効果的なマーケティング手法として注目を集めるニッチマーケティングですが、具体的にどのような点が魅力なのでしょうか。
この記事では、ニッチ・マーケティングが選ばれる理由やニッチビジネスで成功するためのポイントを解説します。
またニッチ市場で活躍する成功事例も紹介しますので、今後のマーケティング戦略を検討する上で参考にしてください。
目次
ニッチマーケティングの概要
まず、ニッチマーケティングとは何かを解説します。
また、ニッチマーケティングの反対はマスマーケティングです。マスマーケティングについても併せて理解しておきましょう。
ニッチマーケティングって何?
ニッチマーケティングとは、ターゲットを小規模の集団に特定して行うマーケティングのことです。
ニッチマーケティングであれば資金力や知名度がなくても競争できるため、中小企業や個人事業主に向いています。
しかし、ターゲットの母数があまりに小さく売上拡大につながらないことがある点もニッチマーケティングの特徴です。
そのためニッチマーケティングを行う上では、市場を世界規模で考える「グローバルニッチ」という考え方が重要視されます。
1つの国の市場規模は小さくとも世界中の国で同等の規模の市場があれば、特異な分野であっても売上を拡大することが可能になるのです。
ニッチマーケティングの具体例としては、男性専用の眉毛サロン経営やオーガニックのペットフード販売などが挙げられます。
マスマーケティングとは?
マスマーケティングとは、あえてターゲットを絞り込まず全ての人を対象として行うマーケティングのことです。
例えば、テレビのCMがマスマーケティングの一種になります。
マスマーケティングでは大量生産・大量消費される製品を取り扱うことが多いです。
マスマーケティングが対象とする市場の規模はとても大きいため、資金力や知名度がある大企業が得意としています。
マスマーケティングは、大量生産が行われるようになり消費者の購買力も向上した戦後から盛んに行われてきました。
そもそもニッチ(NICHE)の意味は?
ニッチは、もともと西洋建築の世界で彫像などを置くための「壁のくぼみ」を指す言葉として用いられていました。
その後、くぼみから連想されるものとして「隙間」という意味が加わります。
そして、建築分野から生物・経済といった他分野でも使用されるようになったのです。
経済分野では、既存の企業が進出していない小規模の分野や市場を指す言葉として使われるようになりました。
背景には、これらの分野・市場が中小企業にもチャンスがある穴場として注目されるようになったことが関係しています。
「ニッチ」は、経済分野でニッチマーケティング以外にも使用されている言葉です。
例えば、潜在的な需要があるにも関わらず参入する企業がいなかった市場は「ニッチ市場」と呼ばれています。
また、ニッチマーケティングによって提供された商材は「ニッチ商品」「ニッチサービス」です。
そして、ニッチ商品やニッチサービスを提供するビジネス全体については「ニッチビジネス」「ニッチ産業」と呼びます。
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ニッチ・マーケティングが重要な理由
中小企業や個人事業主でも売上拡大が見込めるニッチマーケティング。
マーケティング手法として重要である背景には、以下のような理由があるのです。
- 情報量過多でニッチじゃなければ刺さらない
- 価値観があまりにも多様化した
- 一気に地位を確立できる
それぞれ、詳しい背景を以下で解説します。
情報量過多でニッチじゃなければ刺さらない
ニッチマーケティングが重要な理由の1つは、インターネットの普及による情報量過多でニッチでなければターゲットに刺さらない点です。
インターネットが広く利用されるようになる前は、消費者はマスメディアから情報を受け取っていました。
マスメディアからの情報は量が限られるため、広く一般を対象とした広告手法でも消費者に興味を持ってもらうことが可能だったのです。
しかしインターネットの普及で消費者が知りえる情報は無限になりました。
そのため、一つの商品を購入するにも数多くの選択肢から検討するようになったのです。
また、各商品・サービスに関する情報も消費者自身で詳細に集められます。
こういった変化により、消費者は「どれがもっとも自分に合っているのか」というニッチの視点で比較するようになりました。
つまり、広く一般に使われているものよりも、消費者個人に合致するニッチな商品・サービスが求められるようになったのです。
