2006年に新会社法が成立したことにより、法律上1人で会社を作ることが可能になりました。

社長1人で経営している会社は「1人会社」と呼ばれています。

1人会社を作りたいと考えたとき、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

この記事では、株式会社を設立する想定で1人で会社を作る手順を解説します。

また会社設立項目・定款作成方法・登記の申請方法なども説明しますので、1人会社を設立する際の参考にしてください。

1人で会社を作る手順を解説

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1人で会社を作る手順は以下の4ステップです。

  • 会社設立項目を決める
  • 定款を作成する
  • 登記書類を作成する
  • 開業の届出申請をする

以下で、それぞれのステップについてやるべきこと必要な書類などを詳しく解説していきます。

会社設立項目を決める

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会社を作ることを決意したら、まず会社設立項目を決めます。

会社設立項目とは、次章で解説する定款を作る際に必要となる会社情報のことです。

1人で会社を設立する場合は「発起設立」といって会社の設立を決めた人のみが会社の出資者となります。

発起設立の場合に最低限決めておかねばならないのは以下の項目です。

  • 商号(会社名)
  • 本店(会社の住所)
  • 目的(会社の営業種目)
  • 資本金
  • 設立時の発行株式総数と1株の発行価額
  • 役員および役員の任期
  • 事業年度

上記の「目的」とは、衣料品販売・飲食といった会社の営業種目を指します。

目的には、会社設立時の事業だけでなく将来的に展開しようと考えている事業も含めることができます。

資本金は1円以上であれば原則問題ありません。しかし会社の信用度や税金に関わる部分でもあるため慎重に決めたほうが良いです。

発行株式総数は「資本金÷1株の発行価額」で算出します。1株の発行価額は自由に設定可能です。

また株式会社の場合は取締役を役員として1名以上置く必要があります。

1人で会社を作るなら発起人が取締役で、取締役の役員任期は原則2年となります。

最後の「事業年度」とは、1年間の中で何月から何月までを1事業年度とするのか決めることです。

例えば、4月1日を事業年度の初日とするなら翌年3月31日までを1事業年度と定めます。

会社設立に必須の定款の作成

定款

会社設立項目を決めたら定款を作成します。定款とは、株式の数や事業内容など会社のルールをまとめたものです。

定款は紙媒体電子どちらで作成しても問題ありません。以下ではそれぞれについて定款の作成方法を解説します。

定款の作成方法

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定款を作成する際は、公認役場が公開しているテンプレートを使用します。テンプレートを埋めるだけで自社の定款を作ることが可能です。

ただしテンプレートにはいくつか種類があるので注意しましょう。

1人で会社を作る場合は小規模会社用でかつ取締役1名を前提にしたテンプレートを使用します。

電子定款の作成方法

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電子定款を作成する際は、まず紙媒体で定款を作成しましょう。そして定款をPDF化して電子署名を挿入します。

電子署名を挿入するにはさまざまな準備が必要です。まず、電子署名に対応している専用のソフトを手に入れなければなりません。

またマイナンバーカードを取得して電子証明書の認証を受ける必要があります。

定款の認証方法

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定款が完成したら公証役場に内容を認証してもらいます。

紙媒体の定款であれば公証人役場へ行って直接確認してもらいます。この際、収入印紙代4万円を忘れずに用意しておきましょう。

電子定款であれば登記・供託オンライン申請システムからオンラインで手続きができます。利用登録をしてから定款を提出しましょう。

 

ワンポイント
 定款は紙媒体または電子でテンプレートに沿って作成し、公認役場で認証してもらいます。

株式会社設立登記書類の作成・申請

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定款の認証を済ませたら会社登記を行います。会社登記とは、定款に記した商号や事業の目的などの情報を法務局に登録することです。

法務局に登録することで会社情報を一般に開示できるようになり、会社の信用につながります。会社登記する際は以下の書類が必要です。

  • 定款
  • 設立登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙
  • 発起人決定書
  • 代表取締役等の就任承諾書
  • 取締役の印鑑証明書
  • 印鑑届書
  • 出資金の払込証明書

必要書類を揃えたら本店所在地(会社の住所)を管轄している法務局へ提出します。

提出方法は法務局窓口への直接申請・郵便申請・オンライン申請の3種類から選ぶことが可能です。

開業の届出申請

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登記を済ませたら会社が設立されたことになりますので、都道府県や市町村に開業の届出申請を行います。

