カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という意味で、自社の収益と両立させることを目指すものです。
カスタマーサポートが受動的なのに対し、カスタマーサクセスは能動的に顧客の成功を追求します。
カスタマーサクセスは顧客をセグメントし、3つのタッチモデルに分類します。
今回は顧客をセグメントして分類されたタッチモデルの特徴や施策例などを見ていきましょう。
カスタマーサポートに関心がある方におすすめです。
目次
カスタマーサクセスが重要視される背景
カスタマーサクセスが注目されている背景にはビジネスの環境変化が大きな要因です。
これまで日本の企業は売り切り型ビジネスを継続してきました。
商品やサービスを1 度購入することがゴールであり、目標が達成されれば新規顧客を見つけセールスをするやり方でした。
しかし、現在は大きく経済状況が変化しているのです。
いくつか取り上げてみます。
- 市場の成熟化
- サービス業の多様化
- サブスクリプション型ビジネスの登場
経済のグローバル化とインターネットの普及で、同じ商品やサービスを提供する企業は世界中に広がっています。
価格競争も激化し、インターネットで商品の比較もできるため顧客はコストをかけずに商品を購入できるようになりました。
また、新商品を開発してもすぐに似たような機能を備えた商品がどこかで発売され価格も下がっていきます。
差別化が昔と比べて難しくなり、技術だけでは太刀打ちできないのです。
価格競争の激化は薄利多売になってしまい、保守やメンテナンスなど付加価値の高いサービスを重視するようになったのです。
「モノ」から「コト」の流れはあらゆるビジネスに広がってきているといえるでしょう。
特に増えてきたものにサブスクリプション型ビジネスがあげられます。
サブスクリプションとは商品の販売だけでなくサービス提供も含めた契約をいい、一定期間利用できるものです。
つまり「所有から利用」に変わってきているのです。
例えば、1,000万円する商品を購入するのではなく、月額10万円で利用(レンタル)する契約を一定期間締結することになります。
製品やサービスに不満や問題があれば顧客はいつでも契約を解除できるのです。
企業とすれば契約解除は避けたいので、常に顧客の使用状況を把握し利用頻度が少なくなると早急なフォローを行います。
こうしたサブスクリプション型ビジネスが急速に拡大しているのです。
企業も顧客の満足度を高め、成功体験を維持してもらうことが安定した収益になるのです。
カスタマーサクセスに欠かせないLTV
カスタマーサクセスのメリットは顧客フォローによる解約率の低下・LTV向上といえるでしょう。
LTVは「Life Time Value」の略で、「顧客生涯価値」と呼ばれます。
1顧客から生涯得られる利益の合計を指数化したものです。
顧客が契約を継続したり、利用している商品が気に入って追加オップションを購入したりすればLTVが向上します。
LTVの値はサブスクリプション型ビジネスでは特に重要視される指標です。
そのために企業は顧客のセグメントを行い、それぞれにふさわしいフォローを徹底的に行います。
顧客が求めるサービスを理解し、積極的に商品やサービスを提供できるかが契約を継続する試金石になるのです。
新規顧客の契約獲得は既存顧客の5倍のコストがかかるといわれます。
限られたリソースで顧客を獲得して収益を伸ばすなら、既存顧客にサービスを継続してもらう方が収益の拡大に結び付きやすいのです。
LTVが高いということは顧客満足度が高いことを意味し、ロイヤリティが向上し企業経営にも大きな影響を与えるのです。
タッチモデルの特徴
カスタマーサクセスは顧客を成功に導くことをいいます。
カスタマーサクセスにはLTVの向上は欠かせない施策の1つです。
LTVに応じて顧客を3つの層に分類し、最適なアプローチを行う手法をタッチモデルといいます。
タッチモデルはLTVを軸にした営業戦略の再考やビジネスモデルの最適化に欠かせないものです。
それでは3つのモデルを解説します。
ハイタッチ
「ハイタッチ」とは大口顧客への対応のことで3層の一番上に位置し、高いLTVが期待できます。
ここに分類される顧客数は一番少ないのですが、最も収益に直結する層のため手厚いフォローが必要です。
優先順位を付け個別に柔軟な対応をすべき層といえます。
個別のイベント・セミナー・オンボーディングを実施することで収益になるのです。
1対1の顧客対応が重要視される層がハイタッチになります。
ロータッチ
ハイタッチとテックタッチの間にあるのが「ロータッチ」です。
アプローチ方法は個別でなく集団対応になります。
ハイタッチ層に比べて、顧客数が多いためロータッチをいかにデザインするかがカスタマーサクセスを成功させるポイントです。