価値観があまりにも多様化した
ニッチマーケティングが重要である理由として、消費者の価値観が多様化した点も挙げられます。
この変化にもインターネットの普及が関係しているのです。
インターネットが一般的に使用されるようになり、消費者が選択できる商品・サービスの数は膨大になりました。
そのため、消費者は自分の考えを消費行動に反映するようになったのです。
例えば、エコロジカルな視点を大切にする人は地球に優しい製品を選ぶなどがこの例として挙げられます。
一気に地位を確立できる
ニッチマーケティングが重要である理由として、特定の分野で一気に地位を確立できるという経営側の利点があることも挙げられます。
マスマーケティングであれば競争相手の企業が多く、資金力や知名度がある大企業に勝つことは難しいです。
そのため中小企業や個人事業主が地位を確立するには、まだ市場が成熟していないニッチな産業を狙うことが有効になります。
ニッチ産業は参入企業が少ないため、戦略次第では資金力や知名度がなくても地位を確立することが可能なのです。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ニッチマーケティングが選ばれている理由
ニッチマーケティングは近年、新しいマーケティング手法として注目を集めています。
その背景には、以下のような理由があります。
- 消費者の生活スタイルが変化した
- 狭い市場から市場を広げる方法が流行した
それぞれ以下で詳しく解説します。
消費者の生活スタイルが変化した
これからのマーケティング手法としてニッチマーケティングが選ばれる理由として、消費者の生活スタイルが変化したことが挙げられます。
消費者の購買量が増えた戦後は、大量生産・大量消費が一般的でした。
またテクノロジーの急速な進化により、新しい製品が登場すると次々買い替えるような動きもあったのです。
しかし近年は地球温暖化などの環境変化が問題視されるようになり、資源を有効に活用する考え方が広まりました。
この変化により、消費者の間でもエコを意識した消費行動が見られるようになります。
また、消費者の生活スタイルが変化した背景にはエコ以外の要因もあります。
既述したインターネットの普及も変化の要因の一つです。
消費者が大量の情報を手に入れるようになり、より個人の好み・センス・価値観などに合うものが求められるようになりました。
狭い市場から市場を広げる方法が流行した
ニッチマーケティングが選ばれる理由として、経済分野で狭い市場から市場を拡大する方法が流行したことも挙げられます。
例えば、物流大手のAmazonもニッチな分野から徐々に市場を広げていった例の一つです。
Amazonはもともと書籍のオンライン販売から始まりました。
大手の書店では扱っていないようなニッチな本も販売することで消費者を徐々に集めるようになり、本以外の商品も扱うようになったのです。
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ニッチビジネスで成功するために必要な視点とマインド
ニッチビジネスで成功するためには、まだ解決されていない消費者の隠れたニーズを見つける視点が重要になります。
また、今の市場をターゲットや価格などでセグメントすることも重要です。
この際、「どのポジションなら勝てるのか」を念頭に戦略を立てることが必要になります。
たとえ市場が飽和している分野であっても、消費者が抱える課題がないことはありません。
そこにアプローチすることが、ニッチビジネスとして成功するために必要です。
ニッチな分野を見つけた後は、テストマーケティングで市場の可能性やターゲットの反応を見ることも欠かせません。
ニッチな分野は市場が成熟しておらず、前例がない中で手探りで進めていくしかないためです。
さらに、ニッチマーケティングを行う上ではニッチ商品やニッチサービスを消費者に認知してもらうことも重要になります。
消費者に広く認知してもらうと、ファンを獲得できる上、他社との価格競争に巻き込まれることがありません。
消費者間の認知拡大・浸透まで考慮した戦略を立てることが、ニッチビジネスを継続させる大切なポイントです。
「10本のバラ」に対抗するためには「15本のバラ」が必要なのか
アップル社の創業者の1人であるスティーブ・ジョブスは、10本のバラと15本のバラを例に以下の言葉を残しました。