申請は地方税を納めるために必要不可欠です。株式会社を設立した場合は都道府県や市町村に地方税を納めなければなりません。

届出申請をするには、まず都道府県事務所や市町村の役所から法人設立届出書を入手しましょう。

書類を作成したら各都道府県の税事務所の法人事業税課(住民税課)や市町村役場の法人住民税課に提出します。

提出方法は登記と同様に法務局窓口への直接申請・郵便申請・オンライン申請から選ぶことが可能です。

 

ワンポイント

定款の作成や登記を済ませて開業の届出申請まで完了したら会社設立に伴う手続きは完了です。

会社を作るメリット

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1人で事業を行う場合、個人事業主として開業する方法もあります。他の選択肢がある中で1人で会社を作るメリットは何なのでしょうか。

以下では1人で会社を作るメリットを紹介します。具体的には以下の4つです。

  • 信用が得られる
  • 融資が受けやすい
  • 節税できる
  • 責任が軽減される

信用が得られる

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会社を作るメリットとしてまず挙げられるのは、社会的な信用を得られる点です。

信用があることは契約を結んだり銀行から融資を受けたりする際に役立ちます。

企業や銀行にとって社会的な信用が低い相手と取引することはリスクが高いからです。

融資が受けやすい

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融資が受けやすい点も会社を作るメリットの1つといえます。

法人化すると会社の資金と個人の資金を分けて管理することが必要です。

例えば会社の資金はまず会社名義の口座に入り、経営者の役員報酬は会社の口座から個人の口座に振り込まれます。

一方個人事業主の場合は事業資金が個人の私的な口座に入るため、事業資金と個人資金は混在している状態です。

融資をする側から見ると、事業資金の流れが明確であるほうが信頼できるため、会社を作ると融資が受けやすくなります。

節税できる

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会社を作るメリットとして、節税対策ができる点も挙げられます。

例えば、法人化すれば代表者個人の役員報酬・社宅・出張・旅費などを経費に含めることが可能です。

また会社であれば損失の繰り越し期間も長くなります。

青色申告をしている個人事業主であれば損失の繰り越し期間は3年ですが、法人化すれば最大9年です。

この場合、赤字が続いている事業であれば税制面で得になることがあります。

責任が軽減される

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事業に失敗した場合の責任が個人事業主のときより軽減される点も、会社を作るメリットです。

個人事業の場合は無限責任といって、事業で失敗して借金を抱えたら自腹で全額を返済しなければなりません。

しかし会社であれば経営者は有限責任です。事業の失敗で責任を負うのは出資金の範囲内になります。

例えば出資金が100万円であれば事業の失敗で1,000万円の借金を抱えても、出資金100万円を失うだけで済むのです。

ただし、経営者が借金の連帯保証人である場合はこの限りではありません。

 

ワンポイント

会社を作るメリットは「信用が得られる」「融資が受けやすい」「節税できる」「責任が軽減される」の4点です。

会社を作るデメリット

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個人事業主として事業を行うことに比べて1人で会社を作ることにはどんなデメリットがあるのでしょう。

以下では会社を作るデメリットを紹介します。具体的には以下の4つです。

  • 住民税が掛かる
  • 社会保険へ加入しなくてはならない
  • 専門家へ依頼するコストがかかる
  • 廃業するにも費用が掛かる

住民税が掛かる

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会社を作るデメリットの1つとして、会社に対する住民税が掛かる点が挙げられます。

個人に対して住民税がかかるのと同様に、会社を作ると会社に対しても「法人住民税」という住民税がかかるのです。

さらに法人住民税のうち均等割については、たとえ事業が赤字であっても年間約7万円を納めなければなりません。

社会保険へ加入しなくてはならない

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社会保険へ加入しなければならない点も会社を作るデメリットです。

社会保険は企業などの事業所に使用されていて一定条件を満たす全ての人に加入が義務付けられています。

1人会社の社長であっても会社から給与を受け取る仕組みにしている場合は会社に使用されているとみなされ、加入義務が発生するのです。

社会保険料は会社負担と個人負担に分かれているため、もし会社員であれば個人負担分を払えば問題ありません。

しかし社長であれば会社負担分と個人負担分の両方を支払う必要があり、保険料は高額になってしまいます。

ただし役員報酬が0円である場合や報酬額が社会保険料よりも低い場合は社会保険の加入義務はありません。

この場合は個人事業主と同じように国民健康保険と国民年金に入ることになります。

専門家へ依頼するコストがかかる

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司法書士・税理士・行政書士といった専門家に依頼するコストがかかるのも会社を作るデメリットです。

