マーケティングで注目されている手法にカスタマーサクセスがあります。
自社の商品・サービスを通じて顧客を成功に導き、自社の利益を創出する手法のことです。
カスタマーサクセスは積極的に顧客の利益に関与していく戦略で、攻めのカスタマーサクセスとも呼ばれているのです。
この記事では、カスタマーサクセスで設定したいKPIを解説します。
カスタマーサクセスを成功させるコツやKPI設定時の注意点についても紹介します。
目次
カスタマーサクセスの概要
カスタマーサクセスとは、自社の提供するサービス・商品を通じて顧客の事業を成功に導くように取り組むことです。
顧客の利益を最大化するための能動的な活動を意味しますが、その活動に取り組む組織・職種・チームなどを指すこともあります。
2000年頃から使われはじめ、サブスクリプション型のサービスを提供するSaaSの普及などによって急速に広がりました。
SaaSとはクラウド上に作成されたアプリケーションやサービスをインターネットで活用する形態です。
それまで主流だった「カスタマーサポート」が、顧客からの問い合わせへの対応を主とする、いわば「守り」の姿勢です。
一方、カスタマーサクセスは、積極的に顧客をサポートし成功に導く「攻め」の姿勢の活動といえまるでしょう。
カスタマーサクセスの活動では、改善や提案を繰り返しながら能動的にその達成をサポートします。
その結果、顧客からの信頼を得て、自社のサービスをより多く・広く・長く利用してもらい、自社の利益も最大化できるのです。
カスタマーサクセスを実現することで顧客と企業は「Win-Winの関係」を築くことができます。
カスタマーサクセスの重要性
カスタマーサクセスが重要とされるのは、長期的に安定して自社の利益を最大化することができるからです。
従来の「売り切り型」のビジネスモデルでは、サービスや商品を売ることが何より重要でした。
そのようなビジネスモデルでは、新規契約数・受注率・売上そのものが重要視されます。
一方、契約を定期的に更新する「サブスクリプションモデル」では、契約後いかに顧客にサービスを使い続けてもらうかが重要になります。
自社のサービスを使うメリットを顧客が感じなければ、すぐに契約を解除され他社のサービスに移られてしまうのです。
特にインターネットが普及し顧客自ら商品やサービスを検索して比較・検討する時代です。
長期にわたる良好な関係を築くことは難しい面があります。
カスタマーサクセスは、顧客の信頼を勝ち取り、契約を長期的に継続してもらうために重要な考え方なのです。
マーケティング戦略の事例はこちら
カスタマーサクセスでKPIを設定すべき理由
カスタマーサクセスは「顧客企業が成功したか」が評価基準となります。
しかし、その変化は目に見えて感じることはできません。
そのため、数値化された目標を設定し、効果を測定する必要があります。
顧客にとっての成功である「重要目標達成指標(KGI: Key Goal Indicator)」を顧客目線で定義します。
そして、その目標達成に必要な「重要業績評価指標(KPI: Key Performance Indicator)」を設定してください。
自社で測定可能なKPIを設定し定期的に管理することで、カスタマーサクセスが実現しているかを数値で「見える化」することができます。
KPIは目標達成(KGI)に至るまでのプロセスにおける進み具合を見極める手法です。
期待通りに進捗していなければ原因を追究し、KPIとKGIを見直し必要があれば修正することになります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマーサクセスで設定したいKPI
カスタマーサクセスが実現しているか測定するために設定したい代表的なKPIを説明します。
解約率(チャーンレート)
カスタマーサクセスの目的は、顧客に成功をもたらすことで継続して自社のサービスを利用してもらうことです。
そのため、解約率(チャーンレート)は最重要とされる指標のひとつです。
チャーンレートとは顧客がサービスを解約する割合を示すもので、解約率の考え方には大きく分けて2つあります。
- カスタマーチャーンレート
- レベニューチャーンレート
「カスタマーチャーンレート」は、特定期間に解約した顧客の全体に占める割合です。
計算式は 、「対象期間で解約したユーザー数/対象期間前の全ユーザー数)x100」になります。
マーケティングではチャーンレートという時はカスタマーチャーンレートをいいます。
「レベニューチャーンレート」は、特定期間における収益に対して、解約によって生じた損失の割合です。
計算式は、「サービス単価x 対象期間に解約したユーザー数/対象期間の総収益)x100」で求めます。