美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を一〇本贈ったら、君は一五本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。その女性が本当に何を望んでいるのか、見きわめることが重要なんだ
出典:「スティーブ・ジョブズ全発言 世界を動かした142の言葉」(PHP研究所)
バラを経営資源とし美しい女性を市場と考えると、ニッチマーケティングの競争優位性もより理解できます。
他の企業と量で勝負するよりも、市場が求めているものを提供することが大事なのです。
市場のニーズに応えるには、ターゲットを絞りよりニッチな分野から攻めることが必要になります。
コトラーの「競争的マーケティング戦略」という概念
ニッチマーケティングを考える上では、コトラーの「競争的マーケティング戦略」の概念も重要です。
これは、経営資源の量・質を軸に経営戦略を4つに分類する考え方になります。
経営資源が多く、質も高い企業が該当する分類は「リーダー」です。
リーダーの場合、マーケティング課題はシェアの維持や利益の最大化になります。
経営資源はリーダーと同等に多くとも質が低い場合、その企業は「チャレンジャー」です。
チャレンジャーはシェアの拡大が課題になります。このチャレンジャーと反対の位置に当たるのが「ニッチャー」です。
経営資源の量は少ないものの資源の質が高いニッチャーは、特定の市場に特化することが大切になります。
最後に、経営資源の量が少なく質も低い場合、その企業の分類は「フォロワー」です。
フォロワーはリーダーやチャレンジャーの戦略を踏襲して利益の拡大を狙うことが課題になります。
支援実績やコンサルティングの詳細は、実績・事例紹介のページをご覧ください。
ニッチ市場で活躍する事例
ここから、ニッチな市場で活躍する企業の事例を6つ紹介します。事業の戦略を考える際の参考にしてください。
その1:株式会社industria
株式会社industriaは、自動車を生産する過程で使用される水を再利用する装置の製造・販売を手がけています。
水の再利用や浄化に関する課題に注目した、ニッチ戦略の参考となる事業です。
その2:株式会社ナベル
株式会社ナベルは、 卵を自動で洗卵・選別・包装するシステムを開発・販売している企業です。
卵のパッキングの工程に合わせた機械に特化して網羅的に扱っており、ニッチ戦略を体現しています。
その3:株式会社アタゴ
株式会社アタゴは、ポケット糖度計やポケット塩分計などを開発している会社です。
調味料に特化したものや消毒液用など、計測機器の幅広いラインナップがあります。
その4:株式会社ブシロード
株式会社ブシロードは、エンタメ業界のなかでもTCGに特化してニッチ分野から売上を拡大した企業です。
徹底したニッチ戦略により、売上は起業後15年で売上200億円に到達しました。
その5:アクア株式会社
アクア株式会社は、水を使わずオゾンで衣服を洗う洗濯機やスケルトン洗濯機などのニッチな商品を開発しています。
家電を扱う企業はテレビや調理器具など幅広い製品展開を行うことが多いですが、洗濯機一筋でさまざまな新商品を開発している企業です。
その6:株式会社カーブスジャパン
株式会社カーブスジャパンは、主婦層をターゲットとしたフィットネスプログラムを展開しています。
フィットネス業界は大手企業が参入していますが、ターゲットを絞るニッチ戦略で地位を確立しました。
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ニッチマーケティングで悩んだら
ニッチマーケティングで悩んだからWebマーケティングに精通したデジマクラスのコンサルタントに相談しましょう。
商材の種類などによって、その企業にとっての最適なマーケティング手法は変わります。
数ある戦略の中から効果的なものを選ぶには、客観的な視点から顧客のニーズや商材のポジショニングを考えることができる専門家が必要です。
もし具体的なニッチマーケティング戦略で悩んだら専門のコンサルタントに相談してみましょう。
まとめ
ニッチマーケティングが選ばれる理由は「消費者の生活スタイルが変化したため」「狭い市場から市場を広げる方法が流行したため」です。
ニッチビジネスで成功するためには、まだ解決されていない消費者の隠れたニーズを見つける視点が重要になります。
また、今の市場をターゲットや価格などでセグメントすることも重要です。
具体的なニッチマーケティング戦略で悩んだらデジマクラスのコンサルタントに相談してみましょう。