レッドオーシャンと聞くと、競争相手が多いことをイメージし、一般的には避けるべき市場と考えるのがセオリーです。
しかし、視点を変えるとこの「レッド」という意味には「加熱している」という見方もでき、需要が高い・顧客が多いなどという捉え方もできます。
あえていうと、成功して市場が獲得できれば高い収益を見込めるわけなので、レッドオーシャンでも参入を目指し続ける企業があるのです。
ここでは、レッドオーシャンで勝ち残ったサービスの実例を紹介しています。
目次
レッドオーシャンとは?
レッドオーシャンとは、一般的に競争相手が多く、競争が激しい市場のことを指します。競争が激化しているというイメージから血で赤く染まった海と表現されています。
競争が激しいという反面、参入障壁の低さ・事前に需要が確認できるなどのメリットも存在するため、製品力・アイデア次第では市場獲得が可能です。
確かにレッドオーシャンの中で生き残ることは難しいですが、需要が高い市場であるため、成功すると大きな利益の獲得が見込めます。
レッドオーシャン戦略の事例
レッドオーシャンであっても、少しのアイデアでその市場を大きく獲得できることがあるため、常にその市場動向は注目を浴びています。
参入が難しいとされている市場でも実際に後発者が参入できた例もあり、ここではレッドオーシャン市場において、成功したアイデアを5つ紹介します。
消せるボールペン
誰から見てもレッドオーションだといわざるをえないボールペン市場に風穴を開けたのがパイロットコーポレーションの「消せるボールペン」シリーズでした。
各ボールペンメーカーにおける競争の中心にあった質感・価格・ブランドなどとは異なる機能面におけるアイデアでのアプローチによって、見事に世間一般への必需品として市場を大きく勝ち取った例です。
「ボールペンで書くと消せないから緊張する」「修正ペンを使いのは面倒」といったユーザーの声に寄り添い、「ボールペンで書いても消せる」というアイデアが刺さりました。
Wii
wii発売前の任天堂は、ゲームキューブでライバルたちと市場競争をしていました。
プレイステーション3・Xbox360などが台頭し、ゲームは高機能化・リアリティ性の追求が強く求められていると考えられていました。
しかし、任天堂はあえてリアルな映像・高度な機能は除外し、その代わりに簡単な操作性を深く追求したのです。
操作が簡単であることで、子どもがいるファミリー層に強く刺さり、高機能化でリーチが薄くなっていたファミリー層の支持を得ることに成功しました。
結果、必ずしも最高品質のものだけがユーザーの需要に刺さるわけではなく、アイデア次第で市場に大きなインパクトを与えられることを証明しました
檸檬堂
日本コカ・コーラが販売する檸檬堂は、チューハイ・サワー市場で最後発ながら1年間で一定の地位を確立した大ヒット商品です。
成功の秘訣は、開発者がお酒の現場である居酒屋に積極的に足を運び、レモンチューハイの流行を肌で感じながら製品開発を行ったことだと評価されています。
「データだけに頼らない」戦略は、レモンサワー一つにバリエーションをもたらすという発想に結びつき、後発ながら流行に合わせた商品を展開し市場を獲得しました。
星野リゾート
インバウンド需要も重なり競合ひしめくホテル市場において、星野リゾートが手がけた生存戦略は、所有と経営の分離です。
海外ホテルのビジネスモデルを参考にし「ホテル所有」と「ホテル運営」を分離することで、オーナーを募り温泉旅館やリゾート施設の資金を集めることに成功しました。
運営はしたくないが、施設だけなら保有したいという意欲のある富裕層オーナーのニーズを掴み、地方を中心としたホテル市場を勝ち取りました。
BALMUDA The Toaster
日本における家電市場は、ほとんどの市場においてレッドオーシャン化しています。
その中でBALMUDA The Toasterは、機能性・デザイン性の追求だけに留まらず、美味しく食べる体験を感じてもらう宣伝で優位性を獲得しました。
このトースターで焼けば、美味しそうに焼けるというイメージが単にモノを焼く製品ではないという価値を作り上げました。
レッドオーシャン市場のメリット
レッドオーシャンは、そこにニーズがあることの証明であるため、市場開拓の時間・労力を大きく軽減できます。
先行者を上回るアイデア・製品力に長けたサービスを提供できれば、その市場規模が後押して一気に大きな売り上げが得られます。
確実に需要がある
レッドオーシャン化していることは、その市場が活性化していることの裏返しでもあります。
消費者は確かに存在しているため、アイデア・製品力によっては一定のシェア獲得・市場の拡張で利益を得られるでしょう。
また、レッドオーシャンで戦う競合たちの中で競争優位に立てた時は成功の見返りが大きいことはいうまでもありません。
商品開発に時間がかからない
