CSRマーケティングとは企業が社会の一員としての責任を果たし、信頼を獲得することでファンの獲得・ブランディングを図る手法です。
環境・地域社会・人権など様々な問題があり、事業内容に沿った取り組みによって企業の継続可能性が高まります。
認知度獲得が課題ですが、ソーシャルメディアとマーケティング手法の活用で解決する手法が注目されています。
目次
CSRマーケティングの概要
CSRとは企業の社会的責任です。
企業が組織として行う活動によって社会が受ける影響に対し責任を持つことを意味します。
企業は社会の一部であり、継続して活動し続けるためには社会そのものの継続・発展に貢献する必要があるのです。
ここでいう社会とは企業活動に関係するステークホルダー全体を指します。
- 個人顧客・法人顧客
- 株主・投資家・融資契約を結んでいる金融機関
- 従業員・自社に雇用されることを希望する求職者
- パートナー企業
- 商圏内に住む地域住民
- 政府などの行政機関
CSRマーケティングとはステークホルダーへの配慮や説明責任を果たす中で信頼を獲得し、事業を継続して行えるようにすることです。
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変化を続けるCSRマーケティング
CSRの重要性はかなり早い段階で指摘されていたものの、取り組みへの流れが一気に加速したきっかけはSNSの登場です。
誰しもが情報の発信者になれるため、企業が自社にかかわる情報をコントロールすることが不可能な時代になっています。
また、価格・機能性だけで物を選ぶ時代が終わり物を買うことに対して価値観が多様化している点も見逃せません。
画一的なマーケティングが通用しなくなっている中で存続し続けるためには、まず顧客に信頼される必要があります。
そこで顧客からの信頼獲得手法として注目されているのがCSRです。
企業活動にともなう責任を果たすことで、企業のリスクマネジメントと持続可能性が高まります。
企業における社会貢献
社会全体の発展に貢献できる存在ということを示し、社会の一員として認めてもらうのがCSRの第1歩です。
つまり、どうやってステークホルダーから信頼を得るかがCSRの本質になります。
真摯な消費者対応
ユーザーに対する真摯な対応は企業の基本的な行動とステークホルダーは考えています。
<真摯なユーザー対応の具体例>
- カスタマーサポートでの誠実な対応
- 経営体制の透明性確保
- 商材提供過程の情報開示 など
ステークホルダーが当たり前と考えることを当たり前にすることが信頼獲得の第1歩です。
安心安全への取組み
企業活動によって提供される商品やサービスが安心・安全であるかはユーザーからの信頼獲得において重要な要素です。
例えば、子どもが口の中に入れても大丈夫なクレヨンは発売以来売れ続けるロングセラー商品となりました。
原材料は蜜蝋・お米・野菜など様々な素材が使われています。
何でも口に入れたがる子どもの遊び道具として家族の安心・安全を得られる商材の事例です。
環境保護活動
環境保護活動はCSRの中で最もポピュラーな取り組みの1つです。
持続可能な社会を目指すSDGs目標の1つとして、国際的にも環境への配慮を求める声が強まっています。
CSRで環境への配慮が求められる背景には利益最優先で行動した企業活動により、地域社会の維持が難しくなった苦い経験があります。
例えば日本の高度経済成長期における公害被害などがわかりやすい事例として挙げられるでしょう。
利益追求のための活動に終始してしまうと企業がターゲットとする社会の維持そのものが難しくなってしまいます。
そこで国際的に統一された基準で環境問題に配慮するCSRが各企業に求められているのです。
職場環境従業員支援
従業員が働く環境を整備し、安心して働けるように支援するのもCSRとして注目すべき取り組みです。
特に認知度が高まっている取り組みとしてフェアトレードを挙げることができます。
生産者が低賃金で労働力を搾取されていないことが保証された商材に与えられる認証で、コーヒーやカカオ豆などでよく見かけます。
