既存顧客へのアプローチに力を入れたいと思っている企業は多いのではないでしょうか。
そこで必要になるのが、カスタマーマーケティングです。
しかし、知ってはいるもののカスタマーマーケティングの重要性や手法を詳しく知らないという人もいるでしょう。
今回は、そんなカスタマーマーケティングについてカスタマーサクセスとの関連を含めてご紹介します。
目次
カスタマーマーケティングの概要
既存顧客をターゲットに行われるマーケティングのことをカスタマーマーケティングといいます。
まずは、カスタマーマーケティングがどのようなものなのか確認していきましょう。
従来のマーケティングとカスタマーマーケティングの違いは、「目的」にあります。
- 従来のマーケティング:新規顧客の獲得
- カスタマーマーケティング:既存顧客のサクセス
従来のマーケティングは、新規顧客の獲得を目指して潜在顧客・見込み顧客にアプローチをしていきます。
そして、自社の製品やサービスの購入につなげていくのが従来のマーケティングの目的です。
一方カスタマーマーケティングは、新規顧客ではなく既存顧客に着目したマーケティングを実践します。
LTV(Life Time Value)を高められるよう、既存顧客のサクセスを目指すのです。
LTVとは顧客生涯価値ともいい、1人の顧客がどれくらい自社に利益をもたらしたのかを表します。
顧客との取引は1度とは限らず、何度も取引をする「リピーター」も少なくありません。そのリピーターの存在がLTV向上に影響を及ぼします。
カスタマーマーケティングは、既存顧客のサクセスを通してLTV向上を狙ったマーケティングなのです。
カスタマーマーケティングの重要性
既存顧客にフォーカスをあてるカスタマーマーケティングは、決して新しいものではありません。
従来のマーケティングとともに実施してきた企業も少なくないのです。
そんなカスタマーマーケティングですが、重要性とともに注目されるようになりました。
従来のマーケティングでは、「新規顧客の獲得」が1つのゴールといえます。
しかしその後のフォローができなければ、せっかく獲得した顧客を満足させることができずチャーン(解約)につながるでしょう。
従来のマーケティングで獲得した顧客を離さないだけでなく、成功体験を与えることこそが本当の意味での成功といえます。
そういう意味で、カスタマーマーケティングはマーケティングの中でも重要な立ち位置にいるのです。
そして、サブスクリプション型(月額料金制)のサービスでは特に顧客を維持するための活動が必要になります。
カスタマーマーケティングの手法
ここまでは、カスタマーマーケティングの目的や重要性についてご紹介しました。
それらを踏まえて、カスタマーマーケティングの手法を3つ見ていきましょう。
オンボーディング
カスタマーマーケティングの手法に、オンボーディングがあります。
オンボーディングとは、顧客の離脱を防ぎ定着を促すための活動のことです。
マーケティングで新規顧客を獲得したとしても、すぐに離脱してしまったら本当の成功といえるのでしょうか。
カスタマーマーケティングは、そんな新規顧客をリピーターやロイヤルカスタマーへと育成していくところまで考えます。
そこで活用するのがオンボーディングなのです。
オンボーディングで行う施策には、以下のようなものがあります。
- チュートリアルの作成
- FAQの作成
- 導入支援
- セミナー開催
せっかく取引をしても、顧客が「使い方が分からない」「使いこなすまでが面倒」と思ったらどうなるでしょうか。
そこにお金を投入していたとしても、使い方が分かりにくければ離脱する顧客も少なくありません。
オンボーディングは、顧客が早期に自社製品・サービスについて理解し、継続した利用ができるようサポートするのです。
リテンションマーケティング
リテンションマーケティングも、カスタマーマーケティングの手法の1つです。
顧客を維持(リテンション)するために行う様々な施策のことで、自社製品・サービスに興味をもち続けてもらうようアプローチします。
そんなリテンションマーケティングの施策をチェックしておきましょう。
- 顧客行動の分析
- 製品・サービスの改善
- マーケティング戦略の改善
- 継続利用案内・キャンペーン情報の配信
顧客に興味をもち続けてもらうためには、顧客行動の分析が必要不可欠です。
製品・サービスについての情報発信に加えて、継続することのメリットを伝えていくことが大切といえます。
コミュニティマーケティング
カスタマーマーケティングの手法として、コミュニティマーケティングも重要です。
コミュニティマーケティングでは、ファンの育成を目的として顧客同士の交流の場を設けます。
一言で交流の場といっても、その種類は様々です。コミュニティマーケティングの例はこちらを参考にしてください。
- 商品モニター
- オンラインコミュニティの開設
- イベントの開催
