マーケティングを実践する上でポジショニングは非常に大切な要素・手法です。
しかし、ポジショニングの真の意味を理解した上で実践しているマーケターは、意外と多くありません。
マーケターが競合他社に差を付けるには、常に様々な手法をマスターする必要があり、ポジショニングも然りだといえるでしょう。
この記事ではマーケターが知っておくべき、ポジショニングをマーケティングで実施する方法やその成功事例などを紹介します。
目次
ポジショニングの概要
マーケティングの分野では頻繁に使われる「ポジショニング」について、その概要を即座に答えられるでしょうか。
ポジショニングをマーケティングで実施するには、まずはその概要を正確に理解することが不可欠です。
ここではポジショニングの概要について、その歴史背景やSTP戦略との関連とともに解説します。
ポジショニングってどういうこと?
一般的に「位置取り」の意味で使われる「ポジショニング」は、マーケティングの分野ではどういった意味で使われるのでしょうか。
マーケティングでは、自社商品・サービスにおいて競合他社との差別化を図ることで、独自の立ち位置・価値を確立することです。
つまり自社商品・サービスをブランドイメージ化して、顧客への浸透・定着を図ることがポジショニングだといえるでしょう。
ポジショニングの歴史背景
ポジショニングの歴史背景には、1970〜1980年代の顧客志向が大きく関係しているといえるでしょう。
1970年代になると市場にはモノが溢れかえりはじめ、マーケティングにあり方も「製品志向」から「顧客志向」へと移り変わります。
顧客は類似する商品の中からニーズに合ったものを選ぶようになったことから、いかにニーズを掴むかがマーケティングの主題となりました。
つまり売れる商品・サービスを生み出すには「価格」だけではなく、「品質」「独自性」が求められるようになったといえるでしょう。
この頃から、顧客志向を実現するマーケティングの手法として「ポジショニング」が実践されるようになりました。
STP戦略との関連
ポジショニングは単独で実践される手法ではなく、STP戦略の一環として実施されるのが一般的です。
STP戦略とは以下のキーワードの頭文字を取ったものとなります。
- Segmentation(セグメンテーション):顧客のニーズによる市場の細分化(グループ化)
- Targeting(ターゲティング):狙うべき顧客(グループ)の決定
- Positioning(ポジショニング):競合との差別化・自社の独自性・価値を明確化
ポジショニングとは、顧客のニーズから絞り込んだターゲットに対して、自社商品・サービスの独自性・価値を認識させる戦略です。
ポジショニングはどう決める?
ポジショニングを決めたくとも、何をもってブランドイメージを確立すればよいのか迷ってしまうマーケターも少なくありません。
ポジショニングを決める上で大切なことは、顧客が商品・サービスの購入を決めるときに何を判断材料としているかです。
顧客の判断材料が明確になれば、その中で自社商品・サービスの独自性・価値を明らかにすることが可能となります。
そこで活用されているのが、顧客者が商品・サービスを選択する際の判断材料を2つの軸として作成するポジショニングマップです。
ポジショニングマップは競合他社及び自社の強み・弱みを可視化できることから、自社のポジショニングを決める際に役立ちます。
マーケティング戦略の事例はこちら
ポジショニングの実施方法
ポジショニングマップを用いることで、自社のポジショニングを明確にすることが可能となります。
しかし、単にポジショニングマップを作成しただけでは、マーケティングにおけるポジショニングを実施したことにはなりません。
あくまでもポジショニングはSTP戦略の最終プロセスであり、マーケティングミックスまでが1つの戦略です。
ここでは、マーケティングにおけるポジショニングの実施方法について考えてみましょう。
ポジショニングマップを活用する
ポジショニングマップとは、ブランドイメージを形成する2つの要素を軸として作成する4象限のマトリクス図です。
単に自社及び競合他社の強み・弱みを書き出すだけでは、その程度や自社との相違点が明確になりません。
ポジショニングマップに自社及び競合他社の強み・弱みをマッピングすることで、ようやく個々の独自性・価値が明確になります。
したがってポジショニングを行うには、まず最初にポジショニングマップの作成から始めるのが常識です。
ポジショニングマップの軸と組み合わせを決定する
ポジショニングマップを作成する上で最も大切なのは、軸の組み合わせを決定することです。
なお、軸の種類としては以下の項目が考えられます。
- 価格
- 商品・サービスの特徴
- 品質
- 商品・サービスの機能性
- 競合との相違点
軸の組み合わせを考える上で注意すべきは、2軸をそれぞれ独立した変数とすることです。
例えば「価格」「高級感」を軸とすると、「価格が高いものは高級である」と定義されることから、独立した変数とはなりません。
一方の軸を「価格」とするなら、「商品・サービスの特徴」とするなど、双方に独立した変数を用いることが重要です。