ロータッチの対応には、ハイタッチの要素とテックタッチの要素も含まれます。
テックタッチ
LTVで見ると最も低い位置にいて顧客数が最大なのが「テックタッチ」です。
顧客数が多過ぎるためリソースやコストを考慮して、テクノロジーを活用した対応が必要になります。
テックタッチでは主にツールを活用しながら効率的な接点作りを行います。
注意したい点は、この層は解約リスクが高いので施策をしてからフィードバックすることが大切です。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
タッチモデル別施策例
カスタマーサクセスのタッチモデル別施策例を見ていきましょう。
ハイタッチ
ハイタッチでは顧客ごとに個別対応を中心に行います。
コストやリソースを集中投下することでエンゲージメントを高めていくことが必要です。
個別CS担当をアサインし、定期的なサポート・対面ミーティング・経営レイヤーへの情報共有などがあります。
ハイタッチ層はLTVが最も期待できるため緻密なアプローチをし、顧客を深く理解して自社の成長に結び付けましょう。
主な対策例は以下のようになります。
- 1対1の顧客対応
- 個別の商品やサービス導入のサポート
- 顧客の要望に合わせたカスタマイズ
- 顧客別オリジナルプラン提供
- 個別の勉強会や研修の支援
属人的な対応にならないようにするためアンケートを活用して顧客の声をサービスに活かすなど顧客密着型対応が求められます。
ロータッチ
ロータッチの施策例は顧客が求めるタイミングに合わせてフォローすることが重要になります。
個別ではなく集団対応するのがポイントです。
主な対策例は以下のようになります。
- 電話やメールなど対応
- トレーニングプログラムの設定
- ワークショップやイベントの開催
ロータッチは集団的接点作りが重要になります。
より良い顧客体験を提供できればエンゲージメントが高まるのです。
接点ができてからアンケート調査をして改善に繋げていくことがロータッチのポイントになります。
テックタッチ
テックタッチは一番顧客数が多いためテクノロジーを駆使して対応することが求められます。
顧客ごとの価値は低いのですが、このセグメントの層が解約する可能性が最も高いといえるでしょう。
主な対策例は以下のようになります。
- メールやヘルプページを活用した対応
- チャットボットの活用
- トレーニングプログラムの提供
- 動画共有
顧客数が多いためリモート対応を活用して一律対応を行うため、オンラインコミュニティを提供する手法も有効といえます。
カスタマーサクセスへの取り組み方
カスタマーサクセスへの取り組みでおさえておくべきポイントは、カスタマーサクセスの定義を十分に理解することです。
その上で、自社が顧客の成功体験のために何ができるのか考えることです。
具体的に見ていきます。
顧客の「成功」状態の定義づけをする
顧客の成功を明確にすることがカスタマーサクセスの第一歩になります。
何が顧客の成功なのか知り尽くすことです。
顧客の成功体験のために課題を見つけ出し、解決のための仮説を立てて支援していくことがカスタマーサクセスのミッションです。
カスタマーサクセスは1つの部署だけで完結することは稀であり、多くの場合他部署との連携が欠かせません。
そのためには幅広い経験・理解力・コミュニケーション能力が必要になります。
中間目標であるKPIを立案し、顧客満足度を高めて解約率を抑えることも重要です。
顧客のニーズを的確に捉え、先回りしてサポートしながらサービスの質の向上が実現できて顧客は満足するのです。
LTVによる分類を行う
サブスクリプション型ビジネスの成功要因にLTVがあります。
そして、LTVを最大化させるためには顧客層の特定・分類・行動の把握が欠かせません。
そのためには顧客層を利用頻度や利用額といった過去の取引実績に応じて分類を行います。
カスタマーサクセスではLTVを3つの層に分類し顧客の成功を最終目的であるKGIとして掲げ、そこに至るための戦略を考えましょう。
この3つに分離されたモデルが既に紹介したハイタッチ・ロータッチ・テックタッチです。
各層に適したアプローチがカスタマーサクセスに繋がります。
施策を検討する
顧客層をセグメントしたら、それぞれの層に最適なアプローチを検討します。
アプローチで重要なのは、顧客別のコミュニケーションや行動履歴を分析した顧客の動向を理解することです。
その上で自社のリソースに合った最適な配分を行います。
カスタマーサクセスの目的はチャーンレート(解約率)を下げてLTVを向上させることです。
しかし、ハイタッチに重点を置き過ぎるとロータッチやテックタッチが手薄状態になります。
カスタマーサクセスツールを活用するなどして効率の良いフォローが必要となります。
