ラテラルマーケティングは特に成熟した市場において効果的といわれるマーケティング手法のひとつです。
この記事では、ラテラルマーケティングの特徴や基本的な進め方などについて詳しく解説していきます。
「従来通りのマーケティングで効果が感じられない」とお悩みの方は、ぜひチェックしてください。
目次
ラテラルマーケティングの概要
ラテラルマーケティングはひと言でいうと、従来と逆の発想で商品やサービスを考える手法です。
ラテラルとは「水平」という意味を持っており、ラテラルマーケティングの特徴は水平思考にあります。
従来のマーケティングは市場を細かく分析し縦に掘り下げる事で商品やサービスを生み出してきました。
こうした従来の手法はバーティカル(垂直型)マーケティングと呼ばれるものです。
これに対しラテラルマーケティングは既存マーケットにこだわらずに、アイデアを考えていきます。
特にマーケットの成熟が進んだ段階においては、このラテラルマーケティングを取り入れる事が重要です。
今回はラテラルシンキングと他の思考方法との関係性も含めて、ラテラルマーケティングについて分かりやすく解説していきます。
ぜひラテラルマーケティングの理解を深めるための参考にしてください。
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ラテラルシンキングの特徴
ラテラルマーケティングの前提にあるのが、ラテラルシンキングです。
ここでは、この思考法の特徴をロジカルシンキングとの関係性とあわせて解説していきます。
水平方向に発想を広げる
ラテラルシンキングとは、既存の常識や固定観念にとらわれずに課題解決を図る思考法です。
日本語で水平思考と訳される事もあります。
ラテラルシンキングは多面的な見方や自由な発想によって、水平方向へ発想を広げていく事が特徴です。
ビジネスにおいてはラテラルシンキングがユニークな商品・サービス誕生のきっかけになる事もあります。
ロジカルシンキングとの関係性
ビジネスで重視される思考法として、よく知られているのがロジカルシンキングではないでしょうか。
ロジカルシンキングは課題解決に向けて、論理的に1つの結論に到達する思考法です。
そのためロジカルシンキングは複雑な情報を整理したり合理的な問題解決をしたりする場合に適した思考法になります。
一方でラテラルシンキングは非論理的であり、多面的な視点から自由にアイデアを導き出す思考法です。
そのためラテラルシンキングは、今までになかったアイデアを出す時に適しているといえます。
当然ですが、2つの思考法のどちらかが優れているという事ではありません。
ロジカルシンキングとラテラルシンキングは互いに補い合う関係性にあるといえるのです。
バーティカルマーケティングとの関係性
ここでは、バーティカルマーケティングとラテラルマーケティングの関係性を見ていきます。
両者は市場やターゲットとなる顧客を異なる視点から捉えるマーケティング手法です。
バーティカルマーケティングは市場を細分化する事で、ターゲットとなる顧客を創り出します。
つまり、既存の市場を深く掘り下げ細かく分類して商品やサービスを提供するのに合う手法なのです。
しかしバーティカル・マーケティングのみでは市場は広がっていかないため、いつかは限界が訪れます。
バーティカルマーケティングで限界を迎えた際に、活用されるのがラテラルマーケティングです。
ラテラルマーケティングは、固定観念にとらわれずに自由な発想を用いてターゲット顧客や市場を発見します。
既存市場に固執することなく、新しい市場や顧客を創り出す事が可能です。
この2つのマーケティング手法は相互に補い合う関係にあり、双方を活用する事が効果的な市場開拓に繋がります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
STPマーケティングとの関係は?
