ケーススタディは医療や看護の現場のみならず、ビジネスの分野でも幅広く取り入れられています。
今回はそのケーススタディの定義から、事例の特徴やケーススタディの方法まで、詳細に調査しました。
マーケティングについても解説していますので、ケーススタディやマーケティングの知識がない方でも、理解を深められる内容になっています。
ぜひ最後までお読みください。
目次
ケーススタディの定義は?
ケーススタディは物事の改善を目的とした事例の研究と定義されます。過去の成功例・失敗例・実例などを分析することで、問題解決の法則を見出す方法です。
研究が行われる分野や事業によって内容や目的は異なりますが、「物事の改善」という点では共通しています。
事例をテーマに行った研究であれば、どのような分野でもケーススタディです。
ケーススタディは事例を調査、研究して学習するものですが、関連してケースメソッドという教育方法もあります。
こちらはより実践力を培うもので、事例をもとに導き出された最善の方法を、議論していく方法です。
事例から学ぶ
過去に起こった事例や症例などの資料を調査し現在の問題を分析することで、物事が解決することがあります。この過程もケーススタディです。
取り上げる事例が偏らないように、様々な媒体から探します。本や論文、ビジネススクールやインターネットなどが検索するツールです。
以下に、事例を集める方法を箇条書きにまとめています。
- 関連する資料を整理する
- インターネットで検索をする
- 新聞記事を読む
- 学術論文を探す
- セミナーに出席する
- ビジネススクールに通う
日頃から新聞記事やセミナーで広く情報を調査しておくことで、事例を探す手間が省けます。
ビジネスにおけるケーススタディ
ビジネスにおけるケーススタディは経営大学院(MBAを取得できる大学)で学ぶことができます。
他にも企業や会社における研修内で実施されることもありま研修で行われるケーススタディは教育を目的に行われる場合があるので、あまり実践的ではありません。
教育や医療の分野でもケーススタディは行われますが、ビジネスにおけるケーススタディには様々なメリットがあります。
1つめは慣れです。多岐に渡る事例を分析し、問題を擬似体験することで「会社の動きを知る」ことができます。
後々問題が起きた際、冷静に対処が可能です。
2つめは「リスクを避ける」ことができるという点です。
1つめのメリットである様々な事例に予め「慣れ」ることで、同じ失敗が起きないよう対処したり、問題が起こる前に準備ができるでしょう。
他にも過去の事例を様々な角度から分析することで、新しいアイデアが生まれることがあります。
自分なりの考えを発言するのでプレゼン能力も培われますし、様々な考えを聞くことで世界観や視野を広げることもできるようになります。
このようにケーススタディを実施すると、個人としても企業としてもプラスです。
ケーススタディを定期的に行うことは、個人の成長のみならず、会社の損害や損失を最低限に抑えることにもつながります。
しかし調査のやり方や分析の方法を間違うと、意味のないケーススタディになってしまうので、集める事例はなんでも良いということではありません。
古い事例では今後に活かせない可能性がある
ケーススタディは事例を分析して研究することで問題を改善しますが、集める事例が古すぎると参考にならない場合があります。
わかりやすいのが医療や看護の分野でのケーススタディです。
医療は日々進歩しています。その中で、過去の事例が間違っているあるいは危険な方法の場合、その事例を用いて分析しても意味がありません。
時代に沿った今日でも参考になるようなものを集める必要があります。
・集める事例を吟味しよう
マーケティング戦略の事例はこちら
ケーススタディの方法
基本的なケーススタディの方法をまとめます。
- 参考にする事例を探す
- 事例を整理する
- 第三者に説明する
この流れで実施されます。
重要なのはインプットで済まさずに、アウトプット(第三者に説明)することです。
インプットだけでは、自分の力になったとは言い切れないからです。
誰かに説明できて初めて、分析や調査の内容を理解できたと言えます。
以下にケーススタディを実施して成功した事例を挙げていきます。
事例①:ピジョン
ピジョンはベビー用品全般を扱うメーカーです。赤ちゃん向けのスキンケア新商品の拡販のためにケーススタディを実施しました。
課題:顧客のインサイトを知りたい
ケーススタディを実施するにあたって、課題にされたのが新商品のターゲットになる顧客のインサイトでした。
顧客のツボを理解することで、購買意欲促進に繋がり、新商品でも手にとってもらいやすくなります。
また、適切なターゲット層を見極めることができ、販売のロスを最小限に抑えることができます。
新商品とアンケートの送付
ピジョンが実施したソリューションは、子供を持つ家庭に新商品を送付し、アンケートで使用感やイメージなどを回答してもらうことでした。
その結果、
