはユーザーの生の意見をリアルタイムで収集できるという利点があります。
膨大な数の情報収集を極めて低コストで実施できることも見逃せないポイントだといえるでしょう。
キャンペーンなどを行ったタイミングでSNS分析を実施すると顧客の正直な意見や感想を集めることができます。
それらを反映させて施策を改善したり、新たな展開のヒントにしたりすることも可能となります。
ただし、SNS分析のために収集する顧客の声はあまりにも自由度が高くて規則性がありません。
場合によっては分析のために必要なデータが十分な数だけ収集できない可能性もあります。
そのような場合は自社アカウントを用いてSNS上でアンケート調査を行うと良いでしょう。
人流データ分析
人流データとはある場所や地域に人が何人いるか、またはいたかを把握できるデータのことです。
まちづくり・防災・観光など様々な分野で活用が期待できるデータとして広く知られています。
マーケティングの分野においても人流データを分析することが施策の立案に有効なことはいうまでもありません。
たとえばある施設における人の流れを把握して各店舗での購入履歴と紐付ければ、より精度の高い施策に繋げることも可能です。
行動データからより良い導線を見出すことも、ターゲット層が持つ性質や傾向を見出すこともできるでしょう。
人の行動を様々な視点から見える化することはマーケティング戦略立案のための大きなヒントになりえます。
データ解析・活用の事例はこちら
デジタルマーケティングの統計分析に困ったら
デジタルマーケティングにおける統計分析の重要性についてはよく理解できた。具体的な手法や事例もよく分かった。
しかし実際、自社商品・サービスに関して得られたデータをどのように統計分析し、マーケティングに活かすべきか分からない。
そんな悩みをお持ちのかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
デジタルマーケティングの統計分析に関するお困りごとはデジマクラスのコンサルタントにご相談ください。
マーケティングに深く精通したスタッフが親身になってお話をうかがい、適切なアドバイスをさせていただきます。
まとめ
いかがだったでしょうか。本稿ではデジタルマーケティングにおける統計分析の重要性や具体的な手法について解説しました。
デジタル化の進展によって誰もが膨大なデータを扱えるようになった現代、それらのデータをどう活用するかは大きな課題です。
マーケターがデータを活用してマーケティング施策を立案する際、統計分析は様々なヒントやエビデンスを与えてくれます。
今回の記事を参考にして、ぜひ自社のデジタルマーケティングの施策立案に統計分析の手法を適用してみてください。