自社のポジション(立ち位置)を決定する
ポジションニングマップの軸と組み合わせが決まったら、自社をマッピングしてみましょう。
ここで大切なのは「主観」を絶対に持たないことです。あくまでも冷静に自社の強み・弱みを分析することが大切になります。
主観を持ったままマッピングすると、正確に自社のポジション(立ち位置)を測ることができません。
競合他社も同様です。可能な限り正確にマッピングを行い、自社及び競合他社の立ち位置を正確に把握しましょう。
なお、ここまでのプロセスが基本戦略、いわゆるSTP戦略となります。
マーケティングミックスを実施する
STP戦略におけるポジショニングまで完了したら、マーケティングミックスを実践します。
なお、マーケティングミックスの基本構成は以下の4つです。
- 製品:Product
- 価格:Price
- 流通:Place
- プロモーション:Promotion
これらの頭文字を取って4Pと呼ばれることもあり、実行戦略を策定する上での基本要素です。
マーケターは自社のポジショニングを踏まえた上で、これら4Pの観点から顧客に対してどうアプローチしていくのかを策定します。
なお、マーケティングミックス実施後はPDCAサイクルを回して、必要な改善・修正を行いましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ポジショニングを成功させるポイント
ポジショニングを実施するにはポジショニングマップの作成が必須ですが、単に「作成した」だけでは不十分だといえます。
しっかりとした意図を持ってポジショニングマップを作成し、さらにはポイントを押さえたポジショニングを実施することが大切です。
ここではマーケターが理解しておきたい、ポジショニングを成功させるポイントを具体的に紹介します。
顧客の視点に立つこと
ポジショニングの手法が生み出された背景には「顧客志向」に根差した考え方が大きく影響しています。
企業は往々にして自社商品・サービスの優位性だけをアピールしがちですが、顧客とのギャップが生まれるだけです。
顧客志向を実践するには顧客のニーズを的確に把握するとともに、顧客の視点に立つことが大切だといえるでしょう。
なお、顧客のニーズを把握するには以下の手法が有効です。
- 顧客へのアンケート
- 市場や競合の動向分析
- 顧客の購買データ
ポジショニングの切り口やKBFを把握すること
適切なポジショニングを実施するには、その切り口やKBFを把握することが不可欠です。
顧客が商品やサービスを選択する際に「決め手」としている要因、すなわちKBFは1つではありません。
例えば時計を購入する場合、価格をKBFとする顧客もいれば品質・デザイン・ブランドイメージをKBFとする顧客もいます。
したがって、ポジショニングの切り口は1つに絞り込むのではなく、様々な側面から考えておく必要があるといえるでしょう。
差別化戦略と混同しないこと
ポジショニングと似通ったマーケティングの手法に「差別化戦略」があります。
差別化戦略とは企業が競合他社との圧倒的な差別化を図ることで、自社商品・サービスを際立たせる手法です。
差別化を図る点ではポジショニングと同じですが、差別化戦略はあくまでも自社商品・サービスの優位をアピールすることを目的とします。
これに対してポジショニングは顧客の視点に立ち、自社商品・サービスの独自性・価値をアピールする手法であることを理解しておきましょう。
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ポジショニングマップの作り方を解説
ポジショニングを正しく実施するには、ポジショニングマップの作り方が重要になります。
ポジショニングマップは顧客志向に基づいて作成しますが、いくつかのポイントを押さえて作成することが肝心です。
ここでは、マーケターが理解しておくべき、ポジショニングマップの正しい作り方について順を追って解説します。
ポジショニングマップの軸
ポジショニングマップにおける「軸」は、ポジショニングの考え方の根幹を形成する要素です。
どういった軸にすべきか検討する際は、以下の要素を参考とすると良いでしょう。
- 価格面:安価・高価
- 機能面:使いやすい・簡単・早い
- 感情面:快適・楽しい
- 精神面:自由・革新的
- 外観面:おしゃれ・スタイリッシュ・かわいい
- ステータス面:希少性・威厳がある
いずれも顧客が購買するか否かの判断を下す際の要素(KBF)であり、いくつか候補を列挙しておきましょう。
ターゲット顧客の重点評価KBFを抽出する
ポジショニングマップにおける「軸」の候補を列挙したら、ターゲット顧客の重点評価KBFと擦り合わせてみましょう。
ポジショニングは顧客志向に基づいたマーケティングであることから、軸はターゲット顧客が重要視する項目でなくてはなりません。
したがって、ポジショニングマップの軸は重点評価KBFとリンクしていることが条件となります。
なお、ターゲット顧客の重点評価KBFを見出すには、アンケートやWebサイトにおける問い合わせ内容などを参考とすると良いでしょう。