一から市場を開拓する手間がないため、参入障壁は低いと考えられます。レッドオーシャンでは、すでに類似する商品が存在しているため、ゼロイチの手間は必要ありません。
他社の成功例・失敗例を参考にしながら消費者ニーズに応えるための戦略に集中できます。
売り上げを大きく伸ばせる可能性がある
レッドオーシャンになる理由は、消費者が多く市場規模が大きいため、そこに過度な競争が生まれるという原理です。
小さい市場では、その多くのシェアを獲得しなければ大きな売り上げ獲得を期待できません。しかし、レッドオーシャンのような大きな市場では、少しのシェアだけでも大きな売り上げを期待できます。
アイデア・製品力に自信がある場合は、あえてレッドオーシャンに飛び込んだ方が大きな成功を勝ち取れます。
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レッドオーシャン市場のデメリット
レッドオーシャンは、先行者有利の市場環境なので新規参入に対して、様々な妨害戦略を企ててきます。
差別化がきっちり図られていないと、ライバルたちとの熾烈な争いが予想され、生き残りが難しくなります。
価格競争に陥ってしまうと資本力が強い企業が生き残ることになるため、注意が必要です。
新規参入が難しい
メリットで述べたように大きな成功が得られる可能性が高い市場であるため、強力なライバルがひしめき合っています。
後発組が競争優位なポジションを築くための差別化戦略をとるにしても、相応のインパクトがなければ生き残っていくのは難しいのが実際です。
先行者として成功したライバルたちが競争優位性を活用して、これ以上ライバルを増やさまいと新規参入を妨害してくる可能性を考慮しなければなりません。
薄利多売になりやすい
後発者がレッドオーシャンで勝つ戦略において一般的なのが、製品力をそのままにコストカットによって競争優位を得る戦略です。
消費者にとって、価格が安いことは非常に魅力となります。
ただし、コストカットを選択すると大きな収益が見込めなくなるため、資金力の弱い企業では消耗戦で敗北してしまうケースが見られます。
レッドオーシャンで勝つための戦略
レッドオーシャンで勝つためには、有効な戦略を練らなければなりません。まずは、市場特性・ターゲット層・競合を明確に捉える必要があります。
ここでは、戦略を組み立てる上で重要なポイントを5つ紹介します。
市場を絞る
セグメンテーションを行い、市場の細分化が重要な戦略です。
市場にいる不特定多数の顧客特性をグループ分けし、自分たちのアイデア・製品力がどのような顧客に向いているのか、またどのような顧客に適していないのか分析を行います。
その中で、自分たちの強み・弱みを明確にしながら、適切な市場を絞り込んでいくのが成功への第一歩です。
ターゲットを絞る
市場絞り込みと合わせて、ターゲット層も絞り込む必要があります。
具体的なターゲットの絞り込み要件は、性別・年齢・居住地・家族構成・所得など、なるべく細かくターゲット像を明確化しましょう。
ターゲットが明確であれば、素早い収益化・広告費の抑制なども期待でき、成功確率が高まります。
競合との差別化を図る
差別化戦略において重視されるポイントは、サービス(製品)内容・顧客サービス・流通経路・ブランド力になります。
自社サービスには、どのような顧客の興味を引き付けるための差別化要素があるかしっかり見極めるのが重要です。
成熟したレッドオーシャン市場においては、他にない価値・メリットをいかに消費者に届けられるかが重要なポイントになります。
体験を売る
レッドオーシャンで戦う際は、ただサービス・製品の内容が良いことだけでは不十分であるケースがほとんどです。
ただ売るだけではなく、販売までの過程も一種の商品化させ、効果的に販売しましょう。
購入前の宣伝からアフターサポートまでを一つのパッケージとすることでサービスの幅が広がり、他社との差別化につながりやすくなります。
複数のジャンルを組み合わせる
成熟された市場において、新たな価値を提供するのに効果的な方法として、いくつかのサービス(製品)特徴を組み合わせるという手法があります。
「英会話」だけのサービスでは、差別化は受講環境・講師の質・価格に依存しがちです。
しかし、「英会話」プラス「マナー講座」のように他ジャンルを組み合わせることで、ビジネスパーソンで英会話を習得したい人がターゲットとなります。
このように組み合わせによって、強みが生まれ、ターゲットも明確化できます。
ブルーオーシャンを見つける
レッドオーシャンの中でも、ニッチな部位に競争が激化していないスポットを生み出せる可能性があるため、角度を変えて市場を見た時に思いがけない発見ができるかもしれません。
一般的に大衆向けの商品だが、実は富裕層向けの高額商品が望まれていたなど、少なからず需要が眠っています。
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ブルーオーシャンとは?