会社を作ると守るべき法律が増え、手続きも複雑になります。全て自分で対応すると時間がかかり、事業に支障が出かねません。

そのため、専門家に代行管理を依頼する人が多いです。

例えば登記に関わる手続きは司法書士に、資金調達や税務関係については税理士に依頼します。

専門家への依頼の費用は安くありませんので、事業を継続する上での大きな支出項目となってしまうのです。

廃業する場合にも費用が掛かる

倒産

会社を作るデメリットとして、廃業する場合にも費用が掛かることも挙げられます。

具体的には会社を解散するときに以下の費用が必要となります。

  • 登録免許税:4万1,000円
  • 官報公告費用:約3万2,000円
  • 専門家への依頼費用:7万~数十万円

登録免許税は、法務局に対して会社の解散を知らせる際に行う「解散登記」や「清算結了登記」といった手続きの際に支払います。

官報公告費用とは、会社が解散したことを国が発行する新聞「官報」に掲載するための費用です。

廃業した場合は官報公告をしなければならないと法律で定められています(会社法第475条)。

専門家への依頼費用とは、会社の解散に伴う手続きを司法書士・税理士・弁護士などへ依頼するための費用です。

会社の解散に伴う手続きは膨大ですので、1人で対応するのは簡単ではありません。

そこで司法書士に登記手続きを依頼したり税務申告を税理士に依頼したりします。

 

ワンポイント

会社を作るデメリットは、住民税・専門家の費用・廃業費用がかかる点や社会保険への加入が必要になる点です。

会社を作る前に注意すること

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会社を作る前には、注意しておくべきことがあります。それは設立時に必要な費用と設立時の手続き方法です。

それぞれについて以下で具体的に解説します。

設立時に必要な費用

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会社を設立するには一定の費用がかかりますので、事前に準備しておくことが必要です。

例えば株式会社を作る場合、会社設立にかかる費用は約25万円です。費用の内訳は以下のようになります。

  • 印鑑証明書の発行費用:数百円
  • 定款の認定手数料:5万円
  • 定款の収入印紙:4万円
  • 謄本交付手数料:250円×定款枚数
  • 登録免許税:15万円

定款の収入印紙代4万円は、電子定款にすれば支払わなくて済みます。

しかし電子定款を作成するには数万円する特別な機器やソフトを用意しなければなりません。

これらを持っていない場合は費用の節約にはなりません。

設立の手続きを専門家に依頼する方法もある

専門家

会社設立の手続きは自分で行うこともできますが、司法書士などの専門家に代行を依頼することもできます。

法人化の手続きは複雑で手間もかかることから、専門家に依頼すれば時間の節約になるのです。

特に司法書士は法人登記手続きを代行できる唯一の士業で、会社設立のサポートを行ってくれます。

電子定款にも対応しているので定款の収入印紙代を気にする必要もありません。

費用については、専門家への依頼になるので数十万円ほどかかりますが、事業のための時間を買うと考えて検討してみると良いでしょう。

自分の持っているスキルを活かして転職するには?

転職

1人で会社を作るデメリットを知り、会社を設立するよりも新しい職場へ転職しようと考えた人もいるかもしれません。

自分が持っているスキルを生かして転職するにはどうしたら良いのでしょうか。

おすすめはデジマクラスなどの転職コンサルタントに相談することです。

転職コンサルタントは個人のスキルや希望に合った求人を探すなど、転職活動全体をサポートしてくれます。

副業として個人の事業を行いながら本業の仕事もこなし、さらに転職活動も完璧に進めるのは非常に大変です。

自分のスキルを最大限に活かせる職場へ転職するためにも、デシマクラスなどの転職コンサルタントに相談してみると良いでしょう。

まとめ

明るい未来,キャリア

会社は「会社設立項目を決める」「定款を作成する」「登記書類を作成する」「開業の届出申請をする」の4ステップで設立できます。

会社の設立にはメリット・デメリットがあるため、自分の事業の状態やビジネスの条件などを鑑みて法人化を検討することが大切です。

場合によっては会社設立ではなく転職して自分のスキルを活かすほうが良いこともあります。

転職を考え始めたらデジマクラスなどの転職コンサルタントに相談してみましょう。