ここで詳しく解説するのがSTPマーケティングとラテラルマーケティングの関係性についてです。
STPマーケティングという手法の特徴やラテラルマーケティングとの関わりを見ていきましょう。
STPマーケティングの特徴
STPマーケティングの「STP」とは、以下の頭文字をとったものです。
- Segmentation(市場のグループ化)
- Targeting(参入するグループを決める)
- Positioning(ポジションを確立する)
STPマーケティングでは、市場や顧客層を細かく切り分けてターゲットを絞り込みます。
ターゲット層のニーズをきめ細かく明確化したうえで商品やサービスを投入するため、高い訴求力を実現する事が可能です。
STPマーケティングの弱点を補うラテラルマーケティング
STPマーケティングでは、ターゲット層となる顧客を絞り込む事になります。
そのため、市場そのものの規模を大きくするのが難しいというポイントが弱点です。
つまり市場規模が小さく、利益を確保する難易度が上がる事も考えられます。
こうしたSTPマーケティングの弱点を補うためにラテラルマーケティングを活用する事が可能です。
ラテラルマーケティングの活用により、既存市場にとらわれず、新たな市場を導き出せるのです。
STPマーケティングで行き詰まってしまった時に、ラテラルマーケティングを試してみる価値は充分あるといえるでしょう。
ラテラルマーケティングの基本の3ステップ
ラテラルマーケティングは基本的に次の3つのステップに基づいて実施される手法です。
ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
ぜひラテラルマーケティングの基本的な流れを把握して、自社のマーケティングに活かしてください。
フォーカスの選択
何について考えるかというラテラルマーケティングの対象を選択するステップです。
フォーカスされる対象としては、主に「市場」「顧客」「商品・サービス」などが挙げられます。
またフォーカスした対象について、その特性を改めて見直す場合も多いです。
その際は一般的な使い方や目的・機能といった常識を捨て去ってゼロベースで考える事が求められます。
「この商品は○○に使う」という固定観念をなくし「可能な価値提供は何か」といった発想が必要です。
ギャップの検討
ラテラルマーケティングの肝ともいえるのが、この「ギャップを検討する」ステップになります。
ギャップとは商品やサービスに意外性を与える事といいかえられるかもしれません。
1つ目のステップでフォーカスした対象について、多面的にギャップを検討していきます。
この段階では論理性や実現可能性はあまり考慮せずにアイデアを出す事がポイントです。
たとえば商品の使い道を強調したり、ニーズや価格を度外視してみたりといった方法があります。
ギャップを埋めるアイデアの検討
2つ目のステップで検討したギャップを実現可能な形に落とし込んでいくステップです。
市場の状況やコストなどからアイデアを分析し、ビジネスとして成立しているかを検討していきます。
一例ですが、ドライブシミュレーターが誕生したきっかけもラテラルマーケティングです。
クルマは移動するものという目的をいったん考えずにアイデアを出した結果、生まれたといわれています。
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ギャップを生み出すための考え方
ラテラルマーケティングの基本的なステップでは、自由な発想でギャップを生み出す事がポイントです。
しかし、自由にといわれても「うまくできない」という事も多いのではないでしょうか。
慣れないうちはある程度の枠組みやフレームワークを使った方がアイデアが浮かぶケースもよくあります。
ここでご紹介する質問項目やチェックリストは、ギャップを生み出すためにおすすめのものです。
ただし質問項目にとらわれ過ぎる事のないようご注意ください。
基本的な質問項目
ラテラルマーケティングのアイデア出しで、しばしば使われる6つの質問項目があります。
- 代わりになるものはないか(代用)
- 別のものと結び付けられないか(結合)
- 入れ替えたり逆にする事は可能か(逆転)
- 除いてもよい部分はないか(除去)
- さらにアピールできる機能はあるか(強調)
- 順番を変えられないか(並び替え)
多面的に考えられているか不安な時は、この質問項目に沿ってチェックしてみるのもひとつの方法です。
「オズボーンのチェックリスト」も活用できる
上記の基本的な質問項目の他に「オズボーンのチェックリスト」も活用できます。
オズボーンのチェックリストとは、ブレストの産みの親であるオズボーン氏により考案された9つの発想の切り口のリストです。
- 転用:他の使い道はないか?
- 応用:別の用途に使えないか?
- 変更:機能や形を変えられないか?
- 拡大:大きくしたり重くしたりできるか?
- 縮小:小さくしたり軽くしたりできるか?
- 代用:他に代用できる道はないか?
- 再利用:形や配置を変えて再利用可能か?
- 逆転:上下左右や役割を入れ替えられるか?