- 顧客の意見を取り入れた合同開発
コミュニティの開設やイベントの開催をするときは、目的を明確にして企画・運営をすることが大切です。
ただ企画・運営するのではなく、そこで得た既存顧客の意見を取り入れるようにしましょう。
・顧客を離脱させないオンボーディング
・顧客を維持するリテンションマーケティング
・ファンを育成するコミュニティマーケティング
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマーマーケティングのメリット
既存顧客のサクセスを目指すカスタマーマーケティングには多くの魅力があるのが分かるでしょう。
ここでは、カスタマーマーケティングのメリットを3つご紹介します。
顧客ロイヤリティを高める
カスタマーマーケティングのメリットには、顧客ロイヤリティを高めることがあげられます。
顧客ロイヤリティとは、顧客が製品・サービスに対して愛着をもつことです。
この顧客ロイヤリティを向上させることで以下の効果が期待できます。
- アップセル・クロスセルによる売り上げ増加
- チャーンや離脱の防止
- リピート率の向上
先述したカスタマーマーケティングを実践するこで、顧客は成功体験を得られる可能性があります。
成功体験とは「この商品を買ってよかった」「このサービスを利用してこんないいことがあった」というようなことです。
この成功体験によって、顧客は製品やサービスへの愛着を高めていくでしょう。
コストの削減
カスタマーマーケティングには、コストの削減というメリットもあります。
従来のマーケティングは新規顧客の獲得ですが、これは既存顧客の維持よりもコストがかかるのです。
新規顧客の獲得には、既存顧客維持の5倍のコストがかかるといわれています。
この「5倍」という数字を見れば、カスタマーマーケティングがコスト削減になる理由が分かるでしょう。
例え売り上げが同じだったとしても、マーケティングにかかるコストが大きければ利益は下がってしまいます。
市場拡大のためには、新規顧客の獲得も重要なことです。
しかし、企業にとって安定した収益を求めるのであれば、カスタマーマーケティングにも力を入れる必要があります。
新規顧客獲得が期待できる
カスタマーマーケティングのメリットには、新規顧客の獲得が期待できることもあげられます。
既存顧客は、気に入った商品やサービスについて第三者に伝えることも少なくありません。
その相手は家族・友人・同僚などに止まらず、SNSという影響力の大きい媒体での発信も考えられます。
またその商品やサービスのファンの口コミは、説得力があるため参考にする人も多いです。
ファンの口コミはポジティブな内容が多く、SNSで発信してもらうことで広告費用をかけずに宣伝ができます。
既存顧客へのアプローチは、その結果として新規顧客を呼び込むことにつながるのです。
・顧客ロイヤリティを高めてリピート率を向上させる
・新規顧客の獲得と比べてコストを抑えられる
・既存顧客の口コミ等によって新規顧客を呼び込む
カスタマーマーケティングの活用事例
カスタマーマーケティングを成功させるためには、実際の活用事例を知っておくことをおすすめします。
ここでは、カスタマーマーケティングの活用事例を4つ見ていきましょう。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
スターバックスには熱心なファンがいて、その空間でコーヒーを飲むことに特別感を見出す人もいるでしょう。
そこには、スターバックスがリピート顧客を増やすためのマーケティング戦略が隠されているのです。
そんな戦略の1つに、コーヒーの淹れ方などを説明するセミナーがあります。
バリスタが目の前で教えてくれるため、コーヒー好きには魅力的なセミナーです。
またスターバックスカードによる購入でポイントをためるリワードプログラムも、リピート顧客を増やしているといえます。
購入金額によってリワードがたまり、一定数に達するとドリンクかフードと交換できるチケットが付与されるのです。
無料でスターバックスのドリンクかフードを味わうことができるため、ファンにとって嬉しいサービスではないでしょうか。
日本航空株式会社
格安航空会社の参入によって、航空会社の競合は激化しています。
そんな中、日本航空は「顧客体験を向上させる」という考えを基にいち早くWeb予約を導入したのです。
さらに、オンラインチェックインや「タッチ&ゴー」というサービスも展開しました。
タッチ&ゴーとは、オンラインでチェックインをしたらそのまま保安所まで進めるサービスのことです。
これらのサービスによって、顧客は待ち時間を短縮し快適な旅の始まり・終わりを迎えることができます。
株式会社ワコール
下着メーカーのワコールでは、自社サイトの会員登録者数は増えてもLTVの向上につながらないことが課題でした。
ワコールの下着を購入する頻度が年1~2回という顧客も少なくありません。