生産者が健全な形で労働の対価を得られれば、その分だけ健康への配慮や労働環境の整備に割くリソースが生まれるという考え方です。
多くのユーザーに企業は透明性を確保すべきという強い意識があるからです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CSRマーケティングの手法
CSRマーケティングのアプローチとして環境問題解決への取り組み・ボランティア活動支援・地域社会貢献はポピュラーです。
事業内容に沿ったアプローチを行うことで、企業が社会を構成する一部としての役割を果たします。
地球環境への配慮
有名なのが秋田県の漁業者が鳥海山の植樹活動を行っている事例です。
鳥海山は豊富な水と栄養を貯蔵する天然のダムの役割を果たしています。
川を経て海に流れ込む栄養分が近海の生態系を支えているのです。
そこで地元漁業者による鳥海山への植樹活動、それも江戸時代以前に原生林を構成していたブナの木の植樹活動が行われています。
地元漁業者にとって鳥海山の健全な環境維持は自分たちの漁場を守ることとイコールでもあるからです。
地元水産業の維持を目的として環境保護に取り組むCSR事例です。
ボランティア活動の支援
CSRはボランティアではありません。
しかし、様々なボランティア活動への支援は企業に求められるCSRへの取り組みの1つです。
<電機メーカーパナソニック株式会社の事例>
- ボランティア活動を目的とした休職・休暇制度
- ボランティア活動に対する社内表彰制度
- NPO団体が行う活動へのボランティア参加
ボランティア活動への意欲・興味はあるものの、きっかけやタイミングがなく未経験という人は少なくありません。
そこで、パナソニック株式会社は社内の福利・厚生制度としてボランティア活動に取り組みやすい環境整備を行っています。
ボランティア活動を通してコミュニケーション機会がない職種間交流や団体の活動からよい刺激を受ける社員も増えています。
結果的に社員の課題解決力向上やチームビルディングの強化、社員の自己効力感向上にも役立っている事例です。
地域社会への貢献
CSRの原則上、企業は社会の一部です。
つまり、その企業が商圏とする地域社会に貢献する存在として責任を果たすことが求められています。
例えば、日本IBMでは現場で活躍するエンジニアを中学校・高校へ講師として派遣しています。
主な授業内容は数学・ビッグデータ・IoT・プログラミングなど自社事業に関するプログラムです。
数学的・論理的思考は教育業界でも「生きる力」として注目されていますが、十分に対応できる人材確保が悩ましいのが現状です。
日本IBMはそうした地域社会の課題を自社の人財というリソースで補うことで社会の一員としての役割を果たしています。
あわせて最先端のテクノロジーに興味を持ってもらい、自社事業に関する理解のすそ野を拡げることに成功している事例です。
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移り変わる発信方法
CSRに取り組む企業の課題として「取り組みを知ってもらえない」「興味を持ってもらえない」ことが挙げられます。
そのため知ってもらう発信方法に注目・移行する企業が増えています。
ソーシャルメディア
CSRで特に重要なのがユーザーをはじめとしたステークホルダーに対する説明責任です。
素晴らしい取り組みをしていても、それを認知・理解してもらわなければ企業としての責任を果たしているとはいえません。
そのため、CSRマーケティングではステークホルダーとの積極的なコミュニケーションが求められます。
そこで、発信方法として注目されているのがソーシャルメディアです。
ソーシャルメディアの特徴は何といっても情報拡散力。
話題性のあるCSRへの取り組みをソーシャルメディアで発信することで商材・企業の認知度向上につながります。
顧客視点で発信
自社の取り組みを中々認知してもらえない課題に対し、顧客視点で発信するマーケティング手法が注目されています。
- 誰をターゲットにして伝えるか
- どのチャネル・ツールを活用するか
- それぞれのチャネル・ツールにどの程度のコストをかけるか
- 「認知」してもらうための手法は?