LTV(顧客生涯価値)
LTV (Life Time Value)は「顧客生涯価値」といわれ、ある顧客が自社との契約期間中に自社にもたらす利益のことをいいます。
LTVを最大化するには、顧客にいかに長く継続して、より多くの契約をもらうかがカギとなります。
また、顧客の契約単価を上げたり、契約頻度を増やしたりすることも、LTVを引き上げる要因になるのです。
アップセル・クロスセル率
顧客の成功が実現し自社に対する満足が高まると、アップセル・クロスセルにつながります。
アップセルとは、契約しているものを上位モデルに切り替え、契約単価が上がることです。
例えば、試しに導入した一般向け料金でのサービスを、より高機能なプロ向けのサービスに切り替えるような場合が考えられます。
より単価が高いものに契約を変換することにより、顧客単価が上がりLTVの引き上げに繋がります。
クロスセルとは、契約しているサービスと関連する他のサービスの契約を追加購入することです。
例えば、顧客管理ツールを契約しコストダウンを実現した顧客が、会社の売上管理ツールを新規に導入する場合などです。
既存契約に追加されることで、顧客単価が上がります。
アップセル・クロスセルのどちらも、顧客が自社サービスの価値を認め、信頼してくれているということを意味します。
オンボーディング完了率
オンボーディングとは、自社のサービスを顧客に理解してもらい、定着するプロセスをいいます。
オンボーディング完了率を測定することで、顧客が自社のサービスを理解し、問題なく使ってもらえているかどうかが分かります。
どのような状態になればオンボーディングが完了した、とするかはそれぞれの顧客によって異なるといえるでしょう。
そのため、それぞれの顧客にあわせたオンボーディング完了目標を設定する必要があります。
顧客に自社のサービスを正しく理解してもらえなければ、使い勝手が悪いサービスとみなされ、解約に繋がる可能性があります。
顧客へのサポートと能動的な働きかけでスムーズな導入が実現し、オンボーディング率を高めることができるでしょう。
売上継続率
売上継続率はNRR (Net Revenue Retention)ともいわれます。
売上継続率は、契約が継続し売上を維持できているかの指標です。
サブスクリプション型のビジネスモデルにおいて、長期的な契約は非常に重要です。
売上継続率はそれが達成できているかを測定する指標になります。
その月の収益・新規契約・解約、アップセル・クロスセルなどの増減を加味します。
そして100を超えていれば契約が維持され、順調に伸びていると判断できるのです。
カスタマーサクセスのKPI設定手順
カスタマーサクセスの達成度を測定するためのKPIには注意しておくべき設定手順があります。
ここではKPIの設定手順について解説します。
KGIの設定
まず自社サービスを通じての「顧客にとっての成功」が何であるかを考える必要があります。
最終的なゴールであるKGIを、顧客視点で設定します。
ここでのゴール設定がずれていると、その途中の達成指標とされるKPIの設定が意味をなさなくなるのです。
例えば、売上アップを目的とする場合と、コストダウンを目的とする場合では、目的達成の方法も、達成までの指標も異なってきます。
自社の利益やメリットからではなく、あくまで自社のサービスを使う顧客の視点で達成すべき目的は何かを考えましょう。
現状分析・把握
KGIを設定したあとは、顧客の現状を分析しましょう。
目的としているKGI達成までに必要なアクションは何か、今の資源で対応可能なことは何かを検証します。
そして自社のサービスがどのように目的達成に寄与できるのか、現状分析して把握しましょう。
KPIの設定
現状を分析し、目的の達成までに必要なことを確認した上で、その中間点での達成指標としてKPIを設定します。
KPIは先に説明したような、数値化して測定できる指標を用いて、定期的に可視化できるようにします。
マーケティング戦略の事例はこちら
カスタマーサクセスを成功させるコツ
カスタマーサクセスを成功させるには、適切なKPIを設定してPDCAを回しながら施策を実行する必要があります。
PDCAとは「Plan(計画)」・「Do(実行)・「Check(評価)」・「Action(改善)」の頭文字をとったものです。
業務の効率化を目指す指標で改善したプロセスが正しく進んでいるか進捗状況を確認します。
それではカスタマーサクセスを成功させるコツを解説します。
顧客を分析してニーズの把握を徹底する
顧客の現状を分析し、どのような経緯で自社サービスを契約することになったのか、ニーズを徹底的に把握します。