そこでワコールは、顧客に興味をもってもらうためWebサイトやアプリのコンテンツを見直しました。
例えば「下着の洗い方」といった説明動画や、女性が興味をもつ情報を発信したのです。
また、ファンミーティングを行い顧客との接点を積極的に作っていきました。
商品やセール情報に特化せず、顧客が求める情報を提供することで顧客とのつながりを作ることに成功した事例です。
株式会社ジュン | ROPE’ PICNIC
女性向けアパレルブランドのROPE’ PICNICは、顧客満足度調査によって問題点を洗い出しカスタマーマーケティングに活用しました。
ROPE’ PICNICでは紙のポイントカードを活用しており、それがレジの待ち時間への不満につながることが分かったのです。
すでに自社アプリをもっていたROPE’ PICNICは、アプリにポイントカードを搭載してレジでの時間短縮につなげました。
またECサイトでは、スタッフコーデを掲載して商品への興味を促しています。
カスタマーサクセスとの関係性
カスタマーマーケティングと聞くと「カスタマーサクセスと関係がある?」と思う人もいるのではないでしょうか。
先述したように、カスタマーマーケティングの目的は「顧客(カスタマー)のサクセス」です。
そもそもカスタマーサクセスとは、顧客を成功に導くための一連の行動のことをいいます。
「この商品を使うとこんなメリットがある」「このサービスで〇〇が便利になった」という感覚を顧客が抱くことを目指すのです。
これらの成功体験は、先述したLTVの向上につながります。
先ほどカスタマーマーケティングは顧客の成功によってLTVの向上を目指すものだとご説明しました。
つまり、カスタマーマーケティングはカスタマーサクセスの延長にあり同じベクトルを向いているのです。
カスタマーサクセスの手法
カスタマーマーケティングを行うのであれば、カスタマーサクセスは押さえておきたい重要ポイントです。
ここではカスタマーサクセスの手法を3つに分けてご紹介します。
ハイタッチ
カスタマーサクセスの中でも、高いLTVが期待されるのがハイタッチです。
ここでターゲットとなるのは優良顧客であることが多く、手厚いサポートが求められます。
- 対面や電話による1対1のヒアリング
- 顧客のニーズに合わせたイベントの開催
定期的なヒアリングによって顧客の困り事や要望を伺い、サポートにつなげます。
コンサルティングに近い形の手厚さによって、顧客の心を掴むことを目指すのです。
ロータッチ
ロータッチに当てはまる層はハイタッチよりも多いですが、LTVはそれほど高くないのが特徴です。
しかし、それなりの人数がいるため決して無視できない層といえます。
そんなロータッチへのアプローチ方法はこちらです。
- メールや電話での情報提供
- セミナー・イベント
定期的なアプローチを行う必要がありますが、ハイタッチよりも効率を重視するのがポイントです。
テックタッチ
テックタッチは、ロータッチよりもさらにLTVが低い層ですが人数が多いのが特徴です。
そんなテックタッチへのアプローチを見ていきましょう。
- FAQの設置
- MA(マーケティングオートメーション)を活用したメール配信
- SNSの活用
対象とする人数が多いため、ツールを活用したアプローチを行います。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
カスタマーサクセスを念頭に置いたマーケティングが大切
カスタマーマーケティングを実践するときには、カスタマーサクセスを念頭におくことが大切です。
それは、先述したように双方には深い関連があり同じベクトルを向いているからです。
カスタマーサクセスの向こう側に、カスタマーマーケティングがあると思ってください。
つまり、顧客のサクセスなくしてカスタマーマーケティングの実現はできないということです。
カスタマーマーケティングの実現のために、カスタマーサクセスを押さえておきましょう。
カスタマーマーケティングに困った時は
カスタマーマーケティングは、既存顧客の維持のために多くの企業で重要視されています。
しかし、どのように活用すればいいか悩む人も少なくありません。
カスタマーマーケティングでお困りのことがあれば、デジマクラスにご相談ください。
専門のノウハウをもったコンサルタントが、最適な活用方法を一緒に考えさせていただきます。
まとめ
今回は、カスタマーマーケティングの活用事例についてご紹介しました。
既存顧客のサクセスのもと、LTVの向上を目指すのがカスタマーマーケティングです。
顧客のニーズや成功体験にフォーカスを当てることで、リピート率やLTVの向上につながるでしょう。
カスタマーマーケティングでお困りのことがあれば、ぜひデジマクラスまでご相談ください。
顧客の心をつかむマーケティング戦略のサポートをさせていただきます。