KBFを競合製品と比較する
ターゲット顧客のKBFが明確となったら、競合商品の特徴・強みと比較してみましょう。
このとき、自社及び競合他社の商品・サービスを各KBFごとに数値評価することで、強み・弱みを可視化することができます。
なお、数値評価する際には固定概念を持たないことを前提に、各項目とも5段階程度で評価すると分かりやすいでしょう。
また、評価を行う際には漠然とした主観で行うのではなく、「なぜ○点にしたのか」を明確にしておくことが重要です。
ポジショニングマップの軸を選定する
競合他社におけるターゲット顧客のKBFごとの数値評価が完了したら、KBFを軸にしたポジショニングマップを作成しましょう。
このとき、様々なKBFで軸を入れ替えることで、ポジショニングマップの4現象の分布は大きく様変わりします。
なお、4現象のうちで空白スペースが目立つ範囲が、競合他社とかぶらないユニークなポジションだといえるでしょう。
したがって、マーケターは自社商品・サービスの特徴を踏まえつつ、ユニークなポジションにおける独自性・価値を創造することが大切です。
ポジショニングマップの作り方で注意する点
ポジショニングマップを作る際には顧客の視点に立ち、自社商品・サービスの強み・弱みを冷静かつ丁寧に分析することに注意しましょう。
ポジショニングの基本は「顧客志向」です。したがって、ポジショニングマップにおける軸は顧客のニーズに沿ったものでなくてはなりません。
顧客からのアンケート結果やKBFを基にして、顧客の視点で自社商品・サービスが評価されているのかを的確に把握します。
その上で競合他社との差別化を図り、自社商品・サービスの独自性・価値を見出すことを心得ておきましょう。
ポジショニングマップの使い方を紹介
ポジショニングマップは、単に競合他社が提供する商品・サービスとの差別化を図るためだけに使うものではありません。
あくまでも、自社商品・サービスの独自性・価値を見出すものであり、競合他社との競争を避けることも1つの戦略です。
例えば、飲食店のポジショニングマップにおいて「メニュー」「価格」を軸とする場合、競合の少ない分野を模索することも検討します。
価格が安くてメニューが豊富なエリアに競合他社が集中するなら、敢えてメニューを限定して高価な料金設定を行うといった具合です。
つまり、自社及び競合他社の強みを可視化することで、いわゆる「隙間」となっているターゲットを絞り込みます。
さらに「どの程度価格を落とせば競合を避けられるか」といった、「軸」の度合いを測ることもポジショニングマップの賢い使い方です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ポジショニング戦略の成功事例
「ヘルシア緑茶」の成功はポジショニングの代表例です。近年、緑茶業界は熾烈な競争を繰り広げていました。
各メーカーは「旨味」「風味」を追求して、自社商品・サービスの差別化や優位性の確保に躍起になっていたといえるでしょう。
緑茶の分野では後進となる花王はポジショニングの結果、敢えて味では勝負することを避ける選択をしました。
当時参入する企業が少なかった「健康茶」という新たな分野で、自社製品の独自性をアピールする戦略を取ることとしたのです。
その結果、「ヘルシア緑茶」は中高年の支持を受け、「健康茶」の分野では高いシェアを誇ることに成功しました。
「ヘルシア緑茶」の成功は、まさに正確なポジショニングにより自社製品の独自性・価値を見出した好事例だといえるでしょう。
マーケティング戦略の事例はこちら
ポジショニングのマーケティングにおける実施で悩んだら
マーケティングにおけるポジショニングはSTP戦略を進める上で、とても大切なプロセスとなります。
とりわけポジショニングマップの作成は、STP戦略におけるポジショニングの成否に大きく影響を及ぼすプロセスです。
しかし、経験の浅いマーケターだとポジショニングマップの作成や分析方法に悩んだり挫折してしまうことも少なくありません。
こういった場合、デジマクラスの活用を検討しましょう。豊富な経験と高いスキルによって、マーケターの悩みを解消してくれます。
まとめ
マーケティングにおいてポジショニングの効果を最大限に引き出すには、STP戦略の一環であることを正しく理解することが大切です。
また、適切なポジショニングを行うにはポジショニングマップの作成が不可欠であり、顧客の視点で軸を設定することがポイントになります。
さらに、ポジショニングマップを活用する際には自社のポジションを明確にした上で、競合他社との比較を丁寧に進めましょう。
ポジショニングは競合他社と優劣を競うものではなく、自社商品・サービスの独自性・価値を見出すものであることを忘れてはなりません。
ポジショニングはマーケターにとって必ずマスターしたい手法ですが、業種や企業形態・市場規模などによりその方法は様々です。
したがって正しい手法をマスターするには、経験豊富で様々なノウハウを持っているデジマクラスに相談することが得策だといえるでしょう。