自社のサービスが採用されなければ、そのニーズはどう満たされるのか。
他社のサービスであればどうか、などさまざまな視点で分析します。
顧客のニーズには、顧客自身も気付いていない潜在的なものもあるのです。
自社サービスについての知識と、他の導入事例などによる経験も合わせ、顧客が気付いていないニーズを提示しましょう。
そして、自社サービスならそのニーズを満たせることを提案するのです。
他部門とも連携をして取り組む
KPIの数字を追いかけているだけではカスタマーサクセスは実現しません。
KPIの指標を確認し、他部門とも連携して、顧客の目的を達成するために必要なアクションを策定し実行しましょう。
例えば、オンボーディング完了率が低いという場合は、カスタマーサポートの知識や経験を生かし、顧客のフォローアップを徹底します。
また、アップセルが見込めそうな場合は、営業部門からのアプローチも有効です。
他部門と連携する場合も、目的は自社の売上アップではなく、顧客の成功を第一にするべきです。
カスタマーサクセスを実現し、その結果として自社の利益も上がるということを、他部門にも理解してもらう必要があります。
成功させるためにはツールでの効率化も一つの手
KPIを定期的にチェックし、それをもとにカスタマーサクセスに必要な施策を立てるのが重要です。
しかし、KPIの管理に大幅に時間を取られるようでは本末転倒です。
定期的に自動でKPIの見直しができるよう、ツールを導入するのは非常に有効な方法といえます。
売上や顧客管理のツールと同時に使えるものであれば、KPIとの相関性もよく分かり、必要な対応策も見えてきます。
効率的にKPIを管理するために、ツールの導入も積極的に検討しましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマーサクセスのKPI設定時の注意点
今まで見てきたように、カスタマーサクセスの目的は顧客の成功です。
KPIを設定する際も、それを念頭に置いて設定する必要があります。
ここではKPI設定時の注意点にフォーカスします。
KPIを達成することでKGIが達成できるか
カスタマーサクセスのKPIを設定する際には、まず、顧客にとっての成功をKGIとして設定し、その過程としてKPIを設定します。
つまり、KPIを達成することで、KGIが達成できなければ設定したKPIの意味がありません。
KGIから逆算してKPIを設定できているか、設定時だけでなく効果の判定をする際も確認するようにします。
PDCAが回しやすいKPIを設定できているか
KPIを算出する目的は、事前に立てた計画が適切に進んでいるかどうか、PDCAを回してチェックします。
行ってきた施策に効果があったのかチェックができないということであれば、KPIの設定自体が適切でない可能性があります。
PDCAのサイクルに有効なKPIになっているか十分検証しましょう。
KPIは常に検証を繰り返す
ビジネスの状況は日々変化します。
一度設定したKPIが、その顧客との取引においてずっと有効ということはあり得ません。
自社サービスを導入後の時間の経過や、顧客のフェーズの変化により活用すべきKPIは変化します。
顧客の状況を常に把握し、カスタマーサクセスにおけるKPIの設定が適切かどうか、常に検証する必要があります。
マーケティング戦略の事例はこちら
カスタマーサクセスのKPI設定で困った時は?
カスタマーサクセスのKPI設定する際は、以下に注目して設定することが大切です。
- 解約率
- オンボーディング完了率
- アップセル・クロスセル率
また、ツールを使ってカスタマーサクセスを効率的に進める方法もあります。
しかし、いずれもある程度の知識と経験が必要です。
カスタマーサクセスのKPI設定にお悩みの方はデジマクラスにご相談ください。
デジマクラスはマーケティングに関する豊富な知識と経験があります。
自社のシステム環境を検証して最適なシステムやツールをご紹介することも可能です。
他部門との連携や積極的なツールの活用もしながら、顧客の成功を実現し自社の利益も最大化していきましょう。
まとめ
カスタマーサクセスで設定したいKPIと注意点について解説しました。
カスタマーサクセスを活用すれば自社に対する顧客の信頼度も増し、長期的に安定した利益を生むことができます。
そのためには、KPIを適切に設定し、PDCAを繰り返すことで顧客の目的達成を確実なものしなければなりません。
目的を達成できた顧客は、長期的な契約の継続・他のサービスの追加購入・高単価のサービスへの切り替えも期待できます。
カスタマーサクセスの取り組みとしてKPIを適切に設定し、能動的に顧客に寄り添いながら実践していきましょう。