近年ではさまざまなテクノロジーの進化によって目まぐるしく社会環境は変化しています。
また、自然環境の変化により天災の影響などが経済に与える影響も年々大きくなっている状況です。
このような社会の変化を予測しづらい状況を示す言葉として「VUCA」というキーワードがあります。
今回はこのVUCAの時代に対応する方法や必要となる思考法を解説していきましょう。
目次
VUCA(ブーカ)の概要
VUCAは「Volatility」「Uncertainty」「Complexity」「Ambiguity」の頭文字を取った不確実な社会情勢を表す言葉です。
それぞれの用語の意味について解説していきましょう。
その1:Volatility(変動性)
Volatilityは変動性を表す言葉で、移り変わりの激しい社会情勢を示しています。
IT技術の進化により多くの情報を集められるようになったことで流行や顧客ニーズの変遷は一層速くなりました。
社会に流通し誰もが知るような状態になった頃には、すでに新しい製品が注目されているということも珍しくありません。
時代の流れが年々速くなっているため、新しいビジネスモデルを確立させたとしても安心できない状況となっています。
その2:Uncertainty(不確実性)
Uncertaintyは不確実性を示す言葉で、今後の自然環境や社会情勢などで取り巻く環境がどう変化するか分からないことを表します。
近年ではSDGsという言葉も生まれ、企業単位でも自然環境を守る積極的な取り組みが行われるようになりました。
しかし、温暖化は年々進み異常気象と呼ばれる現象が毎年起こり大雨や記録的な真夏日の連続などが起こっています。
また、少子高齢化などの社会全体の変化や国によっては対外諸国との国交問題なども不確実性の要因の1つとなるでしょう。
その3:Complexity(複雑性)
Complexityは複雑性を表す言葉で、さまざまな要素が絡み合うことで物事が複雑になる状態を意味しています。
例えば、キャッシュレス化は全世界的に進められていますが日本においてはあまり進んでいません。
理由としては、必要となる機材コストの負担が大きいことや現金取引の意識を変えるのが難しいことなどがあげられます。
1つの問題をクリアしても、また別の問題が生じており同時に解決することが難しい状況は経済でもよく生まれているのです。
その4:Ambiguity(曖昧性)
Ambiguityは曖昧性を意味する言葉で、問題に対しての絶対的な解決策が見つけられない状態を指しています。
例えば、環境問題を解決するための絶対的に正しい方法というのはいまだに見つかっていません。
大気汚染の原因の1つである工場からの排ガスを無くすため生産を抑止してしまうと、生活に必要な物資が足りなくなります。
必ずしも正しい解答が分からない状態でもいろいろな判断が求められているのです。
VUCA時代に必要なスキル
このように不確実な情報が多く未来を見据えることが難しい環境でも、さまざまな判断を行わなければなりません。
VUCA時代で必要となるスキルについて解説していきます。
テクノロジーについて理解と情報収集力があること
環境や経済の変化は近年急速に変化するようになりました。
そうした時代の変化に対応するためには、まずはしっかりと情報を集められなければなりません。
ひと昔前までは、時事問題などは新聞やテレビなどから流れるニュースを受け身の状態で得るしかありませんでした。
しかし、IT技術が進化した現在ではスマホやパソコンを使って自分で詳しい内容を簡単に調べられるようになっています。
そのため、いかに新しい情報についてアンテナを張りテクノロジーについての知識を持っているかということが重要です。
不確実なことが多いからこそ、確かな情報を少しでも集める能力が求められています。
自らの頭で考える力があること
必要となる情報を収集した上で、その情報をもとに建設的に物事を考えられる思考力も重要です。
情報を集めるだけであれば、極端にいってしまえば誰でも調べられるツールさえあれば集めることができるでしょう。
しかし、その情報をもとに決断までに至るには論理的思考力が求められます。
この方法があるならば物事はこの方向に進んでいくはずだ、というように順序立てて先を見据える力も重要でしょう。
