マーケティング戦略の1つであるコーズマーケティングについて知っていますか?
企業の利益を確保しつつ社会貢献活動を行うことができるコーズマーケティングは、CSRの手段としても注目を集めています。
しかし、全てのコーズマーケティングが成功しているわけではなく、思うような成果が得られなかったり、慈善活動の域を出ない事例もあるのです。
この記事では、コーズマーケティングの成功事例だけでなく、コーズマーケティングを行うメリットや失敗しないコツについても解説しています。
コーズマーケティングに興味がある人は、ぜひ読んでみてください。
目次
コーズマーケティングの概要
コーズマーケティングとは、寄付などの社会貢献活動を通して、商品の購買促進や企業のブランド力を高めるマーケティング活動のことを指します。
コーズマーケティングのコーズとは社会的大義のことです。
別名コーズ・リレーティッド・マーケティングと呼ばれることもあります。
社会に貢献できるだけでなく、自社に対しても間接的な利益を生み出すコーズマーケティングは、多くの企業が行っているマーケティング活動です。
コーズマーケティングを実施することによってどのようなメリットがあるのか、次の章で詳しく解説します。
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コーズマーケティング実施のメリット
コーズマーケティングを実施するメリットがあるのは企業だけではありません。
例えば、売上金額の10%を慈善団体に寄付する、というキャンペーンを行ったとしましょう。
慈善団体は企業から寄付をしてもらうことで、経営資源を獲得することができます。
商品を買った顧客は、自分も慈善活動に貢献したという満足感を得ることができるでしょう。
企業・顧客・寄付先の三者にメリットがある経営活動がコーズマーケティングなのです。
コーズマーケティングを実施するメリットについて、さらに詳しくみていきましょう。
CSRの手段になる
1つ目のメリットが、CSRの手段になることです。
CSRとはCorporate Social Responsibilityの頭文字をとったもので、企業の社会的責任という意味になります。
つまり、企業が自社の利益を追求せず、経営活動を通して社会に貢献する活動のことです。
社会に貢献するという点ではコーズマーケティングと同じですが、コーズマーケティングはあくまで企業が利益を出すことが前提のマーケティング活動になります。
コーズマーケティングを実施することで、CSRの役割を果たすことが可能です。
顧客満足度の向上と販売促進
2つ目のメリットは、顧客満足度が向上し、商品やサービスの販売促進につながることです。
顧客は、商品やサービスを購入することで間接的に社会に貢献することができます。
購買行動によって社会貢献ができることにより、顧客満足度は一段と向上するでしょう。
また、購入金額の一部を寄付しますというオプションがつくことで、類似商品との差別化ができます。
コーズマーケティングによって社会の役に立ちたいという顧客の心理的欲求が刺激され、販売促進につながるのです。
社員の意識向上
3つ目のメリットは、社員の意識が向上することです。
コーズマーケティングを行うことで、社員も自分自身が社会に貢献しているという誇りをもつことができます。
社員の意識が向上することで、作業効率もアップし、さらに業績を伸ばすことができるでしょう。
企業イメージの向上
4つ目のメリットは、企業のイメージが向上することです。
企業が社会に貢献するということは、企業やブランドイメージを良くすることにつながります。
イメージが良くなることで企業の信頼性が高まり、新たな顧客を獲得することもできるでしょう。
コーズマーケティングのわかりやすい事例
コーズマーケティングのわかりやすい事例として、キリンビバレッジ株式会社が行った活動をご紹介しましょう。
キリンビバレッジ株式会社は、ミネラルウォーターのボルヴィックで「1L for 10L」というキャンペーンを実施しました。
ボルヴィックを1L購入すると、アフリカのマリ共和国に10Lの水を送るというユニセフとの協同プログラムです。
2007~2016年の10年間で送った水の量は50億L以上になりました。
非常に大きな成功を収めたキャンペーンといえるでしょう。
キャンペーン期間中は特設サイトが設置され、活動報告が毎年行われました。
キャンペーンの成果を顧客と共有して信頼を得ることで、活動を続けることができた成功事例です。
コーズマーケティングの活動を継続させるためには、顧客の理解と意識を高めることが重要になります。