- 結合:結び付けたり組み合わせたりできないか?
基本的な質問項目とともに活用する事で、ラテラルマーケティングに必要なギャップの検討に役立てる事ができます。
ラテラルシンキングを身につける方法
ビジネスパーソンとして、ロジカルシンキングと同様にラテラルシンキングを身に付ける事も大切になってきました。
ここではラテラルシンキングの身に付け方を解説します。
こうした思考法という概念はすぐに簡単に身に付けられるものではありません。
以下にご紹介する視点や習慣を生活に取り入れて、自分なりに使えるように意識していきましょう。
複数の視点で考える
まず取り組んでいただきたいのが複数の視点から考えてみる事です。
ラテラルシンキングのポイントは固定観念や常識にとらわれずに考える事にあります。
自分だけの考え方ではこれまでの経験や固定観念に縛られる傾向が出やすいのです。
また人それぞれの思考のクセがあり、多面的な見方をするために意識する必要があります。
例えば、自分とはまったく逆の立場の人になりきってアイデアを考えてみるのもひとつのやり方です。
自分とは異なる考え方の人を観察したり真似たりして、様々な思考パターンを見るのも良いでしょう。
自分の思考パターンを変える
ラテラルシンキングを身に付けるうえで、自分の思考パターンを明確に把握する事も重要です。
「自分は○○な方向に思考しがちだ」というようなパターンを知れば、異なる視点も気付きやすくなります。
自分自身が持っている「思考パターン」を認識したうえで、思考パターンをあえて変えてみましょう。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ラテラルマーケティングの事例
ラテラルマーケティングの事例はたくさんありますが、ここでは2つの事例をご紹介していきます。
ここまでお伝えしてきた事とあわせて、事例をチェックする事でラテラルマーケティングへの理解を深めてください。
事例1:調味料におけるラテラルマーケティング
食品業界でラテラルマーケティングを成功させたのが「食べるラー油」です。
食べた事がある人も多いのではないでしょうか。
「食べるラー油」は様々な種類が市場に存在しており、多くの消費者が知っている商品です。
単なる調味料に過ぎなかったラー油を、おかずとして捉え直した事でこの商品が誕生しました。
調味料という固定観念を取り払い、有効なラテラルマーケティングを行った代表例といえるでしょう。
事例2:ホテルにおけるラテラルマーケティング
ホテル業界でラテラルマーケティングを成功させた代表例が、シンガポール「マリーナベイサンズ」です。
大きな船を乗せた外観が非常に印象的で、観光スポットとして旅行客の人気を集めています。
観光地のホテルとして豪華さや機能面以外にも目を向け、外観の意外性に着目したのです。
こうした点をみると、効果的にラテラルシンキングを活用しているといえます。
ラテラルマーケティングの導入で困った時は?
自社の商品やサービスが市場で生き残っていくためには、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。
ラテラルシンキングを活用したマーケティングで、新たな市場開拓を考える企業は少なくありません。
しかし、自社内のみでは行き詰まってしまったり、効果が充分に得られなかったりして悩む担当者が多いのです。
ラテラルマーケティングの導入をスムーズに進めるためには、社外のプロを活用する事をおすすめします。
デジマクラスでは、最新のマーケティング戦略に精通したプロのコンサルティングの提供が可能です。
貴社の状況を丁寧にヒアリングし、オーダーメイドの戦略を立案いたします。
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まとめ
今回はラテラルマーケティングの特徴について解説してきました。
バーティカルマーケティングと自由な発想で市場を広げるラテラルマーケティングは補完関係にあります。
またビジネスにおいては、ロジカルシンキングとラテラルシンキングのどちらも大切です。
互いに得意とする局面が異なるため、上記のマーケティング戦略や思考法をうまく組み合わせる事が必要となります。
市場を拡大し新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけともなるのがラテラルマーケティングです。
また今回ご紹介した質問項目なども意識し、ラテラルシンキングを習慣化する事もおすすめします。
ぜひ本記事の内容をマーケティング戦略のヒントとなりましたらうれしいです。