ポータブルスキルを持っていること
ポータブルスキルとは持ち運び可能なスキルを意味します。
これは特定の業種などに限定されない汎用的なスキルであり、応用力とも言い換えることができるでしょう。
難関な国家資格を持っていても、その資格に関連する職種以外ではまったく対応できないということもあります。
これまでに挙げた情報収集能力や論理的思考力なども活用し、どんな場面でも力を発揮できる人材が求められるのです。
・情報をもとに建設的に物事を考える思考力
・特定の業種に限定されないポータブルスキル
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VUCAが注目される背景
では、どうしてVUCAが注目されてきているのでしょうか。
1つはテクノロジーの急速な進化が挙げられます。
IT技術が飛躍的に成長したため、ここ10年ほどで人々の暮らしは大きく様変わりしました。
それまで人の手で行われていたことが機械によって行われる場面が非常に多くなり便利になっています。
さらにAIと呼ばれる人工知能の発達により、機械が人間のように自分で学習し進化を遂げる時代になったのです。
これによりあと数十年もすれば、人工知能は人間の思考を凌駕するともいわれています。
2つ目は社会を取りまく環境の変化です。
これまでは、多くの国であらゆるものを開発し物を作り出すことに注力していました。
例えば日本の高度経済成長期がそれにあたり、さまざまな物を作り出すことで戦後の日本の復興を支えたのです。
しかし、開発が進み物が飽和する状態になった近年では違った視点を持つことが求められています。
文明の進化の弊害ともいえる環境問題について、国や学会だけでなく企業や個人のレベルで真剣に考える必要もあるでしょう。
他にも日本では少子高齢化が進んでおり、人材難の状況がどの業界でも深刻になってきています。
こうした国家や世界の単位で起きている大きな問題も、今後は企業の中でも考えなければならない時代になっているのです。
・文明の進化の弊害ともいえる環境問題を企業レベルで考えなければならない状況となった
VUCA時代に対応するビジネスパーソンになるには
VUCA時代に対応するためにはどういった能力を身に付ければ良いのでしょうか。
求められる具体的なスキル3つについて解説していきます。
ビジョンを明確に持つこと
まずは、進むべき方向性に一貫性があるようにしなければなりません。
特に企業やプロジェクトのリーダーの役割を担う人にとっては、今後のビジョンを持っておくことは特に重要です。
部下やチームが行う仕事が今後どういった事につながり、次は何を行うのか事前に考えておかなければなりません。
ビジョンの無いままに行き当たりばったりで進んでしまうと、計画が頓挫してしまったり不満が生まれたりしてしまいます。
リーダーは自分が行う目の前の仕事だけでなく、常に次の一手を考えることに注力しなければならないのです。
情報を収集し、受け入れること
先にも述べた通り、時代は急速に変化しておりそれに伴う情報も日々変わっています。
そのため、さまざまな情報を受け入れるキャパシティを持たなければなりません。
よく利用する新聞やサイトなどがあったとしても、収集する情報源が偏ると最新の情報を得られない可能性もあります。
情報を集める際にはできるだけ幅広いソースから仕入れる工夫も必要となるのです。
そして、得られた情報が自分の今まで持っていた知識を覆すようなことであっても冷静に判断する能力も必要でしょう。
どんなに多くの実体験から得た自信のある知識でも、新しい技術によってさらに効率の良い別の方法が見つかることもあります。
自身の固定概念に捉われず柔軟に情報を整理する力が必要となるでしょう。
選択と集中すること
経営において資金や人材などの限られた経営資源を使い方が重要です。
その上で「選択と集中」という言葉が使われます。
企業が行う事業に資源を投入する時には、すべての事業にまんべんなく投入するわけにはいきません。
事業ごとに利益の額が変わったり、必要な人員数が違ったりするのでどこに投入するか選ばなければならないのです。
さらに、事業ごとに資源をどれだけ集中させるかも考えなければなりません。
それぞれの判断を正しく行うには、その根拠となる情報や仮説を立てる思考能力などが必要です。