では、コーズマーケティングに対する消費者意識を高めていくためにはどうすればいいのでしょうか。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
コーズマーケティングに対する消費者意識
コーズマーケティングに対する消費者意識を高めていくことは、非常に難しい課題といえます。
なぜならば、コーズマーケティングの対象となる商品やサービスは限られており、1ヶ月などの短期間で終了してしまう取り組みが多いからです。
限定的な活動になると印象も薄れてしまい、顧客の意識を高める前にキャンペーンが終わってしまいます。
コーズマーケティングに対する消費者意識を高めるためには、活動を継続していくことがとても重要です。
次の章からは、現在も活動が継続されているコーズマーケティングの成功事例をご紹介します。
コーズマーケティングの成功事例
コーズマーケティングを成功させるためには、消費者となる顧客の理解が欠かせません。
顧客の理解を得て、現在も活動が継続されているコーズマーケティングの成功事例を2つご紹介します。
P&G
1つ目にご紹介するのは、、P&Gが行っているコーズマーケティングの事例です。
P&Gは2006年にユニセフとパートナーシップを結び、赤ちゃんの紙おむつ1パックにつき破傷風ワクチン1つを発展途上国に寄付しています。
育児に必要な紙おむつを購入することが世界の子供や母親たちの命を守ることにつながるということは、人々の心を大きく動かしました。
顧客だけでなく、P&Gの社員からも多くの共感を得ることになったのです。
ユニセフとパートナーになったことが功を奏して、破傷風ワクチンの活動は現在も続けられています。
イオン
2つ目にご紹介するのは、イオンが行っている「幸せの黄色いレシート」キャンペーンです。
幸せの黄色いレシートキャンペーンは、地域のボランティア団体を支援する目的で2001年よりスタートしました。
毎月11日にイオンで買い物すると発行される黄色いレシートを、地域のボランティア団体名が書かれた店舗内にあるBOXに購入者が投函します。
BOXに投函されたレシートの合計金額の1%分の品物を、イオンが寄付するというシステムです。
応援したい団体は購入者が自由に選択できることと、一定の金額ではなく毎月11日の購入金額で支援額が決まるということが大きな特徴です。
2020年2月の時点で、40億円以上に相当する品物がイオンから各所に寄付されています。
ボランティア団体の受付も随時行われており、地域振興の一役を担っているといっても過言ではないでしょう。
イオンのコーズマーケティングは、顧客参加型の成功事例といえます。
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実は多いコーズマーケティングでよくある失敗
コーズマーケティングでよくある失敗は、企業の利益を優先する姿勢が透けて見える活動になってしまうことです。
グリーンウォッシュ(見せかけの環境保護)がその代表的な例になります。
グリーンウォッシュとは、「Green(環境)」と「whitewash(ごまかし)」を掛け合わせた造語です。
例えば、絶滅危惧種を保護する活動に参加している企業が、環境破壊につながる原材料を使っていたとします。
自分が参加している絶滅危惧種だけを大切にして、他の動物や環境への配慮が感じられない企業の姿勢がグリーンウォッシュです。
では、グリーンウォッシュのような失敗を引き起こさないためにはどうすればいいのでしょうか。
コーズマーケティングに失敗しないためのチェックポイントについて、次の章から詳しく解説していきます。
失敗しないためのチェックポイント
コーズマーケティングに失敗しないためのチェックポイントは次の5つです。
- ターゲット市場とコーズが合っているか
- 提携パートナーはターゲット市場や商品ブランドに適合するか
- センシティブな内容に関する扱いは慎重か
- 利益ありきになっていないか
- 第三者目線で違和感がないか
それぞれ1つずつみていきましょう。
ターゲット市場とコーズが合っているか
コーズマーケティングを始める前に、ターゲット市場とコーズ(支援先)が合っているかどうかをきちんと分析しましょう。
コーズの信頼性についても事前に確認しておくことが大切です。
先に挙げたP&Gの例では、ターゲットと支援先がどちらも赤ちゃんと母親という共通点がありました。
ターゲット市場とコーズをリンクさせることで、より無駄のないマーケティング戦略が可能になるでしょう。
提携パートナーはターゲット市場や商品ブランドに適合するか