ブルーオーシャンとは、競争相手がいない・少ない市場をという意味です。
一般的に従来存在していなかった市場であることが多く、他社より早く参入しているため、競争優位性を持ってサービスが展開しやすくなっています。
また、競合が少ない環境であるため、価格競争が起こりにくいのも特徴です。
低コストで高い利益が見込めることもあるため、ビジネス界では、ブルーオーシャンを目指そうという言葉がよく聞こえてきます。
ブルーオーシャン市場のメリット
ブルーオーシャンでビジネスが展開できたのであれば、それは他者より競争優位な環境が得られたことを意味しています。
市場をコントロールしやすい立ち位置にいることが、最大のメリットです。
市場を独占できる
ブルーオーシャンは、見つけるという言葉より、作り出すという言葉の方がしっくりきます。
開拓した市場において、高価値・低価格を先行的に行えれば、二番手三番手の追随を許さず圧倒的な地位を獲得できます。
一度その市場におけるリーダーとなれれば、後発者の動向を見ながら戦略が立てられるので、圧倒的な競争優位性の獲得が可能です。
高単価で売れる
全く競争相手がいない市場であれば、提供するのが高単価であっても内容が満足できるようなものであれば売れる可能性は高いでしょう。
もちろん高単価で売れれば競合他社が参入してくる可能性も考えられますが、競争優位である間は、強気な価格設定でも成立するケースがほとんどです。
ブルーオーシャン市場のデメリット
通常、ブルーオーシャン市場は、時間をかけて形成されていきます。そもそも認知のなかった市場でビジネスを展開するため、時間・労力が必要となります。
市場によっては、後発者からも模倣される可能性が高く、油断はできません。
そもそも市場を見つけるのが困難
ブルーオーシャンはよくニッチ市場と勘違いされることがあります。ニッチ市場とは隙間市場で、市場と市場の隙間に生まれるわずかの市場を指します。
ブルーオーシャンとの違いは、既に認知のある市場か認知のない市場であるかです。
ブルーオーシャンは、あくまで世間から認知されていない市場を指しているため、見つけるのが困難です。ブルーオシャンを見つけたと思っても、ただのニッチ市場であることもあります。
模倣されるリスクがある
ブルーオーシャンとは、あくまで未開の市場でのビジネスという意味なので、技術革新など特別な事象を必ずしも必要とはしていません。つまりは、後発者に模倣されやすいというデメリットが存在します。
差別化できる特徴を有していないと、資本を持つ体力のある企業に追随されてしまうと簡単に競争優位性を失う可能性があります。
商品が認知されるまでに時間がかかる
もともと認知されていなかった市場に打って出る形になるのがブルーオーシャン戦略なので、顧客の認知に時間を要してしまう恐れがあります。
顧客の需要を喚起するためには、必要に応じて大規模イベント・広告を行わなければなりません。結果、多額の広告宣伝費を計上してしまう可能性があることを覚悟しておく必要があります。
ブルーオーシャン市場を探すためには
常日頃から顧客と向き合い、顧客の需要を分析し続けることがブルーオーシャン市場を見つける上で重要な作業です。
ビジネスにおいて、提供者側の目論みと消費者側の需要はいつもどこかが食い違っているケースがほとんどになります。
両者にとっての食い違いの解決策がブルーオーシャンとなり得る可能性があります。提供者側だけに目を向けても、消費者側だけに目を向けても新たな市場は見えてきません。
両者がWINWINになる関係を思考することがブルーオーシャン発見の糸口となります。
デジタルマーケティングを活用しよう
ブルーオーシャン戦略は、認知のない未開の市場を開拓していく戦略であるため、その認知に時間・費用を費やしてしまいます。
そんなブルーオーシャン戦略に相性が良いのがデジタルマーケティングになります。
デジタルマーケティングは、インターネットの各種デジタル媒体を活用して商品マーケティングを行い、消費者と関係構築を行う手法です。
具体的には、自社アプリ・モバイル会員クーポン・SNS広告などが中心で、認知を獲得する上で必要費用を大きく削る効果が期待できます。
また、顧客情報も手に入るため先行者利益を大きく得やすい土台が作れます。
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レッドオーシャン市場で成果を出したいなら
レッドオーシャン市場で勝ち残ることは非常に困難です。提供するサービス・商品が常に競争優位性を保っている必要があります。
常々、環境の変化を見ながら「競争優位性が保てているか?」と自問自答を繰り返し続けなければなりません。
消費者の需要は、いつでも最高のものとは限りません。その時・その場に合ったものが最も選ばれます。昨今市場は、益々ドメスティックに変化を繰り返しています。
市場リーダーであっても墜落することは珍しくないし、ベンチャー企業が大手企業よりシェアを獲得してしまうことも珍しくありません。
サービス・製品に真摯に向き合い、市場環境を注意深く観察することがレッドオーシャン市場で成果を出す答えだと考えられます。
まとめ
資本を持つ大きな企業であればレッドオーシャンに足を踏み入れることは比較的容易かもしれません。
中小企業となると費用面・戦略面・人材面などを考慮して躊躇してしまう理由も分かります。
しかし、レッドオーシャン戦略で大事なことは、自社サービス・製品そして消費者と真摯に向き合うことです。
レッドオーシャン市場の下では、実際に市場リーダーが常にリーダーであることは多くなく、常に変化する市場の需要に応え続けなければあっという間に市場から退場させられてしまいます。
レッドオーシャンでは順位の入れ替わりが常々発生している状況です。それは、後発者にとってもチャンスがあると捉えられます。
様々な戦略を練り上げ、そして何よりも大事なこととして、自社の価値と消費者の需要に目を向け続けられればレッドオーシャン市場においても成功を勝ち取れます。