- 商品の魅力として発信していたキーワードが消費者にあまり響いていない
- 商品の効果が現れるのがメーカーが予想したタイミングと異なる
ということが明らかになりました。
アンケートを活用し、プロモーションの路線変更やサンプリング施策の見直しにつなげることができました。
事例②:SONY
ハードウェアやソフトウェアを取り扱うSONYは中国市場において競合の企業の影響力が、どの程度自社の脅威になっているかを認識するためにケーススタディを実施しました。
自社の立ち位置を理解することで、今後の戦略に活用することができます。
課題:海外の競合会社がどの程度自社の脅威になっているか
国内のトップシェアを持つテレビ市場において新規参入してきた企業がどの程度脅威になるのか、自社リソースを活用して分析しました。
しかし、人口の多い中国国内においては消費者の声を十分に聞くことは難しく、競合会社の脅威を測りかねている状態でした。
SNSやECサイトの口コミデータの分析
そこで出したソリューションは、SNSを活用することでした。
自社のプロモーション活動やマーケティング活動が消費者にどのような影響を与えているのかを調査し、一定期間SNSやEC上の口コミや評価をモニタリングし、
- 評価点や改善点
- 各ブランド言及者の属性
- 競合企業が過去に行ったプロモーション
- 口コミや評価と販売の相関関係
から分析を行います。
その結果自社は競合会社と比べるとブランド力と、機能性が高く評価されていることがわかりました。
一方で、新たにスマートフォンと連携したサービスや商品を提供している競合企業は、本来自社が取り込みたい消費者層に受け入れられていることも明らかになりました。
SONYは自社と競合企業との差別化を図ります。消費者に受け入れられるような新たなアイデアを創出しました。
事例③:資生堂
国内シェアNo.1の化粧品を取り扱うメーカーの資生堂では、中国人の訪日客向けのプロモーションの運用のためにケーススタディを実施しました。
課題:インバウンド需要の拡大
訪日客数が増加する夏休みと国慶節の10月前にブランドを認知してもらい、訪日の際に商品を購入してもらうためにはどのような方法が効果的なのか調査されました。
ポイントは訪日客が購買意欲が最も高まる、旅の前のプロモーションを行うことです。
SNSを活用したプロモーションの実施
資生堂が実施したソリューションはブランドのキーワードになる「敏感肌」への関心を高めることでした。
医師にも協力してもらい、敏感肌ケアに効果的であることをレポートにまとめます。
SNSやターゲットとする層が使用するアプリなどで多数発信することで、アイテムとしての意識づけを行うことに成功しました。
その結果、資生堂の新商品は予想を上回る業績を上げます。
インバウンド需要を喚起するという目的を遥かに超え、中国本土のEC・オフライン店舗での売り上げ増加につながりました。
マーケティング戦略の事例はこちら
事例④:カルビー
日本のスナック菓子メーカーのカルビーは中国本土へとビジネス規模を拡大させるために、消費者向けの商品認知を効果的にするためにケーススタディを実施しました。
課題:越境ECでの商品販促
越境ECを一般貿易へと規模を拡大するためには、販売促進に力を入れなければなりません。
国内販売、インバウンド、越境ECの全てのチャネルでの効果を最大化するために、効率的かつ効果的な方法を見出す必要がありました。
動画の拡散とSNSでの話題化
そこで検討されたのが、商品PRの動画を作成しSNSで話題化させることでした。その際使用された商品は、日本で人気のじゃがりこです。
「日本人人気No.1」と醸成し、年間消費量を「地球26周分」などと破天荒な数値で表現し、ユニークでインパクトのある動画を制作しました。
中国版TikTokや中国最大のSNS、Weiboを活用したキャンペーンを一斉に実施します。
その結果幅広いターゲットへのリサーチに成功し、消費者による多数のじゃがりこ動画の投稿を引き起こして大きな反響を得ることになりました。
施策の効果検証も詳細に実施されるため、今後のプロモーションの知見を知ることができます。
デジタルマーケティング分野の事例が増えつつある
総務省の調査によると、平成30年から令和元年にかけてのインターネット利用者の割合が10%増加し、89.8%になりました。
SNSを従来のコミュニケーション目的ではなく、情報収集目的で利用するユーザーが増えていることもわかります。
手元にあるスマートフォンで24時間いつでもどこでもインターネットへとアクセスできる環境は、デジタルマーケティングの需要を高めるともいえます。
デジタルマーケティングの目的は主に3つです。
- 消費者との接触機会を増やす
- データを集める
- ニーズに合った情報を提供する
SNSを効果的に活用することは企業に大きな利益をもたらします。
国内のみならず全世界に情報を発信することができるので、海外進出も可能になりました。
ケーススタディでの学びをアウトプットするなら?