コーズマーケティングに長期的に取り組むためには、提携するパートナーの存在が欠かせません。
コーズマーケティングをバックアップしてくれるならどんな団体でも良いというわけではなく、ターゲット市場や商品ブランドにふさわしいパートナーを探す必要があります。
商品やブランドのコンセプトからかけ離れたパートナーを選んでしまうと、かえって不信感をあおる結果となってしまうでしょう。
提携パートナーの信頼性や自社との整合性についても、よく検討することがポイントです。
センシティブな内容に関する扱いは慎重か
コーズマーケティングを行う場合、センシティブな内容に関する扱いは慎重に行うようにしましょう。
センシティブな内容とは、暴力的な内容や成人向けの内容など、場合によっては人を不快にさせる要素が多い内容のことです。
同じキャッチコピーでも人によって受け止め方は違うので、コーズマーケティングの宣伝文句には特に注意する必要があります。
SNSが発達している現代社会は、ちょっとした言い間違いでアカウントが炎上してしまうことも少なくありません。
広告がセンシティブな内容でないかどうかはよく吟味しましょう。
利益ありきになっていないか
寄付金を短期でたくさん集めて効率よく企業のイメージアップを図る、などの目的でコーズマーケティングを行うことはおすすめしません。
利益を追求する、宣伝臭がする活動に対して顧客が興味を持つことは難しいでしょう。
コーズマーケティングで顧客の心をつかむためには、利益ありきではなくあくまで社会に貢献したいという姿勢を表現していくことがポイントです。
第三者目線で違和感がないか
第三者目線、つまり客観的に見てコーズマーケティングに違和感がないかどうかを、実施する前にもう一度見直しましょう。
例えば、CSRなどの活動を全く行ってこなかった企業が急にコーズマーケティングを始めると、売名行為と勘違いされる恐れがあります。
違和感なくマーケティング活動を展開できるよう、企業理念にCSRの内容を盛り込んでおくといいでしょう。
また、活動の透明性を保つため、活動実績や寄付金の金額などを顧客にむけて定期的に報告することも重要です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
コーズマーケティングで成果を出すコツ
コーズマーケティングで成果を出すコツは、企業のみ・顧客のみでなく寄付先や自然環境など、あらゆる方面に利益をもたらす活動にすることです。
失敗しないためのチェックポイントから導き出したコーズマーケティングのコツを詳しくご紹介します。
自社のミッションとの一貫性
自社のミッションとコーズマーケティングの内容に一貫性があるかどうかは、最も重要なポイントです。
次の4つの要素に一貫性をもたせるようにしましょう。
- コーズ
- ターゲット市場
- 提携パートナー
- 商品・ブランド
4つの要素が統一されることで、顧客からの共感が得やすいコーズマーケティングを展開できます。
競合のコーズマーケティングを分析
競合他社のコーズマーケティングを分析して、自社のコーズマーケティングに活かすようにしましょう。
良かった点と改善点を洗い出し、自社のマーケティング活動に反映させることが大切です。
有識者の見識を入れる
コーズマーケティングには、多角的な視点が必要です。
自社だけでなく社外の有識者の見識を取り入れることは、コーズマーケティングにとって大きなプラス要素となります。
コーズマーケティングを意義のある取り組みにするために、さまざまな立場の客観的な意見を活かすようにしましょう。
マーケティング施策で悩みがあったら
コーズマーケティングは企業にとって非常に意義のある取り組みですが、実際に成果を出すのは非常に難しいです。
コーズの選定やキャンペーンの内容などで悩むこともたくさんあるでしょう。
マーケティング施策で悩みがあったら、専門コンサルタントであるデジマクラスに相談するのがおすすめです。
悩みを解決して、コーズマーケティングを成功に導くために全力でサポートいたします。
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まとめ
コーズマーケティングは、利益を追求するだけでなく社会貢献にもつながる、とても魅力的なマーケティング活動です。
コーズマーケティングを成功させるためには、あらゆる要素に一貫性をもたせ、顧客や自然環境にも利益がある活動内容にしなければなりません。
コーズマーケティングでわからないことがあったら、専門コンサルタントのデジマクラスにぜひご相談ください。