VUCA時代の思考法
VUCA時代の思考方法として「OODAループ」が注目されています。
このOODAループの内容について解説していきましょう。
「OODAループ」が注目される背景
OODAは「Observe(観察する)」「Orient(状況を理解する)」「Decide(決める)」「Act(動く)」の頭文字を取っています。
これは業務改善の手法の1つであり、同じ改善手法であるPDCAサイクルに代わる新しい手法として注目されているのです。
PDCAの場合「Plan(計画する)」「Do(実行する)」から始まるのが、OODAの場合は観察と状況理解から始まっています。
この部分が大きな違いで、VUCA時代では何が起こるか分からない状況であるため計画通りに進めることが難しいのです。
そのためあらかじめプランを立て型にはめて考えるよりも、状況を見てその場で判断する柔軟さが求められるようになりました。
この状況判断能力と柔軟さがVUCA時代ではキーワードとなっています。
「OODA」ループ4つのステップ
OODAそれぞれの4つの要素について具体的にご紹介します。
- Observe
- Orient
- Decide
- Act
まず「Observe(観察する)」は市場動向や顧客ニーズなどの外部環境をよく観察することです。
最初に行うのは自分の考えや計画などを立てるよりも、とにかく周りの情報を集めることに注力します。
次に「Orient(状況を理解する)」で何が起こっているのかを分析していくことが必要です。
集めた情報をもとに市場の動向や顧客のニーズがどこにあるかを考えていきます。
分析後は「Decide(決める)」のフェーズで今後の行動計画や具体的な方針を決めるのです。
PDCAでは一番初めに行われていた計画は、それまでの情報の分析をもとにこの段階で行われます。
最後は「Act(実行)」です。
これまでの情報をもとに立てた計画を実際に行ってみて、問題があればまた最初のObserveに戻り繰り返していきます。
PDCAの場合には最初に仮説となる計画を立ててから行動を起こすこともあり、比較的時間がかかるものでした。
現場の情報をもとに柔軟に対応させていくOODAのほうがスピード感を持って改善が進められるとされ注目されています。
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「VUCA」の時代に必要なマネジメント、リーダーシップ
VUCAの時代でマネジメントやリーダーシップを発揮するのに必要となるスキルについて解説していきます。
ビジョンを明確に設定すること
VUCA時代においてマネジメントを行うには、ビジョンを明確に設定することが重要です。
将来を見通すことが難しく計画通りに物事を進めることが困難であるからこそ、1つの方向性を定めておかなければなりません。
さまざまな変化が起きた時にも、あらかじめ決めておいた方向性に従って柔軟に対応する力が求められます。
柔軟に対応するからといって、その場しのぎの対応を繰り返していると本来の目的を達成させることが難しくなるでしょう。
対応に迷った時に基準となる行動指針を定めて、変化に対応しながら目的達成に向けて進めるようなビジョンの設定を行います。
新たな情報を積極的にインプットすること
VUCA時代においてはテクノロジーの進化によって、日々ビジネスの環境が変化しているといっても過言ではありません。
その流れについていくためには、常に新しい情報を積極的にインプットしていく姿勢が重要でしょう。
時には自社の事業に関する内容以外の情報についても目を向けることも必要です。
見識を広げることで物事を多角的な視野でとらえることができるようになり、自身の仕事の効率化につながっていきます。
情報収集とステレオタイプを排除すること
情報収集を行う際には、さまざまなツールを使って偏りのない情報を集めることも重要となります。
インターネットからの情報だけに頼るのではなく有識者から直接話を聞くことなども効果的でしょう。
さまざまなソースから情報を集めることで、同じ事柄でも違った見方ができるようになります。
メンバーに対する動機付けすること
これからの時代は多様性が求められており、従来の画一的な指導ではメンバーのスキルを十分に引き出せない可能性があります。