ケーススタディで学んだことを、自己完結で済ますのは非常にもったいないことです。
第三者にアウトプットしてこそ、ケーススタディの本来の目的を達成することにもつながります。
アウトプットの活かし方を2つご紹介します。
今の仕事で活かす
作成したケーススタディは4つの場面で活用することができます。
- 同じような問題を繰り返さないため
- 会議の場のアイデアとして
- 研修内の教育材料
- コミュニケーションツールとして
1つ目の場面では、過去に起こった問題をあらかじめ知っておくことで、冷静に対処することができます。問題発生の防止です。
2つ目では、煮詰まった場面での小休止の代わりになります。
3つ目の場面では、自分たちが担う責任や役割を理解するために効果的です。
4つ目は、仕事の進め方や問題が発生した場合、アドバイスとして活用できます。
今の仕事でもっと実践力を身に付けたい人や人間として成長したいと考えている人は、ケーススタディを効果的に活用することで希望をかなえることができます。
また会社内で責任のある立場にある人にとっても、ケーススタディは重要です。
社員や部下の教育ツールとして活かすことで、社員の実践力向上につながり、結果として会社としても大きく成長できます。
新規事業で活かす
ケーススタディは何も今現在の仕事でのみ活用できるものではありません。
独立を考えているや新しい事業を開始したい人にも、ケーススタディは活用できます。
新規事業で失敗した例はたくさんあり、事例を集めて失敗の法則を見つけるだけでもケーススタディを行う価値はあります。
新規事業を始めるにあたって大切なことは、「想定外」を極力減らすことです。
あらかじめ様々なケースに対応・対処できる環境を準備しておくことで、大きな失敗は確実に防ぐことができます。
新規事業を考えている人は、より多くの事例を集めてケーススタディを実施してください。
ケーススタディでの学びを新天地で活かしたいならプロに相談
新規事業の開始や立ち上げをする場合、ケーススタディで得た知識や能力はすぐに活用できます。
しかし、その道の専門家やプロの知見やアドバイスこそが事業成功のカギです。
サポート支援を十分に受けられるサービスが、デジマクラスにはあります。
ケーススタディで得たものを新天地で活かすのであれば、デジマクラスに相談しましょう。
求めている情報やアドバイスが必ず見つかります。
マーケティング戦略の事例はこちら
まとめ
ケーススタディについて解説しました。
- 事例を集めて
- 整理し
- アウトプットする
という方法でケーススタディは実施することができます。
ポイントは最後のアウトプット(第三者に説明)することで、より理解を深めるという点でした。
一人でも実施できるケーススタディですが、会社や企業内で行うことで社員の実践力向上にもつながります。
結果として会社内のリスクを避けられたり、問題を解決するアイデアが生まれたりと、プラスのことばかりです。
大手のメーカーでもケーススタディた効果的に実施されており、今回は4つの例をご紹介しました。
新規事業を始めたい方にも、ケーススタディは活用できますので、まずは事例を集めることから始めてみましょう。