- コーポレートサイトなどへの動線はどのように構築するか
- 効果検証の手法・頻度
- 文章やデザイン など
ステークホルダーへの伝え方を工夫することで、認知してもらいやすくなる取り組みです。
そのため、どうやって伝えるか、どの発信方法を利用するかが鍵になります。
CSRマーケティングを利益につなげるために
CSRはリスクマネジメントというネガティブな動機だけでなく新しいマーケティング手法としても注目されています。
中長期的視点
CSRマーケティングは短期的な取り組みで結果が出るものではありません。
スタートアップから中長期的な取り組みになることを認識したうえで取り組む必要があります。
そもそもCSRマーケティングの目的は組織としての責任を果たし企業価値を高めることです。
ステークホルダーに対する真摯な対応がユーザーから選ばれる要素となり顧客との接触機会増加を期待できるようになります。
つまりCSRマーケティングの軸はステークホルダーからの信頼であり、一朝一夕で得られるものではないのです。
担当者の熱意
CSRマーケティングは戦略的な手法ももちろん大事ですが、運用する担当者の本気度も欠かせない要素です。
例えば、管理者・経営者を説得するシーンを想定してみましょう。
CSRマーケティングは社内のリソースを利用しているため管理者・経営者は途中経過報告・成果報告を求めます。
その際に担当者の熱意が、今後のプロジェクト存続や割いてもらえるリソースを左右することも少なくありません。
ソーシャルグッドの応用
ソーシャルグッドとは社会にポジティブな衝撃を与えることです。
企業活動そのものが社会貢献や社会課題の解決につながることを意味し、CSRが進化した新しい概念として注目されています。
<ソーシャルグッド事例:京都府美山町>
京都府美山町は豊かな自然が広がる農村で、昔ながらのかやぶき屋根の古民家が多いところです。
しかし過疎化により空き家化していた古民家も多く、その問題を行政主導で解決するプロジェクトがスタートしました。
そこで行われたのがサテライトオフィスを探しているIT企業などを誘致し入居してもらう解決策です。
利用している企業からの貢献もあり、地域の様子や美しい風景が企業のソーシャルメディアチャネルを通じて発信されています。
企業にとっては地域のブランディングや観光客誘致につながる情報提供などの貢献ができ、Win-Winの関係構築につながっています。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
CRMに取り組む
CRM(Cause related marketing)とはコーズ・リレーテッド・マーケティングと読みます。
CSRや寄付などの社会奉仕プロジェクトと企業名やサービス名を関連づけることでCSRマーケティング効果の向上を狙う手法です。
売り上げの一部を寄付
売り上げの一部を寄付する手法の取り組みで有名なのが、国境なき医師団の事例です。
スペインのパートナー企業と協力して薬局でキャンディーを販売するプロジェクトを行いました。
キャンディーの価格は日本円に換算して130円程度。そのうち80%が国境なき医師団の活動資金となる仕組みです。
この取り組みが成功した要因は下記が考えられます。
- 薬局という健康がテーマとなる場所で販売された
- 多くの著名人から賛同が得られ、人気スポーツ選手などが無償でプロモーション活動に協力してくれた
- 活動費用の使い道をすべてネット上で公開し、健全な団体として信頼獲得できた
発売から3か月で約1億円の寄付が集まり大成功をおさめた事例です。
森林維持活動
CRMの取り組みとして森林維持活動は基本的なものです。特に積極的な取り組みで業界をリードしているのが王子製紙。
王子製紙の事業上、どうしても森林の消費が必要です。
そこで自社森林を保有し、適切な森林管理・植樹活動のもと原料を確保しています。
現在では「王子の森」として20万ha弱の規模に成長したビッグプロジェクトです。
積極的な森林の保護・維持・管理に取り組むことで求められている役割を果たし、自社事業の継続にも貢献する取り組みです。
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利益あるCSRマーケティングに取り組むには
CSRがよく誤解されるのが、CSRそのものはボランティア活動ではないということ。
そもそもボランティアは無償の社会貢献活動であり、義務や強制ではなく自発的に行われるものです。
CSRとは企業の活動にともなう責任を取ること、企業として果たすべき義務を意味するためそもそもの意味がまったく違います。
そのためトップである社長から末端の新入社員まで、CSRの意味を正しく理解して取り組む必要があります。
意味を正しく理解しないままの取り組みはやるべきことをやっていない企業イメージの定着リスクが懸念点です。
まとめ
積極的にCSRに取り組んでいるものの中々マーケティングにつながらない、という課題を抱えている企業も多いです。
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