マーケティング戦略の事例はこちら
カスタマーサクセスに取り組む際の注意点
カスタマーサクセスを実施する際に注意点があります。
よくある失敗例の原因として、顧客にとっての成功という定義が十分明確になっていないことがあげられます。
また、カスタマーサクセスには組織の連携が欠かせません。
目標とプランを明確にしたら情報連携を社内で統一する必要があります。
他にも注意すべき点を説明します。
LTVの線引きは企業によって異なる
LTVの捉え方は企業によって異なります。
例えば、カスタマーサクセスで収益が上がっているようでも、コストが増えている場合は正しいLTVを導き出すことはできません。
また、既存顧客より新規顧客のウェートが高い企業もあります。
3層の区分方法もどこで線引きするかは企業の戦略によって異なるのです。
LTVの向上は、1人ひとりの顧客のリピート獲得がポイントになります。
獲得効率によってはコストが変動します。
そのため自社の戦略に合わせてそれぞれの層に対応していくのが最適といえるでしょう。
LTV以外の分類を検討した方が良い場合もある
LTVには3層に分けて個別に対応する方法があることは説明しました。
ただ、こうした分類が当てはまらない企業もあるでしょう。
その場合は、LTV以外の分類としてあげられるのは、ARR(年間経常収益)・ロイヤリティの高さなどを活用します。
ARRとは「Annual Recurring Revenue」の略です。
対象となるのは繰り返し取引するビジネスで、例えばサブスクリプション型モデルが該当します。
月単位の支払いがまさにARRです。
また、インターネット上でアプリケーションソフトを利用するSaaSも月単位の支払いになります。
一方で初期費用・追加購入費用・コンサルティング費用など突発的な費用は含めません。
どの基準で分類するか検討する際は一度全顧客をハイタッチで対応して、顧客の動向を見極めてから進めるといいでしょう。
近年注目を集めるコミュニティタッチ
カスタマーサクセスにハイタッチ・ロータッチ・テックタッチがありますが、近年4つ目の「コミュニティタッチ」が注目されています。
具体的に見ていきましょう。
カスタマーサポートのコスト削減が可能
コミュニティタッチでは、ユーザー同士がコミュニティでやり取りをします。
そこで自ら疑問を解決したり、フォローし合ったりするようになります。
コミュニティの育成ができれば、企業が動いてサポートすることも減るのでコスト削減も可能になるのです。
企業は商品やサービスに対する不満・気に入っている点などを、商品開発や企画に活かすことに集中できることになります。
口コミの効果が期待できる
コミュニティタッチでは口コミの効果による売上拡大が期待できます。
コミュニティに集まる人は商品やサービスを購入したり、利用したりしたリアルなユーザーです。
彼らのナマの声は拡散され大きな影響力を持ちます。
企業自らが発信するよりユーザーの声は説得力・信頼度があり、新規顧客獲得に繋げることもできるのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマーサクセスにタッチモデルを活用しよう
企業の規模や状況によっては全ての顧客に一律のフォローをするのは効率がいいとはいえないでしょう。
顧客に成功体験をしてもらうためには、タッチモデルを活用してLTVを施策することが不可欠です。
そこで3層に分類したタッチモデルを活用し、人的コスト・工数・費用にある程度線引きをすることをおすすめします。
ただし、自社の戦略に応じた線引きであることが大切です。
マーケティング戦略の事例はこちら
カスタマーサクセスのタッチモデルで悩んだら
顧客をセグメントして分類されたタッチモデルの特徴や施策例を解説しました。
カスタマーサクセスではLTVを軸に顧客を3つの層に分類して、タッチモデルごとに施策をするのが一般的になっています。
しかし、カスタマーサクセスでは企業が抱える課題はそれぞれ異なります。
必ずしも他の企業が実施するタッチモデルが自社に最適だということはありません。
自社に最適なタッチモデルが何なのか分からず悩んでいるならデジマクラスに問い合わせてください。
デジマクラスは戦略から施行までさまざまな支援メニューを用意して、自社に合ったものを提供できます。
高品質なカスタマーサクセスを実現するならデジマクラスです。
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まとめ
カスタマーサクセス実現にはタッチモデルが有効です。
従来の3 つとコミュニティタッチを加えた4つのタッチモデルで、顧客の活用状況をセグメントして、対応しましょう。
タッチモデルに基づいてコストを抑えながらLTVの向上を目指し、カスタマーサクセスを実現してください。