メンバーそれぞれの特徴や長所などを把握して、個別に動機付けを行うことが重要です。
やり方を統一してすべてのメンバーに落とし込む従来の方法のほうがマネジメントを行う側は簡単に伝えられるでしょう。
しかし、それではメンバーの個性を活かしきれず本来の実力を引き出すことができません。
時間がかかってもメンバーの特性を理解して、それぞれに動機付けを行う方法のほうが結果的には企業にとってプラスに働きます。
決断力と行動力を意識すること
市場の変化に対応していくには、決断力と行動力も求められます。
これまでのPDCAの場合であれば綿密に計画を立ててから行動に移していました。
しかし、変化の流れが速くなっている状況下では計画を立てている間に、また状況が変化してしまう可能性もあるのです。
そのため、状況を観察したうえで素早く決断し行動に移せる実行力が必要となります。
変化の中で決断しなければならないので、必ずしも正しい決断ができるとは限りません。
それでも決断を行う実行力が重要であり、行動できなければ良し悪しの判断をつけることすらできないのです。
VUCA時代に適応できる人材育成
VUCA時代では将来の予測が非常に困難となるため、不測の事態に対応できる人材を育成していく必要があります。
まずは市場動向や顧客のニーズを冷静に判断していくことが重要です。
それまでの固定概念にとらわれず、新しい知識を積極的に取り入れた自由な発想を奨励していきましょう。
そしてさまざまな事象に対応できるよう、いろいろな分野の専門的知識を備えた人材を育成することも重要です。
IT技術を例に挙げると、一定以上のレベルでは高度な専門知識を使わなければ処理することができません。
社員の資格取得をサポートすることなどで、企業全体で専門知識を持つ人材を増やしていくことが必要でしょう。
・さまざまな分野の専門知識を持つ人材を多く育成する
従業員個々にどのようなスキルが求められる?
VUCAの時代に対応していくには、企業の取り組みだけでなく働く従業員の意識も変えていく必要があります。
これまでの年功序列の制度はなくなり、実力や実績こそが重要視される時代です。
一流企業に入社すれば将来安泰というわけではなくなり、従業員も社会の変化に対応するため緊張感を持つ必要があります。
具体的には情報について敏感になる必要があり、常に知識をアップデートしていく意識が必要でしょう。
また仕事の進め方なども過去の成功事例に執着することなく、より効率の良い新しい手法を見つける探求心も求められます。
ビジネス環境は常に変化し続けている、ということを念頭において仕事をすすめる意識が重要となるでしょう。
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VUCAの時代で悩んだら
VUCAの時代では不確定要素が多く、市場の流れも速いため不安も多くあると思います。
情報についても常に敏感である必要があり、情報ソースも幅広く仕入れなければなりません。
より多くの情報を求める場合や、市場の変化について悩んだらデジマクラスにご相談ください。
デジマクラスでは市場動向や最新の顧客ニーズについての情報を豊富に持っており、役立つ情報やノウハウを提供できます。
個人で問題を解決させるには、多くの時間がかかり集められる情報にも限りがあることのほうが多いでしょう。
デジマクラスでは幅広い業界に精通しているため、多角的な視点で問題の解決へと導くサポートをしています。
まとめ
近年ではテクノロジーが進化したことで、さまざまな業界で優れた技術が生まれています。
しかし、進化のスピードが速く未来の予測が難しくなっているため変化に対応する柔軟な思考力も求められるようになりました。
仕事を進める上でもこれまでの固定概念に頼らず、常に新しい情報をアップデートし続けるという意識の改革も求められています。
業務改善の手法でも計画を主体としたPDCAの考え方から、よりスピーディーな対応を行うOODAループへと変化しているのです。
急速に流れる市場の変化を常に掴み続けるため情報を集めるのは難しいことでしょう。
情報量などで不安があればプロのコンサルティングに相談することがおすすめです。
多くの情報を集め、先の見えない不確定要素の多い状況下でも明確なビジョンを持って乗り越えていきましょう。